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女性議員比率が低すぎる。G7で最低、世界166位に甘んじる日本政治の時代遅れ=原彰宏

世界各国では女性の社会参加を促すために、様々な制度が導入されています。一方、日本は何周遅れかもわからない状況です。今回は政治家を中心に、日本の男女共同参画が進まない理由を考えます。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2021年6月14日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

日本の女性議員比率は9.9%、G7で最下位

2018年に成立した「政治分野における男女共同参画推進法」の改正案が今国会で提出され、全会一致で可決されました。

内閣府にある「男女共同参画局」ホームページには、2018年成立の「政治分野における男女共同参画推進法」に関する説明が載っています。

この法律は、衆議院、参議院及び地方議会の選挙において、男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指すことなどを基本原則とし、国・地方公共団体の責務や、政党等が所属する男女のそれぞれの公職の候補者の数について目標を定める等、自主的に取り組むよう努めることなどを定めています。

出典:政治分野における男女共同参画 – 内閣府男女共同参画局(2021年6月18日配信)

国際的な議員交流団体「列国議会同盟(IPU、本部スイス・ジュネーブ)」は、2020年に世界の国会議員で女性が占める割合が平均25.5%だったとする報告書を発表しています。

この数字は、1995年(11.3%)から2倍以上に伸びましたが、前年比では0.6ポイントの鈍い増加にとどまり、男女同数を達成するには「50年かかる」と警鐘を鳴らしています。

IPUのまとめによると、国会(二院制の場合は下院に相当する議会)の女性議員比率の上位3カ国はルワンダ(61.3%)、キューバ(53.5%)、アラブ首長国連邦(50.0%)でいずれも50%以上で、日本は9.9%(166位)で、G7諸国では最低でした。

日本の女性議員の比率が衆議院で「9.9%」にとどまっているというのが、まぎれもない事実であるということを、ここで強く認識しておきましょう。

男女比を定める「クオータ制」も効果的

昨年に国政選挙が行われた57カ国のうち、25カ国が議席や候補者の一定割合を男女に割り当てる「クオータ制」を採用しています。こうした国々では、女性議員の比率は平均27.4%で、採用していない国より11.8ポイント高かったようです。

また、報告書は新型コロナウイルスの影響にも触れていて、女性の候補者がオンラインでの中傷や嫌がらせを受ける機会が増えたとも指摘しています。在宅勤務が普及してインターネットに接する時間が増えたためとの分析のようです。

逆に、議会でオンラインでの出席や投票が普及し始めたことで、政治家同士の人間関係にも変化が生まれたとしています。

男性中心の古い慣行や、一部の政治家が情報や権利を独占する「クラブ」的な雰囲気が通用しにくくなり、女性がいっそう意思決定に加わりやすくなる効果を生んだとしています。

以上は世界でのことで、日本に関してはまったく通用しない分析結果で、遅れています。周回遅れも甚だしいというか、もうお話にならない状態だと言えます。

日本の国会でのオンライン出席や投票なんて、いつのことになることやら、デジタル庁ができても実現不可能でしょうね。

ちなみに、新型コロナに感染した宿泊・自宅療養者に特例で郵便投票を認める法案も、自民、公明、維新、国民民主各党の賛成多数で可決されています。

ここで「クオータ制」という言葉が出てきました。この解説の前に、今回の法案改正の中身を、先に見ておきましょう。

Next: 今さら女性議員へのセクハラ・マタハラ対策を講じる日本



今さら女性議員へのセクハラ・マタハラ対策を講じる日本

改正案では政党に対し、女性の政治進出を阻む一因とされるセクハラやマタハラ対策を講じる努力義務を新たに規定するとしています。男性議員が多い現状を踏まえ、透明性に欠ける候補者選定方法の改善や、人材育成への取り組みなども求めました。

今さら、まだこんなことを言っているのか……というのが私の感想です。いつの時代の法案を決めているのでしょうね。これが日本の国会の実態です。

当初、現行法で政党の努力義務とする女性候補者数の目標設定について、より強制力のある規定に格上げする方向で調整していましたが、現職議員に男性が多い自民党は、女性候補者を増やしにくいことから難色を示し、日本維新の会も反対しました。

