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米金利上昇は口実、買われすぎの反動に要警戒。日経平均はいったん2万5000円割れへ=馬渕治好

今週は、米国の債券市場に関する材料が多いです。だから長期金利が一段と跳ね上がる、と予想しているわけではなく、個々の材料で米長期債利回りが上下に大きく振れるかもしれないと懸念します。先週・今週の市場分析と合わせて、展望をお伝えします。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2021年3月7日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。

馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」2021/03/07号より

過ぎし花~先週(3/1~3/5)の世界経済・市場を振り返って

<引き続き荒い相場展開、パウエル議長の講演については、市場が勝手に期待して勝手に失望>

先週の世界市場は、米長期金利の動き自体はやや落ち着いて推移しましたが、引き続き上下に荒い展開(日内変動も、日々の上下動も、荒っぽい動き)で、主要国の株価は直近安値を割れる局面がありました。

木曜日のパウエル議長の講演については、前号のメールマガジンで予想した通り、長期金利の上振れの動きをややけん制する主旨ではあったものの、基本的にはこれまでの発言を繰り返すにとどまりました。そしてこれも前号での予想通り、市場は「パウエル議長が何とかしてくれるはずだ」と勝手な期待を根拠なく抱き、勝手に裏切られて勝手に失望しました。

金曜日の米雇用統計を受けた市場の動きについては、当初は米株安、米金利上昇、米ドル高が進みましたが、引けにかけては米株高、米金利低下、米ドル安に反転しました。

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来たる花~今週(3/8~3/12)の世界経済・市場の動きについて

<米国債券市場関連の材料が多く、世界市場は引き続き神経質な展開か>

今週は、米国の債券市場に関する材料が多いです。だから長期金利が一段と跳ね上がる、と予想しているわけではなく、個々の材料で米長期債利回りが上下に大きく振れるかもしれないと懸念します。

当メールマガジンでこれまで述べてきたように、金利の動きを株式市場として大きく不安視するには当たらない(たとえば、金利が米国で多少上がったからといって、米国経済が著しく悪化するわけでもない)のですが、不安視しない方が正しいとしても、投資家が金利動向に心理的にとらわれてしまっているのも事実なので、「理不尽な株価の振れ」は今週も金利動向の上下動とともに頻繁に起こる恐れがあります。

そうした債券市場における材料としては、まず国債の入札があります。3/9(火)には3年国債、3/10(水)には10年国債、3/11(木)には30年国債の入札が行われる予定です。事前には入札の結果は予想しがたいですが、入札が不調になれば、流通市場で債券価格が下落する(利回りが上昇する)展開がありえます。

また、足元の債券市場では、インフレ期待が取りざたされているだけに、3/10(水)の2月の消費者物価の発表も、関心が高いでしょう。同物価指数の前月比は、1月の0.3%上昇から0.4%上昇に若干ながら高まり、結果として前年比ベースでは、1月の1.4%上昇から1.7%上昇へと、伸びをやはり高めると予想されています(ただし主因は、エネルギー価格の上昇であろうと考えられます)。

バイデン政権の経済対策(財政支出増)については、法案が2/27(土)に下院で可決され、その直後の先週の市場では特に波乱要因とはなりませんでしたが、上院では法案の一部(失業保険給付の積み増し額など)を修正して、3/6(土)に可決されました。

上院での修正により、現時点では下院で可決した法案と上院で可決した法案に差異があるため、上院の修正後の案を下院で再可決することが必要です(もしくは、下院で否決して上院に再考をうながすなど)。ただ、おそらく下院では、修正後の案を3/14(日)までに再可決する可能性が高いと予想されています。

最終的に法案が成立し、景気刺激策の実施へ向かう、ということになると、財政赤字の膨張(並びに国債の増発)による長期金利の一段の上昇を懸念する声が広がるかもしれません。

今週も、もっぱら米国国債市場の動向に、株式市場も為替市場も振り回されるでしょう。

その他の材料で注目されるものとしては、日本で3/8(月)に2月の景気ウォッチャー調査が公表されます。現状判断DIは、昨年4月に9.4で底を付けた後、10月には53.0まで改善しましたが、そこから再悪化を続け、今年1月は31.2となっています。2月分はそこから34.0にやや持ち直すと予想されています。

3/11(木)には、ECB(欧州中央銀行)の理事会が開催されます。金融政策の変更はないでしょう。

Next: 長期上昇基調も、日経平均株価はいったん2万5,000円割れとなろう



盛りの花~世界経済・市場の注目点

<週末の米雇用統計に対する市場の反応についての、一つの解釈>

先週末 3/5(金)の2月の米雇用統計については、最も注目されている非農業部門雇用者数の前月比について、1月分が4.9万人増から16.6万人増に大きく上方修正されたうえ、2月分は37.9万人増と大幅な増加幅となりました。

