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災害だらけの日本で「安全な土地」に家を建てる5つの方法。不動産プロが徹底解説=姫野秀喜

地震・豪雨・台風……年々、日本を襲う災害は激しさを増しています。生涯に渡って住む家を探すときには、自然災害に強い場所を選びたいもの。そこで今回は、安全性の高い土地のチェックポイントを5つを解説します。(『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』姫野秀喜)

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プロフィール:姫野秀喜(ひめの ひでき)
姫屋不動産コンサルティング(株)代表。1978年生まれ、福岡市出身。九州大学経済学部卒。アクセンチュア(株)で売上3,000億円超え企業の会計・経営計画策定などコンサルティングに従事。合間の不動産投資で資産1億円を達成し独立。年間100件以上行う現地調査の情報と高い問題解決力で、顧客ごとに戦略策定から実行までを一貫してサポートしている。

災害から逃れる方法は、少しでも「安全な場所」で暮らすこと

このお盆では、日本列島は激しい豪雨に見舞われ、各地で土石流などの災害が起きました。

今回の災害は、子どもの頃からよく訪れていた温泉のある武雄や嬉野など、私にもゆかりがある場所で、知人も親戚が浸水したなど、他人事とは思えません。災害に罹災された方々が1日でも早く日常を取り戻すことを何より願っています。

先日、大規模な洪水の被害を受けた欧州ドイツでは、この洪水の原因を、地球規模での気候変動の影響と考える世論が高まっており、これからますます環境保護などSDGsの取り組みが強化されていくと思われます。

環境活動などで気候変動を抑制する取り組みは、まだ端を発したばかりであり、その効果が出るのは半世紀以上先になることでしょう。

短期間に環境そのものを変えていくことができない以上、私たちにできることは、少しでも安全な場所に居を構えるという自衛しかありません。

これから家を買う・選ぶ時には、単に通勤・通学の利便性や家の間取り・設備に加えて、自然災害からの安全性という点も大切になってきます。

自然災害からの安全性を調べるためには、地理的な側面では、マクロ視点での気候及びミクロ視点でのハザードマップ、高低差や崖などの地形、そして歴史的経緯を見ていく必要があります。

とはいえ1つ1つは、それほど難しいことではありませんので、災害などを鑑みて立地を決める時に簡単にチェックできるものをご紹介します。

チェックポイントその1:災害の少ない都市を選ぶ

以前、日本全国のなかで台風・水害が多い地域と少ない地域を解説しました。

【関連】意外な安全地帯!? 台風・風水害に強い「○○エリア」で家を買おう=姫野秀喜

上記の記事でも述べましたが、狭い日本といえども、その気候は様々です。

仕事の都合などで移住は難しいかもしれませんが、もし日本全国の中から好きなエリアに住めるような場合は、できるだけ安全なエリアを選択するのが良いでしょう。

この記事内では、東京・名古屋・大阪・広島・福岡・松江などが、統計上は災害履歴の少ない都市ということを述べております。

とりもなおさず、気候的に安定しているからこそ、時の権力者がそのエリアを中心とした都市を築くことができ、発展してきたことがわかる結果となっています。

なお、この記事には記載しておりませんが、実は仙台もかなり気候的に安定しています。仙台は日本全国の大都市の中で最も晴れの日が多い都市です。冬場の雪さえ気にならないのであれば、晴れた青空好きの方は仙台が最もよいでしょう。

Next: ハザードマップをフル活用。実際に歩いてみないとわからないことも?



チェックポイントその2:ハザードマップを活用する

人間、誰しもが好きなように日本全国を引越しできるわけではありません。みんな、今、住んでいる地域で仕事をしているわけで、そこから大きく移動することはできないからです。
 
そこで活用してほしいのが、各自治体が発行しているハザードマップです。

このハザードマップは、近くの河川が氾濫した時や、台風・大雨の時などシチュエーションごとに浸水状況をわかりやすく表示してくれる便利な地図です。

各自治体によって異なるのですが、水害発生時には広範囲に浸水することが判明している、東京の江戸川区や足立区などでは、かなり詳細な冊子を配布しています。また、ハザードマップはインターネットからも参照することができますので、自分が住みたい家とその周辺がどれくらい浸水するのかを事前に把握することができます。