現行法では、政党が女性議員増の取り組みを怠っても罰則規定はなく、実効性が伴わないことへの懸念は根強くありました。

もしかして、女性が国会議員になること自体が不快なのでしょうか…。こんなところにも自民党支持団体「日本会議」の影が見え隠れするのは、気のせいかもしれません。

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しかし少なくとも、女性を優先的に登用することで、選挙に出たくて仕方がない男性候補者が、自民党の推薦を受けて立候補できなくなるという思いがあるのではないでしょうか。

小選挙では候補者擁立は1人だけですし、比例区になっても、名簿に載っている候補者全員が当選するとは限らないですからね。

ましてや自民党にはかなり逆風と思われる今回の総選挙では、ただでさえ議員の椅子が減りそうなところに女性優先の措置がとられると、男性候補者にとっては、嫌で嫌でたまらないのでしょうね。

閣僚ポストも同じです。大臣になりたくて仕方がないベテラン男性議員は山ほどいますからね。本当に情けない話です。

「女性候補擁立目標の義務付け」またも見送り

内閣府は、法施行後初めて、各党の目標設定を調査・公表しました。女性候補者の擁立については、以下の通りになっています。

<野党>

・(立憲民主党)当面は3割、最終的には男女半々
・(共産党)女性比率50%
・(国民民主党)女性比率35%

<与党>

・(自民党)設定せず
・(公明党)設定せず

野党でも与党でもない「ゆ党」と言われている日本維新の会も「設定せず」だそうです。
※参考:女性議員候補の擁立目標義務付け、自民反対で断念…超党派議連 – 東京新聞(2021年5月19日配信)

2019年の参院選では、全候補に占める女性比率が28%と過去最高でしたが、自民党は14.6%、公明党は8.3%と与党の低さが際立ちました。

女性候補者数の目標設定が努力義務のままでは、依然として女性議員の数が増えることはないでしょう。次回総選挙で、女性議員登用の姿勢をどう判断するかも、政党を選ぶ基準となるべきかと思いますね。

Next: なぜ日本の男女共同参画は進まないのか?



女性の割合を定める「クオータ制度」

前述した「クオータ制度」とは、その組織における女性の割合をあらかじめ一定数に定めて、積極的に起用する制度のこと。今回のテーマでもある政治の世界において、世界ではよく語られる制度です。会社役員の女性比率を高める議論においても用いられます。

クオータ制の発祥地で知られるノルウェーでは、法制化によって一般企業にもクオータ制を導入し、女性の社会進出が大きく進んだことで知られています。

内閣府男女共同参画推進局のホームページを見れば、法律により取締役会におけるクオータ制を導入した国として、イスラエル、ノルウェー、スペイン、オランダ、アイスランド、フランスがあるとされています。

ポジティブ・アクションとしてこのクオータ制度があるようで、各国の取り組みや現状が、内閣府男女共同参画推進局のホームページには載っています。
※参考:平成23年版男女共同参画白書 – 内閣府男女共同参画局

新しく発足した米国バイデン政権では、副大統領や財務長官が女性であり、閣僚級ポストに就く女性は史上最多になっています。

全閣僚25人のうち12人が女性が占めています。菅政権の女性閣僚は2人だけです。

安倍政権では、2020年までに国会議員や民間企業の管理職の女性の割合を、30%以上にする目標を掲げていました。2021年の現在、まったく実現できていません。

男女共同参画局 平成27年2月」の資料には、「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」ことを決定した…とあります。

この「30%」目標は、国連ナイロビ将来戦略勧告に基づいて策定されたものではないでしょうか。

女性の社会進出を促す「国連ナイロビ将来戦略勧告」

内閣府男女平等参画推進局ホームページに、その説明が載っています。

平成2年(1990年)5月、国連経済社会理事会において平成7年(1995年)に世界女性会議を開催することを国連総会に勧告する決議(国連総会により支持された)がなされるとともに、ナイロビ将来戦略の見直しと評価が行われ、「婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略に関する第1回見直しと評価に伴う勧告及び結論」 (ナイロビ将来戦略勧告)が採択され、1990年代においてナイロビ将来戦略の実施のペースを早めることが求められた。

