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「米金利上昇で株価下落」は古い?下げ相場しらぬ新人投資家が波乱要因、今後の2シナリオ=栫井駿介

政府の手厚い支援は貯蓄に回った

一方で、必ずしも望ましくないシナリオもあります。それが景気回復を伴わないインフレです。

目下失業率は低下していますが、その裏にはそもそも求職活動を諦めてしまった「隠れた失業者」が存在すると言われます。彼らは統計には出てこないのです。これが、景気回復の判断を誤らせる可能性があります。

景気回復の主体にも注意が必要です。一般的に、所得が低い層ほど、限界消費性向が高いと言われます。限界消費性向とは、収入が増えた分どれだけの割合を消費に回すかという指標です。すなわち、所得の低い層の収入が増えた方が、実体経済を回復させる力があるということになります。

ところが、日米問わず所得の低い層ほど飲食やサービスなどの現場で働いている割合が高くなります。そして、これらの業種はコロナ禍で危機的な状況です。したがって、彼らの収入が増える状況ではないのです。

では、どこの景気が回復しているのかと言えば、ITなどホワイトカラーにおいてです。彼らの収入は安定していますが、もともと貯蓄性向が高い上にコロナ禍で消費する場所もありませんから、その多くは貯蓄に回ることになるでしょう。

実際に、日本でも米国でも、支給された給付金の大半は貯蓄に回っているのです。

あり余るマネーが向かう先は?

そこで私たちが見るべきは、貯蓄に回ったお金の行方です。

米国ではゲームストップ株の騒乱に見られるように、個人が直接的に投機によって市場を揺るがしています。ビットコインの上昇もその一端でしょう。彼らが直接投資せずとも、銀行預金や投資信託などを介して金融資産にお金が流れることになります。

このお金がこれまでは株に流れていましたが、それだけでは物足りなくなり、やがて資源(コモディティ)や不動産に流れることになるでしょう。すでに原油価格の上昇が見られますし、銅価格は11年ぶりの高値を記録しています。

Copper先物<COMEX> 週足(SBI証券提供)

Copper先物<COMEX> 週足(SBI証券提供)

株価の上昇は実体経済に直接的な影響を与えにくいのですが、資源や不動産価格は私たちの生活に直接的な影響を与えます。1970年代のオイルショックはその典型的な例ですし、上記で挙げた銅も電気自動車をはじめさまざまなハイテク製品で利用されます。

ここに投機的な資金が流れ込んでしまうとどうなるでしょう。

景気回復を伴わないインフレの懸念

原油価格が上昇すれば世の中のあらゆる製品が値上がりしますし、不動産価格が上がれば住む場所にも困る人が出てきます。

現にアメリカでは、家賃の上昇で住む場所を追われる低所得者も少なくありません。失業はこれにダブルパンチを与えるでしょう。

このようなコスト・プッシュ型のインフレになると、誰にとっても良いことはありませんから、投機的な動きを抑えるために、FRBも金利を引き上げざるを得なくなってくるのです。

私は景気過熱によるインフレよりも、投機的な動きによるインフレの可能性の方が高いと考えています。したがって、私たちが今後気にすべきは原油や銅などの資源価格、不動産価格と言うことになるでしょう。

上記のシナリオは、数年単位の長期的な話になる可能性もあります。じっくり見ていく必要がありそうです。

Next: 今後の展開は2パターン? いま長期投資家がすべきこととは

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