fbpx

五輪後に来る感染ピークと経済失速に備えよ。ワクチン接種率から見る日本の景気シナリオ=斎藤満

反対派が多数だった東京五輪は、金メダル・ラッシュに盛り上がっています。その裏でワクチン接種は遅れ、コロナ感染者数は激増、景気回復の足かせとなっています。五輪後には経済が上向くのか?ワクチン接種率から見る日本の景気シナリオについて解説します。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2021年7月28日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

日本の景気は「金メダル・ラッシュ」と「感染第5波」との綱引き状態

政府の狙い通り、ということでしょうか。事前にはコロナ感染拡大下での無理な五輪開催には否定的な声が多かったのですが、いざ始まってみると、日本選手の活躍で金メダル・ラッシュとなり、「号外」も配られ、国民のムードも大いに改善したようです。

菅総理はさっそく金メダル第1号となった柔道男子の高藤選手に電話で祝意を伝え、その模様をテレビが放映、政府もアピールしました。

その一方で、東京では27日、1日の感染者数が3,000人に迫り、今年1月のピークを超えてきました。入院患者数は、このひと月で2倍になり、自宅療養者は5,000人を超えました。デルタ株の拡大で、30代までの若い人が感染者の3分の2を占めるようになり、若い人の間でも重症化するケースが増えています。

人流を抑えることの重要性を訴えていた政府や東京都の意向に反し、やはり五輪を観戦したい人が路上観戦に出たり、また選手、関係者の感染者もすでに140人を超えました。

警備に携わった人や、選手の世話をする人の間でも感染者が増え、五輪がやはり感染拡大の契機となりつつあります。

日本の景気は、この五輪の金メダル・ラッシュと、感染拡大の第5波との綱引き状態となっています。auじぶん銀行とIHSマークイットの調査によると、7月の製造業PMIは52.2と、前月の52.4からやや低下しましたが「拡大」を示す50超となっているのに対し、サービスPMIは46.4と、前月の48.0からまた低下しました。雇用指数も50を下回っています。
※参考:auじぶん銀行日本PMI – auじぶん銀行

やはりコロナ感染による不自由さが足かせになっています。

ワクチン接種率が重要になってくる

そこで、今後の景気を見るうえでカギを握っているのが、五輪後の感染者数の動きと、これを左右するワクチン接種率です。

ワクチン接種が進む英国や米国では、接種率が50%を超えてから感染者数、入院患者数が減り、感染防止のための諸規制が緩和に向かいました。これに大規模な財政支援を加えた米国の景気は、今年になって年率6%から8%の高成長が続いています。

デルタ株の拡大で、ワクチン接種の進むイスラエル、英国でもまた感染が増えていますが、重症者数、死者数は確実に減り、経済の正常化は進行しています。

ワクチン接種が遅れていた日本でも、6月から接種のペースが上がり、官邸のホームページによると、1回以上の接種率は35%、2回の接種完了率は23%となっています。重症化懸念の高い高齢者の接種率はそれぞれ83%、62%となっています。

このため、高齢者の新規感染者数は増加に歯止めがかかり、感染者全体に占める65歳以上の割合は数パーセントにまで低下しています。その一方でワクチン接種の遅れている若年層の感染が主流となり、重症者ではまだワクチン接種がすまない50代が増え、その対応が急がれています。

そのワクチン接種も、ワクチン不足と五輪開催が重なって急ブレーキがかかっています。

Next: 各国がワクチン接種率の向上に四苦八苦。日本の第6波は避けられない?

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー