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「2024年、トランプが大統領として返り咲く」いま誰が復帰を望み、暴力と分断を加速させているのか?=高島康司

日本では報道されないが、アメリカの分断はいつ内乱が起きてもおかしくないほど深刻な事態となっている。とくにトランプ支持者の過激化が目立ち、その支持者層も変化を遂げている。「トランプこそ白人の権利を回復する大統領である」との声が聞かれ、「暴力止むなし」との考えを持つ者も少なくない。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)

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水面下で進行するトランプ支持派の動き

いまアメリカの水面下で進行している危険な事態についてお伝えしたい。

いま日本では、アメリカについては緊張した米中関係の報道がメインで、国内情勢に関する報道はオミクロン株の拡大やインフレの亢進、そしてバイデン政権の目玉である2兆ドル規模の税制・支出法案の行方などに限定されている。

米国内で起こっているこれ以外の動きが報道されることはまれだ。

実はこの状況は、アメリカの主要メディアでも同じである。特に、今年の1月6日の衝撃的な連邦議会議事堂の突入事件で頂点に達した米国内の分断状況や、トランプ支持派のその後の動きなどについての報道は非常に少ない。

米主要メディアでは、アメリカはトランプ時代の混乱を乗り越え、なんとか統合性を保っているとの印象が演出されているように見える。

「2024年、トランプ氏が大統領として返り咲く」

そのようななか、アメリカの著名なニュース月刊誌、「ジ・アトランティック(The Atlantic)」に次のような題名の記事が掲載された。約30ページもある長文の特集記事だ。12月9日の掲載である。

「トランプの次のクーデターはすでに始まっている:1月6日は予行演習だった。ドナルド・トランプの共和党は、次の選挙を覆すためにはるかに有利な立場にある」

ちなみに「ジ・アトランティック」は、1857年にマサチューセッツ州ボストンで創刊された評論誌だ。そのクオリティーは非常に高く、150年以上に渡ってその評価を維持している。政治的なスタンスは中道左派、ないしはリベラル系として知られている。

この記事は、1月6日の連邦議会議事堂侵入事件以降のトランプ派の水面下の動きをつぶさに追い、2022年の中間選挙、そして2024年の大統領選挙ではアメリカに激震が走ることを予想した記事だ。内容は衝撃的だったので、アメリカの多くの主要メディアで報道され、注目されている。

まずこの記事では次のように述べ、2024年の大統領選挙ではトランプが共和党の統一候補になると断言する。

生物学が介入しない限り、ドナルド・トランプは2024年の大統領選で共和党の指名を受け、勝利するだろう。共和党は彼の虜になっている。この状況を打破できる相手はいないし、そうしようとする人もほとんどいないだろう。また、政治以外の分野での挫折、例えば起訴されたり、ビジネスで悲惨な状況に陥ったとしても、トランプの出馬を妨げることはない。むしろ、それが彼の権力への意志を強めるだろう。

2024年にトランプは、大統領として返り咲く可能性が高いというのだ。

Next: トランプ支持派の中心は、学歴の高いホワイトカラーの中間層



連邦議会議事堂に侵入した意外な人々

2024年にトランプが大統領に返り咲く。この記事がこのように断言できるのは、1月6日に連邦議会議事堂に侵入した人々の詳しい取材を通して、いまアメリカの水面下で起こっている静かなクーデターとでも呼べるような動きが明らかになったからだ。

これまでトランプのコアな支持層は、グローバリゼーションのトレンドに乗ることができず没落して貧困化した労働者層、ならびに失業し過激化した若い白人が中心の白人至上主義者のようなマージナルな集団だと見られていた。当然、1月6日に連邦議会議事堂に突入して逮捕された人々も、多くがこの層に属していると見られていた。

しかし、この集団を細かく調査すると、こうした一般的なイメージとはかなり異なった集団であることが判明した。彼らこそ、トランプのいまのコアな支持層を代表する集団と見てよいだろう。

ちなみに、議事堂に突入した600人以上が被告となっており、そのうち78人が拘束されている。刑務所で裁判を待っている者のほとんどは、警察官への暴行、凶器による暴力、共謀、銃器や爆発物の不法所持などの重大な犯罪で起訴されている。少なくとも151人の警官が、骨折、 脳震盪、化学物質による火傷、テーザー銃による心臓発作などの被害を被った。

