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なぜ宝くじと福袋で人生を浪費するのか。貧乏人を騙して夢を見せる7つの認知バイアス=神岡真司

今回のテーマは 「宝くじや福袋を買う人たちの不思議な認知バイアス」 についてです。宝くじや福袋が人生の浪費と関係が深いのは、「夢」や「希望」をちらつかされて、財布の紐を緩めてしまう、つまり騙されていることに気が付いていないことが問題なのです。しっかりとした見識をもっていないと、ただ惰性に流されて、宝くじや福袋を買ってしまいがちだからです。(『神岡真司の人生逆転の心理術』)

【関連】無駄の塊「生命保険」なぜ欧米より3倍も高い?保険会社のボッタクリと偽りの“相互扶助”に気づけ=神岡真司

※本記事は有料メルマガ『神岡真司の人生逆転の心理術』2021年12月6日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:神岡真司(かみおか しんじ)
ビジネス心理研究家。日本心理パワー研究所主宰。法人対象のモチベーショントレーニング、組織活性コンサルティング、心のパワーアップセミナーなどで活躍。著書に『思い通りに人をあやつる 101の心理テクニック』(フォレスト出版)、『苦手な相手に勝つ実践切り返し術』、『必ず黙らせる「クレーム」切り返し術』(日本文芸社)、『効きすぎて中毒になる 最強の心理学』(すばる舎)など多数。

「当たらない」ということも徐々に社会に浸透

宝くじ全体の売上額は、1995年度に1兆1,000億円のピークを描いて以降、減少傾向です。

2017年度には過去最低の8,000億円割れも記録し、翌年18年度に8,046億円となって何とか持ち直し、2020年度には8,160億円とほぼ横ばいが続いています。

しかし、その後も減少傾向は続いています。宝くじの売上が減少しているのは、「当たらない」ことが世間の常識として、定着してきたことも背景にあります。

そのため、派手なインパクト狙いで次々と当選金を引き上げ、2017年の年末ジャンボ宝くじから最高賞金額は10億円(1等7億円と前後賞1億5,000万円)にまで膨らませました。

しかし、ジャンボ宝くじの売上減少傾向に未だ歯止めはかかっていないのです。

宝くじは、お手軽な価格で楽しめる「庶民の夢」ですが、1枚300円のジャンボ宝くじの当選確率は1,000万分の1で、生涯のうちで落雷で死亡する確率と同じだそうです。

10枚3,000円分を購入しても、100万分の1の当選確率です。お手軽な価格ですが、ものすごく当たらないことがわかります。

しかし、宝くじは買っていないと絶対当たらないからと、これを100枚3万円分、300枚9万円分も買う人がいるので、驚かされるのです。

なぜ、こんなにも買う人が多いのかといえば、人が合理的に行動しないからに他なりません。

自分だけは当たる?宝くじ購入者が支配されている7つの認知バイアス

なぜ当たらない宝くじを買ってしまうのか。人は、次のような認知バイアスに支配されやすいからなのです。

<感情バイアス>

他人は当たらないが、自分だけは当たりそうな気がする。自分には楽観的思考がはたらきやすい。

<確証バイアス>

高額当選者は、長く買い続ける人が多いという都市伝説を信じてしまう。

<正常性バイアス>

3時間ごとに1,000万円の当選者が出ていると聞くと、自分の宝くじ購入の行動も正常と考えられる。

<喪失不安バイアス>

毎回続けて買わないと、これまで続けてきた過去の行動すべてが無駄になると思えてしまう。

<集団同調性バイアス>

多くの人が買うのを見ると自分にもチャンスがあると思えてしまう。

<正当化バイアス>

自分にツキあると思える時は多く買い、ツキがない時はツキのある人に買ってもらう。

<アンカーバイアス>

運の悪い人が当たると、自分にもチャンスが巡ってくるかもしれないと希望的に考える。

Next: 依存症に陥る人も。「宝くじ」は最も効率の悪いギャンブルと気づけ



宝くじ依存症に陥る人も

こうした認知バイアスに突き動かされた人たちが宝くじを買い、当選発表日まで、ワクワクしながら夢を見るわけです。

当たったら、家を買おう、クルマを買おう、借金を返そう、海外旅行に出かけよう、会社を辞めよう、事業を起こそう……などなど、お金でできそうなことをあれこれ想像するのです。

そして当選発表日に、「やっぱり当たらなかった」とがっかりするのです。

そんな悔しい思いの時には、「まあ、宝くじに当たって不幸になる人も多いから、当たらなくてよかったのかも…」などと自己正当化までしてしまいます。

宝くじに大金を投じてしまった人ほど、こういうことの繰り返しをしています。宝くじ依存症といってもよいわけです。

今まで宝くじに投じてきた金額の多さを振り返ると、先に挙げた「喪失不安バイアス」に陥り、サンクコスト(埋没費用)の呪縛に捕らわれ、続けて買わずにいられなくなるのです。

脱却するには、宝くじが「無駄の塊」であることを理解することが大事です。

「宝くじ」は最も効率の悪いギャンブル

2020年度の宝くじの売上8,160億円のうち、当選金はたったの46.5%(3,745億円)しかありません。

残りの53.5%のうち、地方自治体などに38.2%(3,071億円)が建前上分配されますが、そのうちの1割程度は総務省傘下の公益法人が100団体近くもぶら下がっており、そこに総務省役人が天下って高給を蝕む構図になっています。

