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ソニー大復活の原動力は「社風」。株価2000円台で仕込んだ筆者がまだまだ売らない理由=山崎和邦

ソニーとトヨタ。日本を代表する世界的企業が復活を遂げた。両者に共通するのは、その特長的な社風だ。永続性のある企業には、変えていいものと、絶対に変えてはいけないものがある。それが社風である。(「週報『投機の流儀』」山崎和邦)

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※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2021年6月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

トヨタとソニー、社風を残せる企業はやはり長期持続する

世界的に日本を代表する企業はトヨタである。

平成初年には世界の時価総額10位の中の7社は日本株であり、メガバンクと野村證券とトヨタだった。今は世界の50位の中に日本株はトヨタ1社しかない。しかも30位ぐらいだ。

トヨタはその社風の好き嫌いは別として、やはり日本企業の代表的存在である。

それに対してソニーは、出井伸之元社長が創業者井深・盛田両社長や大賀社長の遺伝子を破壊して凋落させ、3万3,000円だったソニー株は2,000円になってしまった(もっとも株価3分割をした後だが)。

ところが、そのソニーは大復活を遂げた。純利益も1兆円に迫る。

かつての看板事業のエレクトロニクスをはじめ音楽・映画・金融など多岐にわたる事業を抱えるソニーの力をどう融合させるか。ソニーが向き合ってきたのは、世界中の複合企業が問われ続けるテーマである。

ソニーグループ<6758> 月足(SBI証券提供)

変えていいもの、変えてはいけないもの

ソニーは今年4月、社名を「ソニーグループ」に変更した。

だいたいは社名を変更すると凋落する。松下電器がその良い例だ。社名を変えるとともに遺伝子まで崩壊させるからだ。古い企業はそれなりに蓄積された体験知を持つが、同時に古いが故の制度疲労もあり、ゴミが溜まる。

したがって「変えるべきものは何か、変えてはならないものは何か」を明確にしなければ、「ただの改革」では守るべき遺伝子まで破壊してしまい、出井伸之のソニー崩しの二の舞になる。

大復活を遂げたソニーには今のところその懸念はないが、数字を語らないところに経営方針の真意があるような気がする。

出井元社長は創業社長の井深・盛田と違って早稲田大学政治経済学部出身の文系出身であり、エレクトロニクスへのプライドを「強烈な偶像意識」と言って完全に切り捨てた。そして、それまで傍流と見なされていた映画や音楽の事業に力を注いだ。それが今の収益源のもとをつくったとも言えないこともないが、彼は「変えるべきものは何か、変えてはならないものは何か」の区別がつかなかった。

ゆえに、強力な求心力を持てなかった。その懸念は自分でも自覚していたらしい。

業績や株価は低迷した。そして後任者に外国人のハワード・ストリンガーを指名し、彼も社内に結集を呼びかけた。ストリンガー氏はソニーという会社を「固い壁で覆われたサイロ」に見立て、「サイロを壊せ」と提唱し、混迷を招いた。

Next: 「夢を託したソニー株は絶対に売らない」



増資に次ぐ増資で研究開発。画期的商品を作り上げていたソニー

ソニーの経営を語る時に時々引用されるのは、前身の東通工(東京通信工業)を設立した際の設立趣意書だ。

共同創業者の井深元社長が終戦翌年の1946年に起草した「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」という夢だった。そして「単に電気、機械等の形式的分類を避け、その両者を統合させるが如き他社の追随を絶対に許さざる境地に独自なる製品化を行う」と終戦の翌年から明文化していた。

そして、この遺伝子を掲げ、それに感動することを軸にした経営を立ち上げた。

ソニーはある意味で筆者の青春とともにあった。1961年に筆者が右も左も分からぬままに野村證券の本店営業部に配属されて最初にやらされた仕事は、ソニーの公募株を760円で販売することだった。普通、増資と言えば額面の50円が当たり前だった。それをその15倍の760円で売って来いというのだ。

