老後に生活費で困らないようにするには、現役時代にいくら貯金しておけばよいのでしょうか。一概に「○○円必要」とは言えませんが、あなたの現在の生活に合わせて、老後に必要となる金額の算出方法と貯め方をご紹介します。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。
老後に必要な生活資金の算出方法
老後に生活費で困らないようにするには、現役時代(給与所得や事業所得があるうち)にどのくらい貯めておけば良いのでしょうか?これについては、ファイナンシャル・プランナーの私もよく相談を受けるところです。
ただ、「○○万円です」と一概には言えないことは、読書の皆さんもよくご存知でしょう。しかし、気になるところでもあります。そもそも、老後の生活ではいくら使うのでしょうか?
そこで今回は、あなたの老後の生活資金はいくらくらい必要なのか、その算出方法をお話いたします。
算出した金額によって、その生活費が老後の年金収入よりも上回るのであれば、その分を現役の時代に貯めておき、その時が来たら貯蓄から支出する準備が必要になります。
言い換えれば、ここで算出する金額が、現役時代に貯めておくべき老後の生活資金の額とも言えるのです。
現在の毎月の家計収支を計算する
老後の収入は、主な収入源が公的年金だけになるので、現役時代よりも収入が減ってしまう人のほうが多いでしょう。
しかし、支出(特に食費など生活に関わる費用)は、現役の頃と大きくは変わらないか、むしろ増えていくかもしれません。
そこで、将来にわたる家計収支を把握するために、いま現在(現役時代)の家計収支でいいので、老後の生活に入る前の5年間くらいを想定して、毎年の家計収支を算出し、その平均値を計算してみましょう。さらにその数値を12か月で割り、毎月の家計収支の平均値を算出します。
その結果、出てきた数値が、あなたや夫婦の老後の生活費を計算する基準値になります。まだ老後の生活に入るまでに十分な時間がある方も、現在の家計収支の金額を把握してください。
Next: 「平均寿命年齢+5歳」時点の老後の収支を確認すること
老後の生活の「収入」を推測する
年金が収入が中心となる老後の生活では、老齢基礎年金と、受給資格のある方は老齢厚生年金の年金額を「ねんきん定期便」などで確認してください。
この2つの年金以外にも、勤務先からの年金や退職一時金、また個人的に積立をしている方はその金額も算出しておいてください。
そして、現在の平均寿命年齢よりも「+5歳」くらい長く生きると仮定して、少なくても5歳を加えた年齢までの収入額を計算する必要があります。
男性なら、82歳+5歳=87歳
女性なら、87歳+5歳=92歳
となります。そして、後述する「生涯の家計収支を一覧表にする」の方法で、一覧表に書き込んでいただきます。夫婦ともに存命の期間の計算は、夫・妻それぞれ上記の年齢までの収入額を足してください。
同級生のご夫婦であれば、87歳までは、夫婦の収入額を、88歳から92歳までは、妻だけの収入額になります。
老後の生活の「支出」を推測する
家計の支出の計算も、上記の収入で決めた年齢(平均寿命年齢+5歳以上)まで計算します。
老後の生活でかかる費用は、基本的には現役時代の基準値の支出額を引継ぎます。ただし、明らかに変わることがわかっていれば、後述するように、その分は事前に変更しておきます。
明らかに増える支出額
現役時代より明らかに増える支出の項目は、現役時代には必要としなかった項目です。生涯予算化しておきたい項目は、次のような支出になります。
・趣味娯楽の費用
・自宅の水道光熱費の現役時代よりの増加分
・食費
・交通費
・医療費
・介護の状態になったときの費用
・その他、個人的に必要な費用
このうち「交通費」は、現役中は勤務先から通勤手当が支給され、定期券を購入していた人は、その定期券をプライベートで出かけるときにも、使っていた場合、出かけるたびに自腹で交通費を支払うと、けっこう大きな金額になるかもしれません。
一方で、お住まいの自治体によっては、一定の年齢に達すると「敬老パス」などといった制度で、地域の交通機関の運賃を無料や補助をしてくれる制度がありますので、一度確認しておきましょう。
「医療費」は、現役の時代より健康保険制度で医療費の自己負担分が、現役時の3割より減るかもしれませんが、医療機関を受診する頻度が多くなれば、その分、医療費の負担が増えるでしょう。
Next: 老後に減る支出は?エクセルなどで生涯の家計収支を一覧化しよう
明らかに減る支出額
次に、老後になったら支出が減るものを見ていきます。通常、最初に考えていたほどは抑えられえないものです。
食費は減る支出としてよく取り上げられます。ただし、夫婦で生活して配偶者に先立たれても、その後の食費は半分になることはないです。水道光熱費はほとんど変わらなく、自宅で過ごす時間が増えれば、その分増加するとも言われています。
これらの項目は、独居で生活するようになったときは、ふたりで生活していた時の70%くらいの支出額になることが多いようです。
ただし、自家用車を持っていた人が、自家用車を手放せすと下記のように費用は大きく削減できます。
・自動車税
・車検、強制保険の保険料
・任意保険「自動車保険」保険料
・ガソリン代
・修理点検費用
・人によっては駐車場代
何歳で、車を手放すかによって、老後の家計支出が変わってきますので、自分達が何歳で自動車を手放すのかは決めておきましょう。
生涯の家計収支を一覧表にする
ここまでに出てきた生涯の家計収支の数値を「年」ごとに、
・収入
・支出
・年間収支
・貯蓄額
以上の4つの項目を、上記で設定した生涯の年齢まで、年ごとにエクセルなどの表計算ソフトに入力します。方眼紙に手書きの表を作成して、手計算で書き加えていってもいいです。
そして、何歳のとき保険の満期解約金が入金されると決まっている金額は、該当の年に記入していきます。
「貯蓄額」の項目をどう埋めるか
「貯蓄額」の欄は、老後の生活のために、老後の生活が始まるまでに手元に準備しておく資金の金額を示す欄です。
つまり、年間収支が赤字になったときに、取り崩して使う資金の項目です。
・老後の生活のために現役中に貯蓄する金額
・退職一時金
など、個人によって変わる金額になります。
この「貯蓄額」が0円で老後の生活を、始める方もいます。
また、老後生活で年間の家計収支が黒字になった場合は、その年に余った金額をこの「貯蓄額」に貯めておき、その後、年間収支が赤字の年に、取り崩す資金にもなります。
なお、老後の生活中でも余裕資金として、生活費以外に使う目的の資金額は、別途管理して、この「貯蓄額」の欄には記入しません。
Next: 生涯の貯蓄額の推移を見て、家計が破綻しないことを確認する
現役中に貯めておくべき老後の生活資金
ここまでに算出できた数値を表に記入していき、生涯の「貯蓄額」の推移に注目します。
「年間収支」の欄が単年で赤字の年があり「貯蓄額」から取り崩して補充してプラスになればよいのですが、「年間収支」が単年でも「0」やマイナスになれば、家計が破綻する可能性があるということです。
この表の家計支出を維持していくためには、現役中、常に生涯「貯蓄額」の欄が、プラスの数値を維持できるように、現役中にその資金を蓄えておくことが必要です。
または、生涯「「貯蓄額」の欄がプラスに維持できるように、今から、老後の家計支出を減額する生活を送ることを予定しておくことです。
作成する表は、自分たち夫婦の大切な老後の計算になります。
甘い数字ではなく、シビアな数字で計算することが、もっとも大切です。
『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2021年8月18日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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