地方自治や社会貢献を謳っているものの、本当は総務省OBの楽園が築かれています。

繰り返しますが、宝くじは、配当率がたったの46.5%しかないのです。他の公営ギャンブルと比べると非常に見劣りします。

競馬も競輪も競艇もオートレースも約75%もの配当率だからです。民営のパチンコは約87%です。騙されてはいけないのです。

では次に、「福袋」のカラクリについても見ておきましょう。

Next: 実はぜんぜんおトクじゃない。「福袋」大好きな日本人



日本人は「福袋」が大好き

年始の初売りシーズンには、百貨店や専門店などで「福袋」が売られます。

日本人には馴染みの光景ですが、この福袋は庶民に根強い人気があり、行列に並んでも買えなかった……という経験をした人もいることでしょう。

そうしたケースも想定されるだけに、よけい福袋を買いたい……という思いを強くさせるのかもしれません。

日本人が、福袋に魅力を感じる一番の理由は「福袋自体の価格よりも中身の品物が高額だから」ということが刷り込まれているからに他なりません(アンカーリング効果)。

「5,000円の福袋を買ったら、2万円分の商品が入っていた」という喜びが期待できるからこそでしょうが、消費者に「おトク」と思わせ、とにかく購入を促進させる巧みな価格戦略になっています。

しかし、欲しいものが入っていなかった時のがっかり感も半端ないのです。そのため、近年では、「中身の見える福袋」というのも登場して人気です。

何が入っているかが、わかったうえで買える福袋なら、「おトク」感も抜群だからです。

このように、一見消費者にとって「おトク」ともいえる福袋ですが、はたして本当に「おトク」な構造になっているのでしょうか。

「福袋」はオトクな商品ではない!

5,000円の福袋の中身の商品が、2万円分の商品だったとしても、消費者にとっては1万5,000円分トクしたとはいえません。

2万円というのは商品の上代価格であって、真実の価値や価格ではないからです。

「好きなブランドの商品であれば、何でも嬉しい」という人にとっては、コレクションが増えて喜ばしいかもしれませんが、福袋に詰められる商品には、売れ残りの在庫処分としての意味合いのほうが強く、廃棄処分予定品ならゼロ円価値です。

本当に自慢できる人気の商品であるならば、福袋のように、外から中身が見えない商品にしたりする必要がないからです。

メーカーや販売側にとっては、商売の機会損失(品切れによる儲け損ない)を恐れ、常に多めに在庫を持っています。

ゆえに過剰在庫のリスクを減らすべく、「セール」で売り捌く要領で、福袋に売れ残りを詰め込み、現金化するほうが合理的なのです。消費者にとっては、ひたすら浪費を促進されるメカニズムなのです。

Next: 高級ブランドの「アウトレットモール商法」にも要注意



高級ブランドは「ウェブレン効果」がはたらき高額ゆえに売れる

消費者に「トクする」と思わせれば、一定のお客は食いついてくれるものです。

福袋戦略と似た商法には、「アウトレットモール商法」があります。

高級ブランド品が安く買えて「トクする」と思うからこそ、ブランド好きの人たちは、少々不便な立地にあるアウトレットモールまで、観光バスやマイカーで出かけます。

高級ブランド品は、「高級品」だから「高額」という「アンカー(船の錨)リング効果」がはたらきます。

付加価値が高いからこそ、心理学の「ウェブレン効果」も期待できます。

「高額で高級ブランド品を身に着けている私」という自己拡張心理が味わえ、高額品を所有している「見せびらかし」の優越感に浸れ、自己顕示欲が満たされるからです。

そんな消費者の幻想に支えられているので、中古市場でも存在感が保てます。

こうした消費者の幻想を裏切らないためにも、都心の一等地にある高級ブランドショップでは、「安売りセール」などは一切行いません。高級ブランドの地位が揺らぐからです。

ゆえに、ブランドショップが集積した不便な地でのアウトレットモールで、お得な価格で特別に販売して、消費者に「トクする」と思わせるのです。

コストパフォーマンスの悪い高級ブランド品

ところで、こうしたアウトレットモール業態が誕生したのは1980年代の米国でした。

はじめはブランドメーカーの工場の一角で、訳アリ商品などを細々と売る形態からスタートし、次第にブランド品店舗を集積させた在庫処分の戦略拠点として発展させ、今ではアウトレットモール専用商品までも揃えて売っています。

しかし、高級ブランド品は、決してコスパのよい商品ではありません。

なぜなら、高級ブランド品とそっくりで、精巧に作られた偽物ブランド商品が、非常に安く売られているのを見かけます。本物ブランド品の5分の1や、10分の1の価格でも、本物と見分けのつかない偽ブランド商品が売られているわけです。

つまり、本物ブランド品の原価も、とても安いものであることが想像できるはずです。

ゆえに高級ブランド品はアウトレットモールで、30%OFF、70%OFFで売れるのです。

高級ブランド品の原価も5%や15%くらいにすぎないからこそ成り立つ販売価格なのです。原価さえ割らなければ、安く売っても商売が成り立つアウトレットモールは、非常に賢い在庫処分の現金化拠点といえるのです。

福袋を得だと思って買う人の心理と同じく、アウトレットモールがトクだと思わせられています。

人生の浪費にならないように、宝くじや福袋、高級ブランド品にはくれぐれも気をつけていただきたいと思います。

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・不動産投資家たちの心理
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神岡真司の人生逆転の心理術』(2021年12月6日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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