米国市場においては、同統計発表後しばらくは、雇用が強いとして、米長期金利が上昇、米ドル相場も上昇した一方、米国株価(特に金利の影響が大きいと解釈されているナスダック総合指数)が下落しました。米10年国債利回りは一時1.62%に達し、米ドル相場も対円で108.64円までもの米ドル高となりました。ナスダック総合指数は、ザラ場安値では前日比2.57%安まで下振れしました。

しかし引けにかけては、10年国債利回りは1.55%にまで低下して、米ドルは108.40円近辺に若干ですが軟化して、ナスダック総合指数は切り返して前日比1.55%高となりました。

こうした上下動は、解釈が難しいと思いますし、おそらく「これが真の要因だ」というものもないのでしょう。ただ、筆者が「もしかするとこういう背景かもしれない」と考えているのは、述べたように、当初は雇用統計が強いと解釈されたものの、内容を精査すると意外と弱い、という見解が広がっていったためではないでしょうか。

まず、労働者全員で受け取っている週当たり賃金の合計額をみると、雇用者減(失業者増)を主因として昨年4月には前年比が7.0%減まで大きく落ち込みましたが、徐々にコロナ禍を抜け出して、昨年12月にプラス転換し、今年1月は前年比で0.4%増まで回復していました。ところが先週末に発表された2月分では、賃金合計額は前年比で0.7%減と、再度マイナス圏に転落しています。

また、前月比で37.9万人増加した非農業部門雇用者数の業種別内訳をみると、最も雇用が伸びた産業はレジャー業並びに接客業(leisure and hospitality)で、35.5万人増です。つまり、コロナ禍で打撃を大きく受けた業態の雇用のリバウンドといった色彩が強く、幅広い業種での持続的な雇用増とは言い難いです。

このため、2月の雇用統計は、当初の見出し(非農業部門雇用者数全体)に比べると、実は内容が弱めだったと言え、そうした弱さが遅れて市場に知れ渡ったのではないか、と推察しています。

中期シナリオ結論(2021/02/07時点)

(毎号最後に掲載します。変える必要がないと考えている間は、全く変えません。)

主要国の株価は、長期上昇基調にあると考える。ただし、少し前までの株高は急速過ぎたため、短期的な反落がこれから生じると予想する。

<短期展望~2021年初め頃>

少し前までの株高は、勢いだけが頼みの、危ういものであった。加えて、市場は新型コロナウイルスワクチンの開発動向や米国の経済対策期待など、最近の好材料を何度も蒸し返してはやし過ぎている感が強い。景気動向も、足元は一服商状を強めているが、それと株価の強調展開の乖離も大きかった。物色についても、たとえば日本株では日経平均先行に過ぎるなど、脆弱さがあった。このため、これまで上昇が急だった主要国の株価指数は、これから下落基調を鮮明にする可能性がある。

今後、いつまでどこまで下落するのは、見通しが難しい。ただ、それでも(見通しが大きく外れるリスクを冒して)最もありそうだと考えるシナリオをあえて提示すると、日経平均株価はいったん2万5,000円割れとなろう。

<中長期展望~2021年末に向けて>

経済や企業収益の回復は、かなり明確になってきた。ただし、回復基調は、これから極めて緩やかだろう。したがって、株価の高さと実体経済の低空飛行の差が、高PERという形で表れている。だから株価が基調として下落に向かうかといえば、そうではなく、市場は、もっと先までの回復を展望し(織り込んでおり)、上の位置で実体経済・企業収益が追い付いてくるのを待つだろう(結果として、時間をかけてPERが低下する)。主要国の財政・金融政策も、景気と株価の下支えに働いている。

2021年を通じて、主要国の株価や外貨相場(対円)は、短期的な上下の振れを繰り返しながらも、諸データに示される緩やかな世界経済の回復を踏まえながら、基調としては、持ち合いに上昇の色合いがついたような、じわじわとした株高・外貨高傾向を続けるだろう。

具体的には、日経平均株価は、2021年末までに3万円に迫ると予想する。米ドル円相場は、目先はいったん米ドル安・円高方向に振れる恐れが残るが、振れ幅は極めて限定的(1ドル100円前後まで)で、むしろ2021年は110円超えとなるだろう。ただし、2021年の外貨の上昇力は、米ドルより非米ドルの先進国通貨(欧州通貨や豪ドルなど)の方が勝るだろう。

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理解の種~世界経済・市場の用語などの解説:IMM、商業筋、非商業筋

脇道の花~道草の話題:「早く米長期金利動向とは関係ない相場になって欲しい」との声

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※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2021年3月7日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した項目もすぐ読めます。

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2021年3月7日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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