今日は月に1度のイベントデー、今年最後の米雇用統計です。しかし、相場はコロナの新型変異株「オミクロン株」で一喜一憂する相場。さらに、その影に隠れてパウエルFRB議長も豹変しています。果たして今日の雇用統計、今後の為替相場は?ということで、解説していきたいと思います。(ゆきママ)
オミクロン株の影響懸念で株式市場は大荒れ、為替も円高に
デルタ株以降、新たな変異株が発生しても入り込む余地すらなく消えてきましたが、今回発生したオミクロン株は初めてデルタ株を追いやる形で感染が拡大したことで、WHO(世界保健機構)がすぐさまVOC(懸念すべき変異株)として指定、各国が渡航制限を行うなど、警戒感をにじませました。
これを受け、株式市場もリスクオフ(回避)の動きとなり、WHOはもちろん、各国の対応、製薬会社の見解などが出るたびに一喜一憂、乱高下する相場となっています。
当然、為替も荒れた値動きとなり、ドル円は115円台から急落して、一時112円半ばまで叩き落とされています。
ドル円も含めてクロス円は、オミクロン株関連のニュースのヘッドラインで1つで急落する(円高になる)相場になっているので、目先の上値は重いです。
オミクロン株の影響度合いがある程度確定するまでは、この状況が続く可能性があります。
パウエル議長が豹変?少なくともテーパリング終了は前倒しへ
また、オミクロン株に対する懸念の影響もあり、ドル高の動きは限定的ですが、今週の議会証言でパウエル議長がタカ派的な発言を連発していたことは見逃せません。
パウエル議長は自身の見解として、インフレを一時的としてきた表現を終わらせる時が来たとし、さらに、テーパリング(量的緩和の縮小)の終了を数ヶ月前倒しするのが適切とし、再来週15日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で議論するとしています。
インフレについては、ここしばらく強めで一時的という見解は合わなくなったとのことで、来年以降は徐々に落ち着くという従来の見解は変わりませんでしたが、テーパリングの終了を前倒しするというのは明らかにドル高材料です。
テーパリングを終了させなければ利上げ開始はできませんが、数ヶ月前倒しで終了ということは、状況によっては利上げ開始も早まる可能性は十分ですからね。
したがって、オミクロン株への懸念が一服すると、早期利上げを意識したドル高再始動という値動きが想定されますので、米国の金利水準などに注目しておきましょう。
Next: 強い数字でもドル円の上値は重い?先行指標から見えること
今回の雇用統計はあくまで過去の数字、良くてもドル円の上値は重い
目先はオミクロン株の報道、コロナの感染動向次第なので、予想を上回るような好結果が出たとしても、ドル円の上値は限定的でしょう。もちろん、好結果ならテーパリング終了前倒しを意識して、ややドル高にはなるかもしれません。
ただ、そのドル高の継続性も、やはり感染動向の影響を受けますから、どうあっても今回の雇用統計の影響は限定的である可能性が高いでしょう。
先行して発表された雇用指標を見ると、全体的に改善傾向。引き続き、堅調な数字が示されると考えて良さそうです。
もっとも、重要なのはオミクロン株の影響ですから、これらはあくまで過去の数字となります。それでも、強めの数字が出れば早期テーパリング終了を織り込んでジワリとドル高になりやすいでしょう。
今夜の雇用統計はあまり期待できず!
先ほども書いたように、特にドル円やクロス円はオミクロン株のヘッドライン1つで吹っ飛ぶ相場で、積極的に買っていくような相場ではありませんから、市場全体が様子見モードとなっていて、今夜の雇用統計で強めの数字が出たとしても、影響は限定的でしょう。
仮に非農業部門雇用者数が+100万人増を超えるようなポジティブサプライズとなったとしても、瞬間的には上昇するかもしれませんが、その後の伸びが期待できるかというと微妙です。
昨夜はイエレン米財務長官などが、オミクロン株の影響は限定的などとしたことでダウが大反発となりましたが、そこからするとドル円の値動きは低調です。
やはり、押し目で買っておけば勝手に上がっていく株とは違いますから、今あえて積極的にロングポジションを作っていくような状況ではないということでしょう。
となると、しばらくドル円は厳しいでしょう。あまりトレードする価値はありません。オミクロン株の影響がある程度確定すれば、迷わずロングして115円以上まで引っ張りたいですが、それはしばらく先でしょう。
今夜の雇用統計も、ほぼノーチャンスかと思います。
Next: 今夜のトレード戦略は?想定レンジは1ドル=112.70〜113.30円
想定レンジは1ドル=112.70〜113.30円
トレードアイディアとしては、ポジティブサプライズを期待して軽く買ってギャンブルするぐらいしかありません。もちろん、その場合も初動(発表後1〜10分程度)で利食いするのがベターでしょう。
あえてトレードするのであれば、ユーロドルは素直に下げそうですね。感染状況的にも欧州がまずは震源地でユーロの上値は重いですし、今夜の雇用統計が強めの数字なら、ECB(欧州中央銀行)とFRB(米連邦準備制度理事会)の政策スタンスがより明確になりますからね。
浅めなら1.133ドル、深めなら21日移動平均線のある1.136ドルに損切りを置いて、売っておけば良いでしょう。予想以上に強めの数字が出て、1.125ドルレベルを下抜けていくならホールドで利益を伸ばしていきたい。抜けられそうにないならいったん利食いで。
仮に弱めの数字でも、非農業部門雇用者数が+10万人台以下とならなければ、テーパリングの早期終了議論にはほとんど影響を与えなそうですから、慌てることなく様子見か、1.133ドルや1.136ドルのレジスタンス手前で売りポジ追加するイメージです。
トレードアイディア的にはこんなところでしょうか。今夜はユーロドルを試すぐらいです。まずはオミクロン株の評価を待って、ドル円の買い場をじっくり探していきましょう。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年12月3日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による