11月1日から新500円貨幣の発行が開始されます。高度な技術を導入した新デザインとのことなので早く実物を見てみたいですが、この500円玉がデフレ脱却を阻む「影の犯人」となっている懸念があります。(『徒然なる古今東西』高梨彰)
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
「新500円玉」11月1日にデビュー
10月27日・28日の日程で、日銀金融政策決定会合が開催されます。
といっても、金融政策は据え置き、成長率見通しを少し下げたうえで、黒田東彦日銀総裁が「景気は基調としては持ち直している」と、結局よく分からないことを言っておしまいでしょう。
一方、今月の日銀ツイートは元気です。来月11月1日から発行が始まる新500円貨(500円玉)を連日紹介しています。
新500円貨「お目見えまで、1週間。」https://t.co/a7emAPkOOt pic.twitter.com/h1yLu1KPA8
— 日本銀行 (@Bank_of_Japan_j) October 25, 2021
「ハイカラー・クラッド」「異型斜めギザ」など新技術を導入
パッと見、「新500円」の写真を見ても、どこが変わったのか気付きません。
しかし、財務省のサイトには、新硬貨は素材に新規技術「バイカラー・クラッド(二色三層構造)」を導入したと書かれています。
これまでニッケル黄銅だけだったものが、ニッケル黄銅に白銅と銅が加わったのだと。三層の金属を作り、その周りにドーナツ型の金属をもうひとつ加える、そんな構造の図もサイトに掲載されています。
ついでに硬貨の周囲には「異形斜めギザ」を導入すると、鼻高々に記されています。「斜めギザの一部を他のギザとは異なる形状にしたもので、通常硬貨(大量生産型貨幣)への採用は世界初」と。
普段の金融政策や経済見通しとは異なり、書き手(作り手)も読者もワクワクするような内容です。
最近はめっきり現金を使う機会が減りましたが、年末は意識して「新500円玉」獲得作戦をスーパー・コンビニなどで実行したいと思います。
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500円玉が日本のサービス料金を抑えている
500円玉といえば、前々から日本のサービス料金上昇を抑える「影の犯人」じゃないかと疑いたくなるところがありまして。理由は「チップ」です。
アメリカなんかに行くと、ホテルのベッドメイキングに1ドル「札」を1枚から数枚、荷物を運んでくれる人にも1ドル「札」と、チップには常に紙幣「札」が登場します。
これが硬貨(コイン)だと、どこか蔑んでいる感覚がして。「札」は手渡しじゃないとダメですが、コインは投げても大丈夫。トレビの泉にしても、日本の賽銭にしても、基本はコインです。サッカーなどスポーツの陣地とボール保有を決めるのも「コイントス」。
やっぱり硬貨をチップ(サービスへの対価・お礼)として渡すのは、軽い感じがします。かと言って、日本で1,000円札を渡すわけにも行かず。高過ぎます。
結局、チップに相当する文化・習慣は醸成されず……ではないかと。
転じて、CPI(消費者物価指数:Consumer Price Index)での、サービス価格(運賃や授業料など人が関係する価格)は、いつまで経っても上昇しないまま。
てことで、500円貨幣に高度な技術を採り入れるほど、日本の給料は上がらないって結論に至ります。強引ですけど。
今回のまとめ
・11月1日、新しい500円玉が登場します
・「バイカラー・クラッド」、世界初の「異形斜めギザ」など日銀・財務省は鼻高々
・高額硬貨が流通すると、チップは渡し難いんですけど
『徒然なる古今東西』(2021年10月27日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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