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「夏こそ日本株の買い場」と言える3つの理由。「半年後に売る」の繰り返しで資金倍増!?=榊原正幸

日本の株式市場は「夏が買い場」と言える3つの根拠をお伝えします。お盆に買って、半年後の2月に売るを繰り返すだけで、過去11年では年率換算で平均「約7%」の利回りになることがわかりました。夏のアノマリーと合わせて検証結果をご報告します。(『Prof.サカキの市況展望 プラス 教授に質問!』榊原正幸)

※本記事は有料メルマガ『Prof.サカキの市況展望 プラス 教授に質問!』2021年7月10日号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:榊原正幸(さかきばら まさゆき)
会計学博士、税理士、マネー評論家。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授、東北大学大学院経済学研究科教授を務めた経験から「MOTO教授(元・教授)」の肩書きで活動。資産形成のノウハウを発信し、60歳前後でリタイアする「21世紀の日本を生き抜く方法」を自らの経験と株式投資のプロの視点から提唱している。

夏のアノマリー、信頼度は?

実は株式市場には、夏に特有な現象があるのです。専門用語では「アノマリー」などともいわれる現象なのですが、これはわかりやすい日本語にすると、「季節的な特殊性」といった感じになります。

ですから、夏に限らず「アノマリー」にはいろいろなものがあるのですが、その中でも今回は「夏」に起こりがちなアノマリーについて、私なりにまとめてみようと思います。

<夏のアノマリーその1:「夏枯れ商状」>

夏に特有なアノマリーとして、よくあるのは「夏枯れ商状」といって、特に「お盆」の時期に取引高が少なくなる現象があります。

日本人は昔から「盆・暮れ・正月」といって、8月の中旬と年末年始には休暇を取ってきました。年末年始には株式市場も休場になりますが、お盆の時期は休場にはならないのですが、市場参加者が減る、というわけです。

そうすると、その「夏枯れ商状」が発生している時期に急な売り注文が出されると、一時的に株価が急落するので、そこを狙えば、思いのほか安く株が買えてしまうというようなことが起こり得ます。

株の売買においては、「どうしても必要な買い」(=「必要買い」)というのはあまりないのですが、「どうしても必要な売り」(=「必要売り」)というのは、ときどき発生するのです。(株式市場には、「必要売り」という言葉はありますが、「必要買い」という言葉は存在しないのです)。

誰かが、商売上の理由などで、急に現金が必要になって、急にまとまった株数の株式を売却する、というのが典型的な「必要売り」です。

ですから、お盆の時期には、個別の銘柄において、瞬間的に非常に安い株価が示現することがあるのです。

しかし、いつ、どの銘柄に、そういった瞬間的な安値が発生するかは誰にもわかりません。

そこで、そういった「瞬間的な安値」を拾うためにはどうすればいいかといいますと、「もしこのくらい安くなったら、買ってもいいな」という株価で、あらかじめ指値をしておくのです。

ただし、あらかじめ指値をしておくと、良くない事態に巻き込まれることも、稀にですがあり得ますので、注意が必要です。

といいますのも、不幸にも、たまたまその指値をしておいた銘柄に大きな悪材料が噴出して、株価が暴落した場合に、あらかじめ指値をしておくと、暴落株を買えてしまうというリスクがあるのです。

まぁ、現実的には、そんなことはごく稀なのですが、こういったオイシイ話には、リスクが全くないというわけではない、というわけです。

<夏のアノマリーその2: 外国人投資家の「売り仕掛け」>

(1)で述べた「夏枯れ商状」に関連して、「夏」の株式市場に特有な現象がもうひとつあります。それは「夏枯れ商状を狙った、外国人投資家の『売り仕掛け』」です。

日本人にとっては、お盆休みは大事な夏の休暇ですが、外国人投資家にとっては、お盆なんて知ったことではありませんよね。そんな外国人投資家が、日本人がお盆休みをしている間に「売り仕掛け」をしてくることがあります。

この「外国人投資家による売り仕掛け」は、個別銘柄に発生することもありますし、日経平均連動型のETFや日経平均先物に発生することもあります。 

また、「売り仕掛け」とは逆の「買い仕掛け」というのもあるようですが、私が比較的よく目にするのは「売り仕掛け」の方です。

要するに、お盆の時期に「不自然な株価下落」が起こったら、それは「外国人投資家による売り仕掛け」であることも考慮に入れた方がいいということです。そういった「売り仕掛け」は、短期的な下落に留まることがほとんどですから、お盆の時期に「不自然な株価下落」を発見したら、買ってみると、短期的に儲かってしまうことがある、というわけです。

もちろんこれも、(1)と同様に、大きな悪材料が噴出して、株価が暴落した場合には手出しをしてはいけません。ですから、大きな悪材料が出ていないかどうかを見極める力量が問われることになるわけです。

ただ、昨今はネット証券会社の「ニュース」欄の速報性の精度が上がっていますし、みなさん、ググることにも慣れていますので、大きな悪材料が出ていないかどうかを見極める力量は昔よりは格段に上がっているのではないかと思います。

<夏のアノマリーには「使えない」ものも

あと、一般にも知られている「夏」のアノマリーには、「夏が暑いと、ビール株が上がる」というのがありますが、これは「使えない」です。

なぜならば、その年の夏が「暑くなるかどうか」は、神様にしかわからないからです。天気予報の「長期予報」も、最近ではよく当たるようにはなりましたが、あまり当てにしない方がいいでしょう。

今年は特にです。コロナによる「酒類の提供禁止」の悪影響がまだ残っていますから、今年の夏が「暑くなるかどうか」にかかわらず、ビール株には逆境です。

Next: 日本の株式市場は「夏が買い場」と言える3つの根拠



日本の株式市場は「夏が買い場」と言える3つの根拠

<調査その1:過去の日経平均株価を調べてみると…>

さて、以下では個別銘柄ではなく、日経平均株価全体について、「夏」が「買い時」なのかどうかを調べてみました。リーマンショック後の2010年以降の10年間について、日経平均株価の月足チャートを基にして調べています。

2010年:8月が年内の安値
2011年:11月が年内の最安値だが、8月も比較的安値圏
2012年:6月が年内の最安値だが、8月も比較的安値圏
2013年:アベノミクスによる株価急騰後、6月が最安値だが、8月も比較的安値圏
2014年:4月が年内の最安値だが、8月と10月も比較的安値圏
2015年:1月と9月が年内の最安値だが、8月も比較的安値圏
2016年:2月と6月にかなりの安値が示現したので、8月はやや高くなり始めている
2017年:4月が年内の最安値だが、8月も比較的安値圏
2018年:3月と12月が安値
2019年:1月の次に安いのが8月
2020年:2月に発生したコロナショックから7月までに株価はV字回復となり、そこから株価が本格的に回復を開始したのが8月

以上の調査結果を、「8月が買い場だったかどうか(=比較的安値だったかどうか)」を軸にして、もっとシンプルにまとめ直してみます。

2010年:8月が年内の安値
2011年:8月も比較的安値圏
2012年:8月も比較的安値圏
2013年:8月も比較的安値圏
2014年:8月(と10月)も比較的安値圏
2015年:8月も比較的安値圏
2016年:(8月はやや高くなり始めている)
2017年:8月も比較的安値圏
2018年:(3月と12月が安値)
2019年:1月の次に安いのが8月
2020年:(2月にコロナショックが発生した)

このように、過去11年間(11回)のうち、8回は「8月が比較的安値」だったということがわかります。また、8月が比較的安値ではなかったのは、「2016年・2018年・2020年」の3回ですが、2016年と2020年は、8月に買っても、その後、年末まで充分に値上がりしています。中途半端な高値で、買うにはイマイチだったのは、過去11年間で「2018年」の1回だけだったことがわかります。

つまり、日本の株式市場というのは、実は「夏(8月)は買い場だ!」ということがわかったのです。

<調査その2:夏~年末の日経平均株価の推移を調べてみると…>

次に(1と同じような手法で日経平均株価の月足チャートを基にして)「8月~翌年2月の半年間の日経平均株価の推移」を調べてみました。

ここではまず、「8月の安値」と「翌年2月までに示現した高値」をまとめます。

2010年: 8,807円 → 2月:10,891円(23.7%上昇)
2011年: 8,619円 → 2月: 9,866円(14.5%上昇)
2012年: 8,513円 → 2月:11,662円(37.0%上昇)
2013年:13,188円 → 12月:16,320円(23.7%上昇)
2014年:14,753円 → 2月:18,865円(27.9%上昇)
2015年:17,714円 → 12月:20,012円(13.0%上昇)
2016年:15,921円 → 1月:19,615円(23.2%上昇)
2017年:19,280円 → 1月:24,129円(25.2%上昇)
2018年:21,851円 → 10月:24,448円(11.9%上昇)
2019年:20,110円 → 1月:24,115円(19.9%上昇)
2020年:21,919円 → 2月:30,714円(40.1%上昇)

このように、8月の安値で買ったとすると、その後、2ヵ月後~6ヵ月後には最低でも11.9%、最高では40.1%の上昇をしていることがわかりました。ここでもやはり、2018年だけが例外で、あとは「12月~2月」に高値になっています。

なお、「2月」が高値になっている年は、2月が直近の最高値である年もありますし、3月以降に引き続き、もっと高くなっている年もあります。

このようなわけで、8月に株を買っておいて「12月~2月」に売れば、「半年以内に約12%かそれ以上儲かる」というわけですが、「12月~2月」のどの月に、いくらで売ればいいのかは、事前にはわからないわけです。

そこで次に、1つの仮説を立てて検証してみました。それは、「毎年8月15日の終値で日経平均連動型のETFを買って、その翌年の2月15日の終値で売る。ただし、買い値から15%下がったらロスカット(売る)」という仮説を基にして、そのパフォーマンスを調べました(同日が営業日ではない年は翌営業日の終値を採用)。

