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「米金利上昇で株価下落」は古い?下げ相場しらぬ新人投資家が波乱要因、今後の2シナリオ=栫井駿介

日経平均株価は先週末に1,200円超えの急落を演じ、昨日3月1日には697円高と反発して2万9,663円となりました。米長期金利の上昇とその一服が原因とされていますが、なぜ株価は上下したのか。その原理と今後の展開について解説します。ワイルドカードとなるのは、恐れを知らない個人投資家の存在です。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

大きく上下する日経平均株価。コロナが終わると株価は下がる?

株価が下落傾向に転じています。先週末の2月26日、日経平均株価は久々に1日で1,000円以上の下落となり3万円を割り込みました(※編注:原稿執筆時点2月28日。週明けの3月1日の日経平均終値は前週末比+697円と反発、2万9,663円となっています)。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

株価が下落している最大の要因は、米長期金利の上昇です。10年国債利回りは1年ぶりの高水準となっています。

米国国債10年 日足(SBI証券提供)

米国国債10年 日足(SBI証券提供)

私はこれまで口を酸っぱくして言い続けてきたように、米国の景気回復傾向が見られるとFRBは金融緩和の終了(テーパリング)に向けて動き出します。

すなわち、コロナ禍の終了によって金利が上昇するのです。

金利上昇で株価が下落する理由

これまで株式市場の上昇を牽引してきたのが、この金融緩和によるバリュエーション水準の上昇でした。この原理は、以下の計算式によって導かれます。

PER=1/(rーg)
※r=金利+α、g=成長率

この計算式に数値を代入すると理解しやすいと思いますが、金利が下落すると分母が小さくなるので、PER水準は上昇します。さらに、成長率(g)が高い企業ほど分母が小さくなり、PER水準は高くなることがわかるでしょう。

これによって、成長率が高いと目されるハイテク企業を中心にバリュエーション水準の切り上げが起こり、株価が上昇したのです。

今起こっていることはそれとは反対です。金利の上昇によって分母が大きくなったことで、PER水準の切り下げが起こるのです。また、成長率が高い企業ほど金利への感応度は高くなりますから、株価も下落しやすい状況になります。

だからこそ、多くの投資家は金利上昇に敏感に反応しているのです。

それではなぜ金利が上がっているのかといえば、景気回復への期待感があります。米国の失業率は最悪期から低下し、期待インフレ率は2%を超えました。FRBは金融緩和の出口(テーパリング)の目安をインフレ率2%としており、景気回復が早期の金利上昇を意識させているのです。

もっとも、景気回復を伴う金利の上昇は「良い金利上昇」と言われ、この後本当に景気が回復するようなら株価にはプラスの影響を与えます。上記の計算式で言えばgが上昇するからです。

Next: 景気回復を伴わないインフレは危険。最悪のシナリオに備えを

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