あなたは退職金の使い道を考えていますか?海外旅行、趣味に没頭、貯金…その使い道はいろいろ考えられますが、まずは自由に使えるお金はいくらなのかを知る必要があります。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。
退職金を何に使う?
定年退職の数年前には、具体的な退職金の額がわかります。
金額がわかる頃には、かねてより計画していた退職後の旅行を具体化し始めたり、金融機関から熱心に勧誘される投資信託などで少しは運用してみようかと調べたり、ご自身またはご夫婦で検討し始めても良い時期かもしれません。
ただ、退職金のうち、自由に使える金額は限られています。
そこで今回は、退職金でいくらまでなら自由に使えるのか。その計算方法をお伝えいたします。
老後資金として使うことが原則
退職金は勤め先の規定によってもらえるもので、いつの時代でも必ず一定の金額がもらえるものではありません。退職する時の勤務先の業績などによっても、もらえる金額は変動します。
従って、極端な話ですが、昨年に退職した人と同じ金額をもらえるとは限らないのです。
また、退職金は老後の生活資金として使うことが原則です。
退職金がご自身の口座に振り込まれると、一度に多額のお金が手元に入り、気持ちも大きくなるかもしれません。しかし、退職金で自由に使える金額は、人によってはほとんどゼロかもしれません。
70代・80代になってから生活資金に困らないように、自由に使える金額を事前に計算しておくこと大切です。
家計の収支を計算する
まず知っておいていただきたいことは、退職前(現在)の家計収支です。
特に支出額は、退職後も大幅に変わることはありません。そのまましばらくの間は収支の額は変わることなく家計から支出されます。従って、把握しておくことは重要です。
退職後に趣味にかかる費用を増やす予定であったり、被服費は減ったりと、すでに増減のわかっている金額は調整しても良いです。
原則、老後の生活では年金収入で足りない分を、退職までの貯蓄や個人年金といったそのご家庭で蓄えた資金、そして退職金で補います。
退職金の中から老後の生活費に使わなくても良い金額が、一応の自由に使えるお金です。
なぜ「一応」なのでしょうか? なぜならば、生活費以外にもご家庭ごとに、お金を準備しておくことが必要だからです。
Next: 「住宅ローン」の繰り上げ返済は悪手?退職金の有効な使い方
住宅費の予算化を始めておくこと
例えば、借入金の返済が完了していない方は、その返済費用が必要です。
よく「退職金を使って住宅ローンの繰り上げ完済をしても良いか」と相談を受けることがあります。その回答は、ほとんどの方の場合、老後晩年の家計収支をシミュレーションすると生活費が乏しくなるので、「止めた方が良い」とお答えしています。
なぜなら、住宅ローンを完済する時に現金が減ります。老後の生活で急にまとまった現金が必要になった時、金融機関から借り入れることができても、住宅ローンの金利と違って高利だからです。
また、住宅ローンの返済末期の返済額の内訳は、一般的に利息分は返済し終えて、元本分の返済ですので、退職金を返済に使っても利息分の返済額が安くなる、といったメリットはほとんど期待できないからです。
マイホームにお住まいの方は、住宅を改修する費用、建て替える費用、住みかえる費用など終の棲家(ついのすみか)までを計画し、そのための費用を予算化しておくことが大切です。
また、生涯賃貸住宅に住む計画の方も、住宅費の予算化が必要です。
賃貸の経営者は、高齢者に部屋を貸すことを嫌がる傾向があります。従って、歳を取ってから賃貸の引っ越しがすでにわかっている場合などは、その時の対策を今から決めておくことが大切です。
初心者に退職金運用はハイリスク
また退職金を使って、株式や投資信託といった金融商品に運用をする方法を相談にみえる方がいます。
退職金を金融商品で運用するのは、現役中から金融商品で運用していた方が定年後も続けるというならよいのですが、初めて運用をしてみようという方にはお勧めいたしません。
なぜなら、運用の仕方を学ぶのに時間もお金もかかるからです。
どうしても運用を始めたいのであれば、その予算は上記で計算した「自由に使えるお金の範囲で」です。言い換えれば、なくなっても良いお金の範囲内ということです。
また、すでに運用の経験がある方も、新規商品の運用に使う資金は、退職金のうち自由に使えるお金の範囲内にした方が良いでしょう。
Next: 現金が貴重になる?退職金の使い道は限られている
退職金の使い道は限られている
年金収入が中心となる老後の生活では、現金が手元に入りづらくなります。
将来は現在よりキャッシュレスが進み、買い物をする時でも現金を手渡しで使うことは減少するでしょう。
しかし、お金が必要になって借りても、家計の体力が衰えることから、返済には困難が伴います。そのため、銀行の預貯金口座に常に預貯金があることが必要です。
したがって、一度に多額に入ってくる退職金といっても限られた金額であり、老後の生活費に充当することが主な使い道になるのです。
また、繰り返しになりますが、退職金から自由に使えるお金は限られているのです。
退職金から自由に使える金額とは、まず家計支出を把握して、また老後の生活費に充当する金額も把握して、そして残った金額分なのです。
『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2021年6月2日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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