このハザードマップですが、実際に浸水したエリアとマップで予想したエリアはかなりの確率で一致しており、信頼性は相当高いです。

チェックポイントその3:現地を歩き、微妙な高低差・傾斜を調べる

ハザードマップで浸水について確認した後は、実際に現地を歩いて調査しましょう。私は2019年、武蔵小杉のタワーマンションが浸水被害を受けたときに現地を歩いて調査してきました。

武蔵小杉にはいくつものタワーマンションがありましたが、なぜ1棟のみが浸水の被害を受けたのか、実際に現地を歩くことで気づきがあったからです。

ほぼ同じ立地の武蔵小杉のタワーマンションにも関わらず、浸水した棟とそうでない棟、その明暗を分けたのは、微妙な傾斜・高低差でした。

浸水したタワーマンションの前面道路は周囲よりもほんの少しだけ低かったのです。たった50センチくらいの高さの差。普通に街を歩くだけでは気づかない、微妙な傾斜・微妙な高低差です。

台風の豪雨により排水量が下水の能力を上回った結果、周辺の道路に水があふれ出し、この微妙な傾斜により一番低い道路に面したタワーマンションが被害を受けたのです。

※参考:武蔵小杉のタワーマンションはなぜ浸水したのか – 姫屋不動産コンサルティング(2019年10月16日配信)

この微妙な傾斜や高低差は、実際に被害を受けた後の街を歩けば誰でもわかることですが、天気の良い日に見学しただけでは、たぶん気づくことができないと思います。

見学自体は天気の良い日でも構いませんが、災害で大雨が降った時を想定し、実際に周囲を歩いて前面道路がほんの少しでも低くなっていないかという点を注意して立地を見ることが大切です。

Next: 崖の近くはやっぱり危険。その土地の「地名」にも大きなヒント?



チェックポイントその4:崖に面している物件を避ける

これも難しい話ですが、一般的にはガケ(擁壁)などに面している物件は避けたほうがよいです。物件そのものが擁壁の上に建っているものもそうですが、家の裏手が擁壁になっているというものについても注意が必要です。

特に新興住宅地などは山や丘を切り出した土地なども多いので、もともと平たんではなかったところを人工的に平坦にした土地は可能なら避けましょう。

とはいえ擁壁を否定してしまうと横浜などでは住む場所がなくなってしまうので、実際は擁壁の状態をチェックして、安全確保を行うしかないのかもしれません。擁壁の状態はクラックや、コンクリの内容物が流出していないか等をチェックするとともに、その擁壁の所有者を確認します。

所有者が国や地方自治体であれば、万一の際の補修工事なども公費で賄ってもらえますが、個人所有の場合は自分で工事費用を負担しなくてはなりません。擁壁の補修工事には結構な金額がかかりますので、できれば個人負担は避けたいものです。

チェックポイントその5:歴史を重視する

最後に住みたい場所の歴史を調べます。具体的にはそのエリアの歴史をインターネットで検索し、いつ頃から人が住み始めたエリアなのかを確認します。

もし、そのエリアで過去に河川の氾濫などが起きている場合は、その災害についても詳しく調べます。

インターネットで検索して、古地図など昔の地名がわかる資料が出てくれば、自分が住みたいエリアの地名を確認します。

地名を見る時には、水を表す字や低地を表す字などが地名に使われていないかを調べます。具体的には「河(川)、沼、湖、池、滝」など、“サンズイ”が付いて水が関係しそうな漢字や、「谷、窪」など低地を表す漢字などです。

その他にも「亀、龍、蛇」など水神様などに関係しそうな漢字や「割、抜、袋」など地形に関係しそうな漢字も要注意です。私も大好きなエリアですが、池袋とか荻窪とかはダブルで使われていますね。気を付けよう。

また、住みたい場所の周辺に寺社仏閣がある場合は、その歴史を調べてみるのも良いでしょう。

古くからの寺社仏閣は災害の少ない丘や山などに建設されていることが多いです。そのため、その周辺の地盤は比較的安定しており、水害からも逃れやすい立地の可能性が高まります。

ただし、水神様を祭っている場合は、なんども洪水などで流されて、再建されている歴史があることもありますので、一概に神様がいるから大丈夫との判断は行わないでください。

古い寺社仏閣は、あくまでその地域の歴史を調べる手がかりの1つにするということです。単なる神頼みではなく、地理的なマクロ・ミクロの視点、歴史的な経緯を把握し、科学的な根拠をもって、災害の被害を受けにくい立地を選んでいきましょう。

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image by:Kathy Matsunami / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年8月24日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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