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機関投資家はチャートを見ずに企業を見る。銘柄選びで重視する4大要素とは=街

株価が大きく動くとき、その裏には機関投資家が常にいます。では、機関投資家はどうやって株の売買を決めているのでしょうか?(『億の近道』街のコンサルタント)

プロフィール:街のコンサルタント
20数年間を金融(主に証券)会社で過ごし、投資銀行業務や事業育成の業務を担当。「金融機関に籍を置く(安全な)立場で客観的なことを言うより、いっそのこと経営者と同じ立場で事業拡大のお手伝いを出来ないものか」と思い立ち、2005年春に証券会社をリタイアしてコンサルティング会社を設立。

よくある質問「機関投資家はどのように運用している?」

当メルマガで2008年からコラムを書き始めて、何と500回も続きました!よく続いたものだと、我ながら驚いています(笑)。懲りずに読んでいただいている読者の皆様には感謝です。

さて、読者の皆様から「機関投資家は普段どのように運用しているのか?」という質問をときどき受けます。

そこで、個人投資家も見習うべき、とてもオーソドックスなボトムアップの手順を簡潔に書いてみます(大半の読者には釈迦に説法ですが)。

上場企業が以前よりも情報提供するようになった

まず、ここ数年で一番大きく変わったのは、投資家に対する上場企業の態度(=IR、インベスターズリレーション)です。

様々な情報開示、投資家との対話の量が格段に増えました。四半期毎のIR資料は多ければ50ページにもなり、世界的に見てもかなり充実してきています。

投資家との対話についても、原則、機関投資家との個別面談にはすべて応じるという企業が増えています。

ただし、上述のように前向きにIRを実施している企業は、上場企業の半数程度(1,800社強)であり、残りのうちの2分の3ほどの企業は以前とあまり変わっていません。

ここを改善させるのが、今後の証券関係者の課題となります。

注意したいのは、IRに前向きではなかった企業が「熱心に取組み始めた段階」に株価が上がるケースが多いことです。

Next: チャートはあまり見ない?機関投資家が重視する4つのこと



機関投資家が銘柄選定で重視する4つのこと

<その1:決算説明会に参加する>

銘柄の選定方法としては、IR関連業者(証券会社や独立系事業者など10数社)から送られて来る決算説明会や中期経営計画などの説明会への招待だけで年間1,000回以上になり、その中で各指標面から割安と考えられる企業を選び、説明会に出席する(年500回~700回程度)ことから始めます。

個人投資家の場合には、四半期毎の決算発表時にリリースされる数字と補足資料を読み込むところから始めれば良いと思います。

その中で気になる企業があれば各データを深く読み込んだうえで、必要に応じて直接企業に電話なりで質問するのが良いです。

<その2:決算資料に載っていない情報を掴む>

説明会では質疑応答の枠で、会社の説明だけでは情報不足の箇所を確認します。

最近はオンライン説明会が主流となり、かなり活発に質疑応答が行われますから、説明会だけでも十分な情報を得られることも多いです。

<その3:経営陣の力量も見て割安かを判断する>

売買を決める際の主な判断基準は、様々な数値の観点から株価が割安であることと共に、経営陣の力量があるか否かなどの実績面や主観的な要素も重視します。

ファンド毎に各銘柄の流動性の最低基準なども考慮して組み入れ額も決めます。

反対に、数年後の収益まで織り込んでしまった、または収益低下の要因が出てきたなどと判断される際(組み入れ銘柄が様々な理由により割高になったと判断した場合)にも、マーケットインパクトを最小化するため分散して売却します。

アクティブ・ファンドでは業種や銘柄をあまり分散せず、集中投資するファンドが多くありますが、公募型のアクティブ・ファンドはある程度はインデックスに近い動きとなるような組み入れ方をすることが多いです。

なぜなら、ある程度は指数に連動して動かないと「日経平均は上がっているのに俺が買ったファンドは上がらないじゃないか!」と言ったクレームを投資家から受けやすいためです。

それゆえ、大型の公募型ファンド(投資信託)になればなるほど、指数と同じように動くファンドになりやすいです。これではコストの安いETFを買うのとあまり変わらず、何のためにわざわざアクティブ・ファンドを買っているのか?となります。

<その4:投資判断後は速やかに売買。市場への影響も考慮>

売買のタイミングについてはあまり気にせず、投資判断を行ったら速やかに売買執行します。

ただし、価格にインパクトを与えないよう分散して発注し、特に流動性の低い銘柄は場中では無く前場・後場の寄付きで執行するなどをします。

Next: 証券マンが「そろそろボトムだ」と言ったら要注意?



証券マンが「そろそろボトムだ」と言ってきたらご注意を

ざっくりで上述のような手順の繰り返しになりますが、やはり大半は、日々の銘柄研究や情報収集など地道な作業になります。安易な思い付きや生半可なチャート分析で儲かるほど、投資は楽ではありません。

どこかの証券マンがチャートを示して「そろそろボトムを付けたと思います」と語り出して勧めてきたら注意しましょう。

チャート分析だけで儲かるなら、グーグルやアップルなど大手IT企業がハイテク技術を駆使して投資するのが一番儲かるはずであり、彼らが相手では我々が勝つことは不可能です。しかし、現実にはそうではありません(笑)。

ちょっと考えればわかりますが、レアケースを除いて、思い付きや薄い知識で儲かるなら誰も苦労しません。しかし巷には「100万円が数年で1億円になった」という本が山積みになっています。暗号通貨で想定外に儲かったという話もよく聞きますが、ひと握りの成功談なのでしょう。

加えてご理解いただきたいのが、銀行マンや証券マンとは投資のプロでは無く、証券の取引方法に詳しいだけのプロだということです。この方達の指示通りに運用したら結果は……ですね(笑)。

カネ余りによる博打的な相場が続きそう

今月に入ってから米国ナスダック指数の変調が始まっています。流石に利上げ(テーパリング)を意識し始めたのか?金利反転の動きによりモメンタム投資が限界に近づいたのか?

バイデン大統領が目指す重要政策の1つが格差拡大を止めることですが、一つは雇用を増やし中下位層の所得を増やすことであり、もう1つは資産価格の上昇を抑えることです。つまり緩和策を執りつつ金融市場での規制を強めることと解釈できます。

この観点からは、一定以上の低金利にはせず、かつ2%以上の金利も容認しない。雇用促進や生活支援を強化するが、その財源は企業や富裕層への増税で賄う……といった施策が浮かびます。

とすると米国株式市場にはアゲインストの政策になると考えられます。市場金利については米国には多少なりとも利上げの素地が出来つつある一方で、日本では金利を上げられる見込みが立ちません。

企業業績については、1年半分くらいは織り込み済みと仮定すると、日本の当面の株価指数は日経平均で2万7,000円~2万9,500円ほどの範囲から抜け出せず、TOPIXも1,800~1,950円あたり。

そんな中で資金余剰が継続し、将来に期待の持てる銘柄への物色が続き取捨選択の動きが続く……という風に考えています。相変わらずの金余りによる博打的な相場も続くのでしょう。

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image by:Anton Gvozdikov / Shutterstock.com

億の近道』(2021年5月13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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