そしてその販売先の候補はソニーが自ら関連会社を指名した。関連会社は額面の15倍の増資を全部が喜んで買ってくれた。彼らが筆者にとって将来の重大な顧客になったことは当然であった。

そして、ソニーはその増資で得た資金を研究開発につぎ込んだ。そして新しいものが開発されて株価が上がると、また額面の何倍もの時価発行増資を行い、また資金を集めた。ソニーこそ、自前の技術力・開発力と世界を股にかけた盛田昭夫の販売力と、株式市場を利用した資金集めを駆使した企業だ。

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夢を託せるソニー株だけは絶対に売らない

ソニーは、戦後日本の技術と株式市場とを駆使して発展した会社であった。筆者の入社した頃は、古い社員はソニーのことを東通工(東京通信工業の略)と呼んでいた。

大復活を遂げたソニーに託す夢は大きい。

出井伸之氏が凋落させたソニーだが、創業当時の遺伝子はどこかに残っているはずであり、再び復活する可能性があると半ば信じて(「半ば」である)筆者は2,000円台を少しずつコツコツと買った。普通、5割~10割も上がれば売ってしまうのだが、ソニーだけは4倍になった今でも持っている。

これはソニーが「いざなぎ景気」の中で1,000円を超えて5,000円になった時に、当時投資信託運用委託会社の社長をしていた柿原元社長は、次のように答えていた。「『ソニーを5,000円になってもまだ売らないつもりか』と記者やアナリストが訊くが、私はこう答える。『もし1万円になっても君らは同じ質問をするだろう。そして私は同じ答えを言うだろう。売らないで持続する』と」。

その男は、元々投資信託運用に向く人ではなく、一世の相場師であり、「株の柿原」と呼ばれた相場の張り師だった。しかし、トヨタがまだ中堅企業の時代からトヨタ株の大株主であり、一説によると、トヨタの配当金だけで野村から受ける年収よりも多いという噂もあった。

「一世の相場師」がトヨタに関してだけはこのように持続する。またソニーに対しては、このように答える。この辺の区別を、筆者は多感な青春時代に学んだ。

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(はじめに)メジャーSQ日は無難に消化したが・・・
(1)今の株式市場の底流に横たわっている問題
(2)当面は10線転換法で見る限り、重い動き。9月衆院解散説強まる。その頃に五輪・ワクチン遅れ・支持率低下等の全ての外因は下火になる。が、株式市場は先取りして動き出すか? 
(3)東京五輪によるコロナ感染拡大の恐れは少ないというシミュレーション
(4)市場を注視すべき時
(5)日経平均はNYダウよりもナスダックに連動
(6)一部海外投資家はオリ・パラの中止を警戒しているという話しがある
(7)NT倍率が2ヶ月ぶりの水準に低下
(8)政治の貧困、官僚の劣化

■ 第2部;中長期の見方
(1)霧は晴れてもFRBの政策転換の可能性とサマーズの米経済警戒説
(2)外部から来る刺激の反応の仕方が異なる
(3)懸念材料の最大のものは米金利上昇によるFRBの金融政策転換であるが、経済外部要因の事件性のものとして考えられる
(4)「日本はコロナ対策できっと巻き返す」
(5)大復活を遂げたソニー、数字語らぬ経営方針の真意──40年前の話、旧・野村的風土の中で「一世の相場師」と言われた人が野村投信運用会社社長に就任。その柿原氏から学んだ、ソニーとトヨタの長期持続──これを筆者は多感な青春時代に学んだ
(6)今回のG7は法人税率15%下限を明文化した──長期的に見て大変良いことだ
(7)ESGの時代、脱炭素は主力テーマだが・・・東京電力株の話しは出ない
(8)気候変動が金融不安を起こす可能性
(9)米中問題──6世紀ぶりに次の世界覇権を握りたがっている中国
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image by:Ned Snowman / Shutterstock.com

山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2021年6月14日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

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