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なぜ国産半導体は沈んだ?復活に導く台湾TSMCの日本拠点設立と2つの追い風=澤田聖陽

ルネサス、英半導体ダイアログ社を買収

もう1件、半導体関連企業のニュースとして、半導体大手ルネサスエレクトロニクス(ルネサス)が同業の英ダイアログ・セミコンダクター(ダイアログ)を48億8,600万ユーロ(約6,157億円)で買収することに合意したという報道がされています。

※参考:ルネサス、英半導体ダイアログ買収合意 6179億円で – 日本経済新聞(2021年2月8日配信)

ルネサスは、三菱電機および日立製作所から分社化していたルネサス テクノロジと、NECから分社化していたNECエレクトロニクスの経営統合によって、2010年4月に設立された企業です。

産業革新機構等からの増資による資金調達を実施した為、現在は株式会社INCJ(産業革新機構から分割設立された会社)が大株主になっています(2019年12月期末では32.55%を保有)。

ルネサスは車載半導体で高いシェア(グローバルで3位のポジション)を有しており、特に車載マイコンでは世界でトップです。

M&Aについてはかなり積極的に行ってきており、今回発表されたダイアログ以外にも、2017年にはアメリカのインターシルコーポレーション(Intersil Corporation)を、2018年にはIDT(Integrated Device Technology Inc.)を買収しています。

ダイアログは足元で高速通信規格「5G」向けスマートフォンやタブレット向けの需要が好調であり、売上の中でアップル向けのシェアがかなり高いという特徴があります。

ルネサスとしては、このディールで5Gの基幹技術を強化したいという狙いがあるようです。

なぜ日本の半導体産業は衰退したのか

ここで半導体業界の水平分業についてご説明していきたいと思います。

まず日本の半導体産業の盛衰について、時系列でお話ししていきたいのですが、1980年代は日本の半導体産業隆盛期であり、日本がグローバルでのシェアの50%以上を誇っていました(上位10社のうち5社が日本企業という状態でした)。

それからわずか10年足らずでシェアは急速に減り、2001年時点では世界の30%弱になっていました。

そして2019年では6%程度まで下落しています。

なぜ日本の半導体産業は競争力を失っていったのかという点ですが、グローバルで水平分業が進み、その流れに日本企業は乗れなかったからだと言われています。

水平分業とは、設計・製造・組み立て・検査・販売などの工程を、各国のその工程が得意な企業が請け負うという体制です。例えば、インテルが設計、企画製造した半導体をTSMCが請け負って製造するというような流れです。

今を時めくエヌビディアも基本的にはファブレス(工場を持たない企業)で、TSMCのようなファウンドリ企業に生産を委託しています。

Next: シェアを伸ばしたのは韓国と台湾。下請けと発注側の力関係が逆転へ

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