出典:内閣府男女共同参画局

とあります。さらに、

なお、同勧告は、「政府、政党、労働組合、職業団体、その他の代表的団体は、それぞれ西暦2000年までに男女の平等参加を達成するため、指導的地位に就く婦人の割合を、1995年までに少なくとも30%にまで増やすという目標を目指し、それらの地位に婦人を就けるための募集および訓練プログラムを定めるべきである」との数値目標を設定している。

出典:内閣府男女共同参画局

とあります。

女性の社会進出促進に関しては、民間企業では積極的に取り組んでいるところもあるようですが、日本では、どうも「感情的」というか、客観的にこの問題を取り上げていないところがあるように思えます。

お隣中国では、一人っ子政策の弊害がこれから出てきます。日本以上の少子高齢化が進むわけで、今から積極的に女性の社会進出を後押ししているのが中国です。

日本との大きな違いは、中国は理系的というか、労働力、社会保障の担い手が足りないので女性に頑張ってもらおうということを、普通に、足し算引き算をするように考えているということです。

ごくごく普通に考えれば、当然の思考となるのでしょうが、日本ではそうはならないのですね。

女性に頑張ってもらって社会保障制度を支えてもらおうとは考えないようです。

考えたとしても、男性と同じ待遇を保証しない、女性の僅かな給料から社会保険料をむしり取ろうとしていて、それに女性は文句を言わないだろうという思いが、どこかにきっとあるのでしょうね。

中国は本気で女性活用に動いています。日本は、イデオロギーが邪魔をしています…。これからの経済発展に、大きな差が出るのは明らかでしょう。

世界的なナイロビ将来戦略勧告を持ってしても、日本社会はなにも変わらないでいる状況を、本当にどう思われますか。

この勧告から、もう何年立っていると思っているのでしょうね。

Next: マイノリティーが約3割を占めると、あらたな組織文化が生まれる



マイノリティーが新たな組織文化をもたらす「黄金の3割」理論

ハーバード大学の社会学者であるロザベス・モス・カンターは、「黄金の3割」理論を提唱しました。

これは、組織のなかでマイノリティの割合が3割となったときに、組織全体の文化が傾くというもので、マイノリティグループとマジョリティグループの割合が「35:65」となったときに、マイノリティグループが連帯を組み、組織文化に変化をもたらすのだそうです。

先程の、安倍政権下での、2020年までに国会議員や民間企業の管理職の女性の割合を「30%」以上にする目標を先送りし、2030年代に指導的地位にある男女の比率が同水準になることを目指すとする新たな目標を掲げる方針に切り替えました。昨年時点で目標の達成を断念していて、達成を目指す時期を「2020年代の可能なかぎり早期に」へと変更していました。

民間の女性活用も遅れていて、帝国データバンクによれば、2020年意識調査では、女性管理職割合は平均7.8%だそうです。前年から微増ながらも、政府目標の「30%」という数字をクリアしている企業は、7.5%にとどまっているそうです。

黄金比率30%に程遠いということは、日本社会は、まだまだなにも変わらないということになるのでしょうかね…。

マタニティハラスメントが政治家の世界では横行しているとして、初めて法律で「そんなことをしてはダメよ」と明文化された日本です。

女性候補者の数を定めるクオータ制度は「性差別」か?

クオータ制度導入反対の人の意見に「逆差別」という言葉があるようです。

「女性である」というだけで、能力が多少低くても昇進するなどのケースは企業で見られるとの主張です。数合わせでの女性登用を言いたいのでしょうが、お飾りで役員にする企業そのもの体質がおかしく、そんな企業は社会から評価されなくなるでしょう。

女性であっても実力でのし上がれという反対論者の意見も本末転倒で、そもそも女性というだけでチャンスも与えられない、機会平等ではないこと現状をなくそうという話でもあります。

あくまで「候補者の選定」の段階で、候補者数における女性の割合を一定にすることで、女性議員誕生のチャンスを多く持つことで、国会の女性議員を多く排出することで、女性の意見が国会に反映されることを期待したいのですがね。

でも、今の自民党女性議員を見ていると、権力のあるおじいちゃんの顔色ばかりを伺って、実力者に媚びるような態度や意見ばかりで、女性議員に対する、女性としてのの国民の期待を、大きく裏切っているように思えるのですがね。

日本社会は、本当に未来は良くなるのでしょうか。

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らぽーる・マガジン』(2021年6月14日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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