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中南米「ビットコイン経済圏」誕生の兆し。法定通貨化の連鎖で仮想通貨は上昇するか?=高島康司

ビットコインを中心とした暗号資産全般に関する動向を紹介する。価値を上げる出来事と下げる出来事が同時に巻き起こっている。双方について解説しながら、今後の仮想通貨の展開を考えたい。(『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』高島康司)

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※本記事は『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2021年6月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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ビットコインは追跡されて盗まれることが判明

ビットコインを中心とした仮想通貨の状況について解説したい。

いま堰を切ったようにさまざまな出来事が起こり、仮想通貨の将来を左右するトレンドが形成されようとしている。否定的な出来事もあれば、肯定的な出来事もある。それらを概観して見よう。

まずはビットコインの相場に対して否定的な内容のニュースからだ。

先月5月、米石油パイプラインがサイバー攻撃を受けて一時的に操業停止に追い込まれ、ロシア系のハッカー集団にビットコインで身代金を支払うという事件があった。その後、米司法省は6月7日、被害にあったビットコインの「大半を取り戻した」と発表したのだ。西部カリフォルニア州の連邦地裁に提出した文書によると、約230万ドル(約2億5,000万円)相当を差し押さえたという。

これは、どんなに厳重に管理されている仮想通貨の保管所やウォレットでさえも、十分な技術的な能力のある個人や組織であれば、これをハッキングして、資産を盗む(取り返す)ことが可能であることを示した。

すでに何年も前から、仮想通貨の取引所は毎年のようにハッキングされて資産の盗難が続いていたが、最近ではセキュリティが強化されたこともあり、そのようなことは以前よりも起こりにくくなっていた。

しかし今回の出来事は、ハッキングの可能性を改めて認識させ、仮想通貨の資産としての安全性に疑問を呈することになった。

その結果、ビットコインを中心とした仮想通貨の相場は下落した。

新たな「バーゼル規制」で銀行の暗号資産保有が困難に

6月10日、世界の銀行を規制する共通のルールを設定している「バーゼル銀行監督委員会」は、仮想通貨を扱う銀行に対する規制案を発表した。銀行がビットコインなどの仮想通貨を保有する場合、損失のすべてを埋め合わせる資本を準備するべきとした。

「バーゼル委員会」は規制案で、暗号資産を2つのカテゴリーに分類した。

1つ目は米ドルなどの法定通貨に連動するステーブルコインや、デジタルトークン化された資産クラスが含まれる。

2つ目のカテゴリーは、ビットコインや他の類似した暗号資産で、1つ目のカテゴリーよりも高いリスクが伴うと指摘した。

規制案では、この2つ目のカテゴリーに属する暗号資産のリスクウェートを1,250%とし、ビットコインなどを保有する銀行は、その額面価格に値する資本を持つ必要があるとした。

やはりこの規制で重要になるのは、2つ目のカテゴリーだ。これはどういうことかというと、銀行がビットコインのような暗号資産を保有する場合、全額を失うリスクがあるので、保有している額を25%上回る安定資産を別に保有しなければならないという規制だ。

この規制は、銀行がビットコインを保有することを実質的に困難にすることは間違いない。

いまのところ、ビットコインなどの仮想通貨を資産として保有する銀行はあまりない。だがこの規制が、ビットコインなどの既存の仮想通貨の相場を下落させる要因にもなるだろう。仮想通貨の相場にとってはマイナスのニュースだ。

Next: ビットコイン法定通貨化の動きは止まらない。カリブ海諸国が動きだした



エルサルバドル、パナマ、パラグアイの動き

しかし、このようなマイナスのニュースが続くなかでも、ビットコインの相場を上昇させる可能性のあるニュースも多い。

当メルマガでは前回、中南米のエルサルバドルが世界で初めてビットコインを法定通貨にするという情報を紹介したが、これを可能にする法案はエルサルバドル議会を通過し、ビットコインが正式の法定通貨として承認された。3カ月の猶予期間の後、本格的に導入される見通しだ。

この動きは一種のドミノ現象を生みつつある。エルサルバドルに続き、パラグアイとパナマもビットコインの法定通貨化の動きを開始している。

いまパラグアイ政府は、「PayPal」と連携し、ビットコインの法定通貨化を視野に入れたプロジェクトに取り組んでいると伝えられている。さらにパナマ政府は、ビットコインとアルトコインを同国で全面的に使用する方向だ。

すでにブラジル・アルゼンチン・ベネズエラなど高率なインフレに苦しむ国々が、新しい支払い手段を求めて、ビットコインを中心とした仮想通貨の使用が一気に拡大している。

そうした動きとならび、中南米のホンジュラス、そして複数のカリブ海諸国が、それこそドミノ倒しのようにエルサルバドルに続き、ビットコインの法定通貨化の動きを開始している。

