タリバンのアフガン制圧は相場にどんな影響を与えるのか?市場参加者なら誰もが気になるこの疑問、答えは「あるけど、ない」です。その理由を解説します。(『徒然なる古今東西』高梨彰)
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
カブール空港で自爆テロ
アフガニスタン(アフガン)の首都・カブールにて、自爆テロと思しき爆発が複数回起きたとのことです。
米兵も犠牲となり、バイデン大統領は「激おこ」の表情。報復を示唆しています(同時に8月末までの軍撤退の意向も継続としていますが)。
タリバンがアフガン全土に勢力を拡げて、「相場には影響ないの?」との疑問が必ず浮上します。
そして、こうした有事による影響の有無への答えは、「あるけど、ない」です。
相場への影響は「あるけど、ない」、その意味は?
<影響が「ある」場合>
影響が「有る」理由、これは「何が起こるか分からない」という不透明感が高まるためです。
昨日の自爆テロにしても「またかよ」「テロが増えたら『在留邦人』はどうなるのか」など、不安な言葉はいくらでも挙がります。
日々の値動きの中で、不測の時代が発生すれば、瞬間的な反応を示します。昨日は条件反射的な株安・円高を引き起こしました。
加えて、売り買いの方向性も失います。結果として市場参加者は手を引き、「突発的な値動き、のち様子見」へと至ります。
荒れた値動きは短時間に留まり、意外とレンジ取引へと転化し易くなるのも「有事」相場の特徴です。
<影響が「ない」場合>
また影響が「ない」理由、こちらは世界経済の動向に根本的な変化が起きるかどうかが論点となります。
有事の発生は今回のアフガンを含めて、政情不安が予め伝えられる地域で起きがちです。そのため、世界の流れとしては、同じ動きが継続との結論に至ります。今回の一件にしても、例えばバイデン大統領に非が集中し、辞職でもしない限り、主な流れは有事前と一緒です。
2001年9月11日に起きた、全米同時多発テロでさえも、テロの動きが単発で終わったことで、比較的早期の収束を市場は見せました。
金融市場にしてみれば、本日27日のジェローム・パウエルFRB議長講演を前にして、余計なポジション整理の場を提供した形です。値動きが大きくなるかもと、仕込んだポジションも、一部は強制的に整理させられたはず。
不謹慎ながら、レンジ取引派には好都合な事件となりました。現地では緊張が高まっていて、無駄に命を失うことが無いように願うばかりです。
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「危ないから、取引は止めておこう」では相場に置いて行かれる
一方、相場に身を置く者としては、影響が「有るけど、無い」ことを常に意識することが不可欠です。どうしても感情に行動がシンクロしがちですから。「危ないから、取引は止めておこう」ばかりだと、程なく相場に置いて行かれます。
最後に蛇足的な週末のボヤキを1つ。有事が起きると、必ず在留「邦人」という言葉が出て来ます。私、この「邦人」が苦手です。
「邦人」は自分の国の人という意味、日本語なので、使うのはほぼ日本人。だから「邦人」は日本人を指す、これは当然知っています。
しかし、「邦人」が出て来る度に、元の意味は「自国の人」だから「日本人」を指すと、アタマの中で0.01秒単位の変換作業が発生します。これが面倒なのです。一応、アメリカ人にとっての「邦人」はアメリカ人、という理屈も成り立つ訳でして。
だったら初めから日本人と言ってくれと。相場関連の記事等で「本邦投資家」なんて言われた日にゃあ「あ?」となります。
ただでさえ、「債券買いは価格上昇、かつ金利低下」とか「ドル円上昇って、ドルが上がって円が下がる」とか、細かい話、かつ間違えると真逆の損益が発生する世界に生きる身です。
だからこそ、相場の説明をちゃんとしようとするほど、文章が長くなりがちでもあります。
AIなどコンピュータに取ってみれば、この変換作業は何てことないのでしょうけど、生身の人間にとっては、イチイチ0.01秒の変換作業を強いられるって、大変なストレスなのです。
このストレスを他の人は感じないで済むため、ダラダラ文章を書き続けている部分もあります。役所の統計に頻出する「持ち直し」などの変換も、今後、改めてお話しできればと思います。
今回のまとめ
・カブールにて複数回の自爆テロ、地政学リスクが意識されます
・市場への影響の有無は瞬間的な不透明感と、趨勢的な世界経済への影響に分けられます
・有事に必ず登場する「邦人」の変換作業が面倒です
『徒然なる古今東西』(2021年8月27日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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