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本格上昇開始か?「大型株÷小型株レシオ」で読み解く、日本市場“3つのシナリオ”

TOPIXは、大型株指数÷小型株指数の比率が低下する局面でピークアウトしてきたと分析する馬渕治好氏(米CFA協会認定証券アナリスト)。いっぽう同比率の低下は、中期的な相場付きの変化を示唆している可能性もあるとして、3つのシナリオを紹介しています。

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日本の大型株÷小型株比率から言える、中期的な相場付きの変化

日本の大型株指数を小型株指数で割った比率の低下が、外国人投資家(おそらく短期筋)が日本株を売り逃げようとしていることを示しているのではないか、と解説しました。

一方、大型株÷小型株比率が、中長期的な流れの一端である可能性もあります。それは、次の3つの側面です。

1)金融相場から業績相場へ

米国では連銀がいずれ利上げに動く構えで、日欧は量的緩和の最中ですが、日本での追加緩和観測は大きく後退しています。また先進国では長期金利が上昇しています。したがって、金融相場的な色合いは薄らいでいくでしょう。

一方、米景気は底固さを再度増しており、欧州も景気悪化というよりは底ばいに近い、という観測が広がっています。日本も昨年の消費増税の悪影響から、内需が徐々に脱却し回復へと向かっています。このため、少しずつ、業績相場の色彩を帯びていくでしょう。

金融相場では余剰資金が時価総額の大きい株に流れ込むとの思惑が強いため大型株が買われ、業績相場では利益成長率が高いと期待される小型株が買われがちです。したがって、大型株÷小型株比率の低下は、金融相場から業績相場への移行を示唆しているのかもしれません。

TOPIX(チャート提供:SBI証券)

TOPIX(チャート提供:SBI証券)

とすると、筆者が予想している向こう1~2か月の株価下落は、金融相場と業績相場の狭間(端境期)の中間反落、と位置付けることもできるでしょう。

2)輸出株から内需株へ

日本の内需は、徐々に明るさを増しています。これは、今年、来年と、消費増税がない一方、ベースアップやボーナス増があり、個人消費が持ち直していくと期待されるためです。

それに対して輸出は、これまでの円安にもかかわらず、輸出数量の伸びがはかばかしくありません(輸出企業の採算は改善しています)。円安は海外からの観光客増には大いに寄与しているとみられ、小売や消費財などの内需系企業にプラスになっています。

こうして輸出株より内需株が優位、という状況に入っていけば、大型株には国際的な輸出企業が多く、小型株にはネット系企業など内需系が多い、ということから、やはり大型株÷小型株比率は低下すると考えられます(もちろん、大型株にも内需系企業はありますし、小型株にも輸出企業はあります)。

3)外国人短期筋から長期筋へ

述べたように、外国人短期筋は、日本株から売り逃げようとしているようですが、逆に長期筋は、こつこつと日本株を買い溜めていると推察されます。これは、やはり日本経済の持ち直しや企業増益を見込んでいるためです。

5月第4週は、東証一部においては、海外投資家は3964億円の買い越しでしたが、6月第1週は388億円の買い越しに縮小しました。買い越し額が減少したのは、短期筋が日本株を売ったためと考えられますが、それでも買い越しにとどまった(売り越しにならなかった)のは、長期筋が買い続けているためだと推察されます。

短期筋は、個別の企業がどうだ、ということより、日本株全体を売ったり買ったりしようとします。このため、先物や現物のバスケット(いろいろな銘柄の集まり)を売買することが多いです。バスケットの場合、少なめの銘柄で市場全体と同じような値動きを目指すため、大型株が中心になります。

一方長期筋は、個々の企業の収益状況に目を付けます。この点から、小ぶりでも有望な企業に投資を行ないます(余りにも売買高が少ない銘柄は難しいですが)。

したがって、大型株÷小型株比率の低下は、外国人の買い手が、短期筋から長期筋に移行していることを示している可能性もあります。

馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2015年6月14日号)より一部抜粋
※太字とチャート画像はMONEY VOICE編集部による

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