この動きを支援している米DeFi大手「Sovryn」の創立者エダン・ヤゴによると、国名を明かすことは今はできないが、すでに3カ国のカリブ海諸国の政府とビットコインの法定通貨化の準備を開始したという。

カリブ海諸国には、キューバ、ジャマイカ、ドミニカ共和国、グレナダなどの国々が含まれる。もしかしたら、かなり近いうちに、これらの国々でビットコインの法定通貨化の発表があるかもしれない。

イランにもビットコインの法定通貨化への動き

さらに、イランでも同じような動きが起こる可能性が出てきている。

首都テヘランでロウハニ大統領を議長として、政府経済調整委員会が招集された。その席上でロウハニ大統領は、イランで暗号通貨の活動が法制化され、この分野に投資している国民の資産が保護されるために必要な措置が講じられるよう呼びかけた。

また、国家のマクロ経済における仮想通貨の役割に関して、必要な措置がすべて講じられる必要があるとも強調し、法定通貨化に含みを残した。

実はイランでは、合法的なマイニング活動で10億ドルを超える収益をすでに生み出している。周知のようにイランは、アメリカから厳しい経済制裁を課されているが、マイニングがこれを切り抜ける助けとなっているのだ。

ロウハニ大統領のこの発言は、イランのこうした現状を踏まえ、マイニングとビットコインの使用を政府が全面的に容認する方向であることを示している。

その延長線上には、エルサルバドルのようなビットコインの法定通貨化の動きになってくるのかもしれない。

Next: 米国内でも仮想通貨を認める動き?テキサス州がサービス提供を認可



テキサス州政府は声明で仮想通貨のサービス提供を許可

また、興味深い動きも起こっている。「テキサス州政府銀行部」は州内で営業している銀行に、ビットコインなどの仮想通貨を対象としたサービスの提供を許可した。

これには、銀行が顧客の保有する暗号資産を管理するサービスや、顧客のウォレットのプライベートキーだけを管理するサービスなどだ。

テキサス州政府は銀行がこのような仮想通貨を対象したサービスを提供する場合、州の設定した規制を順守するように求めているものの、仮想通貨の取引所と積極的に協力し、サービスの拡充を後押しする指針も出している。

これは「テキサス州政府」が仮想通貨を銀行の新たな収益源として容認した動きである。

先の「バーゼル委員会」の厳しい規制が、テキサス州のこうした動きにどのように影響するのかはまだ分からない。しかし、テキサス州の銀行が提供するサービスが、顧客のウォレットやプライベートキーの管理に限定されている場合、影響は小さいと考えられる。

キューバの仮想通貨に向けた不気味な動き

このように、「バーゼル委員会」の規制がある一方、ビットコインの法定通貨化の動きとともに、仮想通貨を積極的に容認する動きは加速度的に拡大しているように見える。

このひとつの背景は、新型コロナウイルスのパンデミックを機に、バイデン政権が実施した巨額の経済政策がもたらしたインフレの昂進が背景にある。

いまアメリカでは、過去30年来の高いインフレが始まっている。インフレ率はさらに高まる可能性も指摘されている。インフレとはドルの価値の減価だ。ドル保有のリスクを回避する必要から、リスクはあってもこれからも価値の上昇が見込まれるビットコインなどの仮想通貨に注目が集まっているのだ。

そのような状況で、ちょっと不気味なことも起こっている。6月12日、キューバのフランシスコ・レンス副大統領は、キューバに入国する観光客に米ドルは持ち込まないように注意した。6月21日からキューバ国内の銀行は、米ドルの取り扱いを停止するという。観光客には、ドル以外の通貨による決済を求めている。

前トランプ政権はキューバに厳しい経済制裁を課し、ドル決裁圏からキューバが実質的に排除された状態になっている。今回のキューバの処置は、この制裁に抗議する意味があるとされているが、他のカリブ海諸国で進みつつあるビットコインの法定通貨化の動きとタイミング的に連動しているとする観測もある。

つまりキューバは、将来のビットコインの法定通貨化を想定し、ドルの排除を決めたのではないかという観測だ。この方向に進むのかどうかは、時間が経つと分かるだろう。

Next: 仮想通貨は上昇するか?追い風と向かい風が同時に吹き荒れる



仮想通貨は上昇するか?

さて、このように見ると、ビットコインを中心とした仮想通貨の相場を押し上げる情報が多いことに気づく。

エルサルバドルの動きはドミノ倒しのように他の国々へと拡大し、ビットコイン経済圏のようなものができるのかもしれない。

もちろん「バーゼル委員会」の厳しい規制もあるのでまだ分からないが、ビットコインにとっては明るい話題だ。

ここから暗号資産はどのように展開するのか注目だ。

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