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今夜は米雇用統計、15か月ぶり高値圏のドル円はこう動く。高値を買うより押し目狙いで=ゆきママ

ドル円は昨年3月以来、15か月ぶりの水準まで上昇するなど、久々に大きな値動きが出ています。そんな中で今夜は雇用統計が発表されます。値動きの背景を踏まえながら、今日の展望やトレード戦略について考えていきたいと思います。(FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

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デルタ株の感染拡大でポンド売りが加速、米ドルが押し出される結果に

ドル高そのものの値動きもありますが、それ以上にポンドやユーロといった主要通貨が売られていることがドルを押し上げる値動きとなっています。

ポンドやユーロが売られている背景として、中央銀行の政策スタンスの差があります。FRB(米連邦準備制度理事会)は、徐々にテーパリング(緩和縮小)の開始を市場に織り込ませていますが、BOE(英国王立銀行)やECB(欧州中央銀行)は、金融引き締めは時期尚早とするなど、ここにきて明確な違いが見られるようになりました。

これには欧州におけるコロナのデルタ変異株が猛威を奮っていることがあり、特に英国は深刻で最新のデータで新規感染者数が2万7,000人を突破、欧州全体の新規感染者数を合計した値よりも多いということで、夏以降の景気回復の見通しに対する懸念が高まり、欧州通貨売りからのドル買い、円買いという値動きにつながっています。

図1:人口100万人当たりの新規感染者数(出典:Our World in Data)

上記は人口100万人当たりの新規感染者数の7日平均線ですが、1月から4月にかけてワクチン接種が奏功して欧米主要国では感染者数が急減していましたが、ここにきて英国が急増しています。

今週の講演において、ラガルドECB総裁はコロナ感染拡大でEU域内の景気回復が不透明になりつつあるとしていますし、ベイリーBOE総裁もインフレは一時的な可能性が高く緩和縮小は時期尚早、注目すべきは雇用の回復ペースであるとしていましたから、引き続き各国の感染状況、そして雇用の回復ペースというのが中央銀行のスタンスに影響しそうで、これらに注目しながら通貨強弱を考えていく必要がありそうです。

今週の値動きをまとめると、どちらかといえばポンド独歩安気味ですが、米国の経済指標が押し並べて強いことも米ドル買いにつながっていますし、また、ここにきてやや豪ドルが強めなのも一部都市でロックダウン状態にあるとはいえ労働力需要が高く雇用の改善が見られることが要因となっています。

Next: 事前予想値は?期待先行も、まだまだ手厚い給付金の上乗せは継続中



期待感は先行するも、まだまだ手厚い給付金の上乗せは継続中

それでは雇用関連指標と雇用統計の事前予想値を確認していきましょう。

図2:雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

民間企業であるADP社の雇用報告や、ISM(全米供給管理協会)の発表した製造業の雇用指数などは前回よりも弱い数字となっていますが、新規失業保険の申請件数などは順調に低下傾向にあるため、そこそこの数字が期待されています。比較的堅調な雇用統計の数字が示されていることで、期待感先行気味であることは否めないでしょう。

ただし、FRBがテーパリングを急ぐような結果というのは、非農業部門雇用者数が+100万人を超えるなど、回復ペースの加速が必須でしょうから、ドル高に結びつくようなハードルはそれなりに高そうです。

また、ノイズ要因として、英国を中心とした欧州などでデルタ株の感染拡大が続いていることから、観光地の完全復活にはなりにくい、海外の経済活動再開の遅れが足を引っ張る可能性が指摘されています。

もっとも、米国の求人件数は過去最高を更新し続けていますから、どちらかというと雇用のミスマッチが本質的な要因であり、企業は労働力の確保に苦心しているというのが現実です。

今回は6月12日を含む調査週の雇用統計が発表されるわけですが、まだこの時点でコロナによる失業保険の特別給付も打ち切られていないことを踏まえると、労働意欲が十分に高まらず、横ばい気味、予想並の数字になる可能性が一番高そうです。

Next: 米長期金利の上昇がない限り、高値を買うより押し目狙い!今夜の戦略は



米長期金利の上昇がない限り、高値を買うより押し目狙い!今夜のレンジ想定は1ドル=111.20〜112.00円

ドル円は111.00円の高値を明確に抜けたことで弾みがついて一段高となりましたが、ここからさらに上昇して112円台に乗せていくためには、米長期金利(10年債利回り)の上昇なども必要になってくるでしょう。待てど暮らせど上がらない金利、それだけ債券市場は将来的な景気回復について疑念を抱いているということでもあります。

したがって、ドル円の状況が大きく変わるためには、やはり非農業部門雇用者数が+100万人に近い数字が求められるでしょう。なおかつ、米長期金利が1.5%台に定着することができれば、ジワジワとしたドル買いが期待できそうです。

図3:ドル円チャート(日足)

111.00円前後の上値抵抗(レジスタンス)を抜けており、一段高となっています。さらに上昇していくためには、それなりの数字が求められるでしょう。+70〜80万人といった水準は、すでに織り込んでいるものと思われます。

雇用統計前に現在の111.50〜111.60円レベルの水準であれば、様子を見るしかないでしょう。逆に111.00円前後まで押し下げられる場面があれば、111.00〜111.20円では積極的に拾って雇用統計の結果を待ちたい。

+70〜80万人という数字を上回ればホールドで、111円台半ばぐらいを目処に利益確定。予想を下回った場合は一旦撤退して、来週以降、110円台での押し目を狙いたい。いずれにせよ、110.40円レベルまで競り上がっている21日移動平均線を割り込んだら損切りです。

今夜の雇用統計の考え方、トレードはこんな感じです。欧州でのコロナが終息に向かえば、いずれはユーロやポンドが買い戻され、ややドル高が緩和されるとは思いますが、今は消去法的なドル高の流れが明確になっていますので、この流れについていきましょうということで。

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image by:dodotone / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年7月2日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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