台湾の半導体大手が日本に開発拠点を置くなど、半導体関連のニュースが増えています。日本勢の復活はあるのでしょうか?過去の敗因を振り返りながら解説します。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)
投資に勝つにはまず第一に情報分析。「投資に勝つ」という視点から日常のニュースをどのように読むべきかを、この記事の著者で、元証券会社社長で現在も投資の現場の最前線にいる澤田聖陽氏が解説します。視聴方法はこちらから。
※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2021年2月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
世界最大の半導体製造ファウンドリ企業TSMC、日本に拠点
半導体関連のニュースが多くなってきています。
TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd. 台湾積体電路製造)は、世界最大の半導体製造ファウンドリ企業です(※筆者注:ファウンドリとは半導体の製造を請け負う企業、半導体の国際分業体制等については後述します)。
同社が日本に初の本格的な開発拠点をつくる方向で最終調整入っているという報道がされており、新会社を茨城県つくば市に設立するようです。
※参考:台湾TSMC、日本に先端半導体の開発拠点 – 日本経済新聞(2021年2月8日配信)
投資額は約200億円を予定しているとのこと。TSMCの規模からしたらそれほど大きな投資額ではありません。
しかしながら、中国が今後台頭してくるのをにらみ、米国や日本との連携を深めて先端技術の開発を急ぐ意味があり、日本にとって明るいニュースではあると思います。
半導体業界を直撃する米中対立
TSMCは、昨年ファーウェイとの取引を停止しました。
一方、アメリカのアリゾナ州に総額120億ドル(約1.3兆円)の予算を投入して先端半導体の工場を設立すると発表しており、今年から建設開始し、最も早い工場は2024年に稼働する計画を発表しています。
TSMCはファウンドリとして、長らくアメリカと中国に対して取引を行ってきましたが、トランプ政権で中国の大口取引先であるファーウェイとの取引を制限され、ファーウェイとの取引を停止し、アメリカに工場を建設することで、アメリカ企業との取引を継続する道を選択しました。
バイデン政権になってもファーウェイへの制裁措置は継続されるようであり、大きな流れは変わらないようです。
一方、中国はTSMCとの取引が当面は難しいということで、自国の企業であるSMIC(中芯国際集成電路製造)の育成、拡大に力を入れています。
なおアメリカ商務省がアメリカの安全保障や外交政策上の利益に反すると判断した企業等を列挙した「エンティティー・リスト」にファーウェイと同様にSMICも入っています。
SMICは直近では、半導体製造装置の調達に遅れが出ており、今後の先端半導体の製造に影響が出る可能性があるという報道がされています。
半導体製造装置のシェアは、日米及びEUの企業が上位を占めており、また半導体製造に関わる特許や技術はアメリカがほぼ押さえている状況です。そのため、SMICへの制裁措置が中国の半導体製造能力に、徐々に業績に影響してくるだろうと考えます。