これなら「8月の何日が最安値なの?」とか「いつ売ればいいの?」といったような、「神様にしか答えられない問題」を回避して、株式投資のズブの素人でも実践できますね。

そしてここでは、2010年8月15日の終値で100万円分を買ってスタートしたとします。資金は再投資することとし、複利で計算します。

なお、便宜上、手数料と税金は度外視します。(手数料と税金は、別会計で支払ったとします。また、以下の年末資金は、千円未満切り捨て)

     8/15終値   2/15終値  騰落率  年末資金(千円未満切捨)
2010年: 9,196円 → 10,746円 16.8%上昇 1,168千円
2011年: 9,086円 →  9,260円 1.9%上昇 1,190千円
2012年: 8,925円 → 11,173円 25.2%上昇 1,489千円
2013年:13,752円 → 14,393円 4.7%上昇 1,558千円
2014年:15,318円 → 18,004円 17.5%上昇 1,831千円
2015年:20,620円 → (17,527円)←ロスカット 1,556千円
2016年:16,869円 → 19,437円 15.2%上昇 1,792千円
2017年:19,280円 → 21,464円 11.3%上昇 1,994千円
2018年:22,204円 → 20,900円 5.9%下落 1,876千円
2019年:20,405円 → 23,523円 15.3%上昇 2,163千円
2020年:23,096円 → 30,084円 30.3%上昇 2,818千円

以上のように、この仮説に従って半年間の中期投資をすると、「11戦9勝2敗」で勝ち越し、11年間で資金が「約2.8倍」になっています。

複雑化を避けるためにここでは度外視した「手数料と税金」を考慮に入れると、概算ですが「約2倍」くらいのパフォーマンスになるでしょう。11年間で「約2倍」ですから、年率に換算すると「約7%」の利回りになります。上出来ですね。

このようなことから、「夏(8月15日)に買って、半年後に売る」というのは、かなり有効な投資成果を生み出すということがわかりました。

以上のようなことから、今年以降も「11分の9(82%)の確率で勝つことが見込めそうなので、向こう10年の長期的なプランで実践してみると、儲かるかもしれませんね。

Next: 過去50年間で同じ調査をすると結果は様変わり?



<調査その3:最後に「笑えるオチ」をひとつ

ちなみに、2010年の8月15日から2021年の2月15日までの日経平均株価の上昇率は、なんと「3.27倍」です。「約2.8倍」よりも少し大きいですね。

「な~んだ、『毎年8月15日に買って翌年の2月15日に売る』よりも、『ずっと持ちっぱなし』の方が、少し多めに儲かるんじゃん」という話ですから、これは、けっこうな「笑えるオチ」です(笑)。

(なお、もうひとつ「笑える話」を一席。ある時、税務署が「誰が株で一番儲かっているか」を調べたところ、「何年も前に死んだ人」の口座が一番儲かっていたとか。株は、長期保有が一番儲かるようです。「何年も前に死んだ人」は、株を「持ちっぱなし」ですからね。チャンチャン)

さらには、税金のことを加味すると、ここで「仮説」として検証した「中期投資」の「約2.8倍」は、税引き後で「約2倍」となりますが、「持ちっぱなし」の「3.27倍」は、税引き後で「2.82倍」になります。

「約2倍」と「2.82倍」では、だいぶ大きな差になりますね。長期投資は「1回しか売らない」ため、「課税が1回だけで済む」ので、その点でもとても有利なのです。

「株式投資の王道」は、「長期投資」なのです。それはウォーレン・バフェット氏が証明しています。でも、日経平均連動型のETFを「10年半」もずっと「持ちっぱなし」にする人は、現実的には、まずいないと思うのです。

普通の人には、ウォーレン・バフェット氏のような芸当はなかなかできないので、ここで検証したような「仮説」に基づいた「中期投資」の方が、より現実的だと思うのですが、皆様はいかがお考えでしょうか。

過去50年間で同じ調査をすると、結果は様変わり

先程は、2010年8月以降の11年間の期間で調査しました。この11年間のうちのほとんどの期間が、アベノミクスに端を発する株高の期間だったので、かなり良いパフォーマンスになったのだと思います。

しかし、超長期の期間、たとえば過去50年間で同じ調査をすると、結果は様変わりするのです。

ここからが大事なところなのですが、この続きは当メルマガで8月頭に配信予定の「通常号」にて展開します。それをしっかりとお読みいただいてから、今年の8月15日からの投資にお役立てください。

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2021年7月配信分
  • 号外 「夏に儲かる、オイシ~い株の話」(7/10)
  • 号外 東京五輪については「無観客」の切り札を切るでしょう(7/6)
  • 第002号 「右肩下がりのボックス相場が続行中」(7/1)

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2021年6月配信分
  • 号外 「スルガ銀行問題に端を発して、投資について考えたこと」(6/20)
  • 号外 「買い注文は手控えながら、安値を待つ」(6/19)
  • 第001号 PART2-2 書き下ろし原稿 「目指せ! 60歳でハッピーリタイア」(6/1)
  • 第001号 PART2 書き下ろし原稿 「目指せ! 60歳でハッピーリタイア」(6/1)
  • 第001号 PART1 「どうなる? 『東京五輪』」(6/1)

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Prof.サカキの市況展望 プラス 教授に質問!』(2021年7月10日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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