ガソリン価格が高騰しており、庶民にとっては死活問題となっています。いつになったら価格は下がるのでしょうか?原油高騰の6つの要因について解説します。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2021年11月1日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ガソリン高騰。「満タン」か「少しずつ入れる」か悩む庶民
それにしても、ガソリン価格が高くなりましたよね。7年ぶりの高値だそうです。
過去5年でほぼ最高値圏、2020年4月頃の直近最安値から4.5倍になっている。
近所のガソリンスタンドを見れば「レギュラーガソリン165円」「ハイオク176円」となっていて、会員割引でも160円を割らないのですね。
自動車が日常生活に欠かせない人たちにとっては死活問題です。
ガソリンは満タンにするか、それとも少しずつ入れたほうが良いか。
まあ庶民的な悩みですが、それはこれからガソリン価格は上がり続けるのか、どこかで下がるのかという見通しによります。
日常生活のあちらこちらに投資行動
この感覚は、まさに投資の世界と精通しているものです。
実は、私たちは生活の中で「株式投資」の感覚を持っているのです。普段から私たちは投資感覚を持って行動しているのです。「滑り止め」受験もヘッジですし、「念の為」行動も、立派なリスクヘッジです。
だから、「投資」は、実は必要不可欠なものであり、生活の一部と言ってもおかしくはないものなのです。立派な収入確保手段の1つなのです。
ただ目先の価格変動を取りに行く「トレード」手法は別です。みんな「投資」と「トレード」の区別がついていないだけのことです。
話が脱線しましたが、なぜこんなに原油価格が高騰しているのでしょう。
目先の要因としては、次のことが考えられます。
原因その1:コロナ・ペントアップデマンド
コロナ感染拡大が収束したことでの景気急加速により、需要が一気に伸びたことで供給が追いついていない、鉱工業生産だけなく輸送のニーズも高まったことが大きいです。
国境をまたぐ出張解禁により、飛行機利用も増え、車移動も増えました。もちろん、製品材料輸送もあります。ばら積み船価格は上昇していますね。
さらにこれからは、観光客を受け入れる国も増えてくることでしょう。
Next: 供給不足の主要因は6つ。どうすればガソリン価格は下がるのか?
原因その2:北京冬季オリンピック・パラリンピック
世界的イベントなだけに、中国としても大気汚染を考えると、石炭火力に7割も依存している現状から世界へのアピールも含め、「脱石炭」にシフトするという行動はうなずけます。
そのために炭鉱稼働を止めていました。
しかし、いったん止めた炭鉱の再稼働は難しく、電力不足状態解消のための供給が迅速に行われないことが、今目の前に現れている「電力不足」につながっているという指摘もあります。
このリカバリーを石油や天然ガスに求めるという思惑も、原油需要が膨らむ要因として、強く懸念されています。
原因その3:大型ハリケーンの問題
8月に米国を襲った大型ハリケーンが、産油地帯であるメキシコ湾岸に大きな被害をもたらしました。
石油の生産量が2005年以降で最大の落ち込みとなり、米国のガソリン在庫が最低水準に近いところまで減少していることも、需給を乱す要因になると懸念されています。
原因その4:米シェールオイルの問題
いままでは、需給逼迫の際には、米シェールオイルの蛇口を開放、つまり生産を増やすことで需給調整を行ってきました。
バイデン政権誕生により、地球温暖化対策として採掘の環境規制が厳しくなったことに加え、コロナによる人手不足や物流の混乱もあり、シェールオイル供給そのものが安定しなくなりました。
原因その5:英国のパニック
ブレグジットにより、移民が来なくなったことで、今まで移民が担っていた仕事に大きな支障をきたすようになりました。
身近なものとしてスーパーで物を陳列する人がいなくなったということがありますが、トラック運転手が欧州大陸から来なくなったことで、不安になった消費者がパニック的にガソリンスタンドに殺到したというのです。
9月終わりから10月にかけてガソリンスタンドの多くでガソリンが売り切れ、社会問題化し、軍がガソリン輸送で動員されたほどだったとのことです。
原因その6:天候不順による再生可能エネルギー供給不安定化
再生可能エネルギーにシフトしているところに天候不順が、電力供給に不安が出て、スペインでは電気料金が3倍になったとのことです。
すべては供給不足、問題はどこにある?
これらの事情は、どう考えても需要サイドが拡大するとしか思えません。
「じゃあ供給サイドの蛇口を広げればいいじゃない」ということになるのですが、これがそうもいかないようなのです。
じゃあ供給サイドの問題とはなんなのでしょう。
需要の規模が掴めない、一気に原油の蛇口を緩めたら、今度は供給過剰になってしまわないかという恐れを供給側は感じているのでは?との指摘があります。
供給側とは、言わずもがな「OPECプラス(中東諸国とロシアなど)」のことです。
需要が増える見込みがありながら、供給側が動かないという構図は、どう考えても原油価格高騰を招くとしか思えないですよね。
Next: 脱炭素運動も原油高騰の要因に。ガソリン価格はいつ下がる?
脱炭素運動も原油高騰の要因に
さらに原油価格を取り巻く問題として「SDGs」があります。
脱炭素運動により、生命保険、年金ファンドなどの機関投資家や銀行は、油田、ガス田・炭鉱などの化石燃料資源関連の会社に投資したり融資したりすることが、運用者責任、貸し手責任の観点から非常に難しくなっている風潮にあるということです。
原油関係事業が新たな資金調達が難しいとなると、資源開発が厳しくなり、製油設備のメンテナンスにも大きな影響をもたらします。
脱炭素は、資金を化石燃料から再生可能エネルギーに振り向けることをも意味しますからね。
不測の事態に対応する体力がなく、設備メンテナンスができないことで、機動力が奪われることになります。
そして、原油価格高騰は、直接「物価高」に繋がります。
生産コストの高騰による価格上昇だけでなく、輸送コストも上がることによる価格上昇、また、輸送コストが価格に転嫁できない場合は、収益圧迫に繋がります。
賃金が上がらない中での物価高は、人々の生活をさらに疲弊させていきます。
「石油」の価値に変化の兆し
これから世界各国は「脱ガソリン車」の動きを加速していきます。ガソリンというものが、生活の中で存在感が薄れてくる世界が待っています。
ただ、過渡期が一番混乱を招くことになるので、エネルギーとしての石油が今後どうなるのか、また金融市場における「オイル」の存在も変化してくるのでしょうね。
・シェールオイルの開発
・未開発の地下資源の開発(アマゾンや北極、深海など)
今まで私たちが意識していた「石油」というものの存在が、すごく近い将来に大きく変わっていくような気がしますが、まだ「現在」は石油依存度が高く、原油価格高騰で資源国通貨は買われる動きは続きます。
このままいけば、かつてのように、1バレル100ドルもあるかもしれないと指摘する専門家も出てきました。とにかく原油価格が大きく上昇しているのは事実です。
自公政権絶対安定多数となった結果を受けて、日経平均株価は大きく上がりました。それはマーケットが自公政権を歓迎しているのではなく、マーケットは「安定」を好むからです。マーケットは「変わること」を極端に嫌うのです。
世界は日本の選挙をどう見ているのでしょう。それはこれから各市場が、意思表明をしてくるでしょう。
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