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ワクチン普及後が危険。バイデン「200兆円経済対策」がインフレと市場混乱を招く理由=澤田聖陽

米議会下院は約200兆円規模の追加経済対策法案を可決、上院も3月中に通過する見込みです。この政策によって将来のインフレを懸念する声が出ていますが、バイデン政権はインフレリスクは限定的との立場を取っています。私は本当にそうだろうか?と思っています。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)

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※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2021年3月2日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

まもなく米コロナ追加対策法案が成立する

米議会下院は2月27日に、新型コロナウイルス危機を受けた1兆9,000億ドル(約200兆円)規模の追加経済対策法案を可決しました(賛成219・反対212)。

これから上院での審議になりますが、民主党は決議に財政調整措置(リコンシリエーション)を用いると言われています。

長くなるので、ここでは財政調整措置の説明は省きますが、要するにこのプロセスを使えば、上院で民主党は共和党の協力を得なくても単純過半数(51票=民主党議員50票+副大統領1票)で成立させることが可能となります。

このままいけば、3月中には上院でも承認されるでしょう。

賛否両論? 約200兆円規模の支援策、その中身は

約200兆円の追加経済対策の中身ですが、大きなものは以下のような内訳になります。

・1兆ドル(約104兆円)の家計支援
国民1人あたり1,400ドル(約14万5,000円)の直接給付、週400ドルの失業給付上乗せなど

・新型ウイルス対策支援に4,150億ドル(約43兆円)

・中小企業支援に4,400億ドル(約46兆円)

アメリカの2019年の名目GDPが21.43兆ドルなので、その約9%分にあたる巨額の財政支出になります。

当然、反対意見もあります。

共和党はリバタリアン的な政治的立ち位置(小さな政府を志向する立場)からして、反対しています。

また民主党関係者からも、サマーズ氏(クリントン政権の財務長官、オバマ政権で国家経済会議議長であり、バイデンのアドバイザーの1人)などは、「過大であり、インフレリスクがある」という発言をしています。

Next: インフレは起こるのか? 債券市場は敏感に反応、株価は一時急落へ



長期金利は今後も上昇へ向かう?

財政支出は本来需給ギャップ(経済における需要と供給の差)を埋めるという効果があるのですが、アメリカの実質GDPはすでにコロナ危機前の97.5%まで回復しており、CBO(米議会予算局)の試算では2024年までの需給ギャップは約7,000億ドル(約75兆円)という数字が出ています。

1.9兆ドル(約200兆円)の財政支出は課題であり、インフレを招くのではないかという懸念は発生して当然だと思います。

債券市場ははっきりとした反応を示しており、アメリカ10年国債(長期金利)の利回りは2月25日の取引時間中に1.614%まで上昇しました。

昨年の大統領選挙当日11月3日の終値ベースで0.852%の利回りでしたので、4か月で倍近くの利回り水準になっています。

バイデン政権が発足するのが濃厚になった時点で、巨額の財政支出を伴う政策を発表していました。

そのため徐々に長期金利は上がり始めていたのですが、1月5日のジョージア州の上院選挙で民主党が2議席獲得し、財政支出を伴う法案が議会を通る可能性が高くなったことで、長期金利が急上昇し始めました(1月5日時点の最終取引価格ベースの利回りは0.916%)。

そして2月に入って、法案の審議が始まり、可決の見通しが高いということで長期金利が急上昇しました。

2月1日時点の最終取引価格ベースでの利回りは1.060%でしたが、ここから2月25日の取引時間中の1.614%までほぼ一気に上昇している形です(その後、少し落ち着いて3月1日最終取引価格ベースでは1.425%となっています)。

しかし、マーケット関係者の間では、今後より一層の金利上昇を予想する声は多いという状況です。

インフレは起こるのか?

アメリカの長期金利の上昇は、「良い金利上昇」なのか「悪い金利上昇」なのかという議論があります。

これについて、私は悪性インフレの兆候がある「悪い金利上昇」ではないかと言ってきました。

すでに足元では耐久消費財の価格が上昇するなど、インフレの兆候は出ています。

これに対してパウエルFRB議長は「物価の上昇は一時的で長続きしない」という立場をとっています。

私は本当にそうだろうかと思っています。

Next: コロナ前よりも景気は良くなる?インフレ発生の可能性は高い



コロナ以前よりも景気が良くなる可能性

パウエル議長は、雇用の回復が遅れており、賃金は上昇しにくく、インフレは直ぐには起こらないと言っていますが、コロナ前のアメリカは空前の好景気で、失業率も過去最低水準でした。

個人的にはコロナについて、ワクチンの効果が出始めれば、アメリカについては一気に雇用も回復する可能性があると思っています。

コロナ以前の世界的なパンデミックは1918年から1920年にかけてのスペイン風邪の時ということになりますが、もちろんこの時の経験がある人は既に亡くなっていますし、その当時と経済の構造も大きく変わっているので、参考程度にしかならないでしょう。

誰もが経験がないので、実は手探りで経済運営をしているというのが本音だと思います。

ただリーマン・ショックの時と比べると、一部の業種(外食や宿泊業、航空産業等)以外は、それほど大きなダメージを受けていませんし、逆にコロナ下でDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進し、より儲かる企業になっているところも多くあります。

参考までに、住宅販売は付帯するものも含めて経済への影響力が強い業種ですが、アメリカの中古住宅販売件数、新築住宅販売件数ともに、直近の数値は過去最高レベルの水準です。

ワクチンが行き渡り、コロナの影響が沈静化してこれば、コロナ前よりも景気は良くなると考えるのは不思議ではありません。

その時、市中に多すぎる資金が滞留していれば、インフレが発生する可能性はかなり高いと思います。

バイデン政権の巨額財政支出は止まらない

それでもバイデン大統領やイエレン財務長官が巨額の財政支出を伴う政策を行うのは、なぜでしょうか。

貧富の差の拡大を止めて、分断を再加速させないという意図があるようです。

しかし、果たして現金給付等で貧富の差や分断が治癒されるのかというと、個人的にはまったく効果が無いとは言いませんが、根本的な解決にはまったくならないと考えています。

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image by:Stratos Brilakis / Shutterstock.com

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