この集団のアイデンティティーを詳しく調査したのは、シカゴ大学の研究チームだ。議事堂に侵入して逮捕された人々の年齢の中央値は41.8歳で、半数以上がホワイトカラーの仕事に就いていたり、自分で起業していた。医者、建築家、グーグルのフィールドオペレーションの専門家、マーケティング会社のCEO、国務省の役人などもいた。学歴も大卒以上だった。

一般的に、アメリカ、ヨーロッパ、 中東など世界的に見て、過激な運動を展開する人々は一貫して20代から30代前半の無職で低学歴の若者が多い。

だがこの集団は、そうしたプロフィールとはまったく異なっていた。議会議事堂に侵入して逮捕された人々は、中流階層、ないしは中流階層の上の人々だった。

しかも、これらの反乱分子は、ほとんどの場合、有名な過激派グループには所属していなかった。「プラウド・ボーイズ」や「オアス・キーパーズ」、「スリー・パーセンターズ」といった極右の民兵組織とのつながりがあったのは、逮捕された600人では数十人いたが、起訴され7人のうち6人はそのようなつながりがまったくなかった。

出身地域から明らかになる実態

このように、議事堂に突入して逮捕された人々は、中年のホワイトカラーや専門職の中流層以上の人々であった。

おそらくこれが、いまのコアなトランプ支持者でもっとも過激な人々の典型的なプロフィールだ。没落した労働者層や、極右の失業した若者というイメージとは大きく異なる集団だ。

このようなプロフィールを見ると、彼らは比較的に豊かであり、経済的な理由からトランプ革命を支持している人々ではない。

では、彼らはどういった理由でトランプを支持しているのだろうか?それは、シカゴ大学の研究チームが明らかにした彼らの出身地域を見ると分かる。

彼らの出身地を郡ごとにマッピングすると、白人の人口比率が低下している郡から過激なトランプ支持者が現れる可能性が非常に高かった。2015年から2019年にかけて、ある郡の白人の割合が1ポイント低下するごとに、その郡出身のトランプ過激派の出現可能性は25%上昇していた。

またシカゴ大学の研究チームは、6月に全米の傾向を見るためにもっと大きな人口を対象に調査した。その結果、「バイデンは非合法であり、トランプをホワイトハウスに戻すためには暴力が正当化される」という意見に賛成した人は8%強だった。これはアメリカの成人人口の2,100万人に相当する。

さらに、11月1日に行われた世論調査会社、「パブリック・レリジョン・リサーチ・インスティテュート」の調査によると、さらに大きな割合の12%のアメリカ人が、選挙はトランプから盗まれたものであり、「真のアメリカの愛国者たちは、国を救うために暴力に頼らなければならないかもしれない」と考えていることが判明した。これは成人人口では3,100万人に相当する。

Next: 支持者に変化?「トランプこそ白人の権利を回復する大統領である」



「トランプこそ白人の権利を回復する大統領である」

さらにシカゴ大学の研究チームの調査では、トランプを大統領に戻すために暴力の使用を支持した2,100万人の約3分の2が、「アフリカ系アメリカ人やヒスパニック系アメリカ人は、いずれ白人よりも多くの権利を持つようになる」という見方を支持していた。

これを見ると分かるが、いまのコアなトランプ支持者の多くは、黒人やヒスパニック系などのマイノリティーが優遇されて多くの権利を持つようになった結果、反対にマジョリティーの白人の権利が奪われ、抑圧されていると感じている白人の中流層だ。

そのため、トランプこそ白人の権利を回復する大統領であるとして、トランプを支持している。このように、トランプ支持の理由は経済的なものというよりも、白人の権利回復というイデオロギー的なものである。

トランプの大統領復帰へ「暴力の使用も止むなし」

しかしやはり驚くべきは、トランプを大統領に戻すためには暴力の使用も止むなしと考えている人々が少なくとも2,100万人、もしかするとそれを越える12%、3,100万人もいるという事実だ。

この記事では調査を行ったシカゴ大学の研究者の発言として、北アイルランドの内戦との類似性を指摘している。

北アイルランドでは、1968年から98年までの30年間、熾烈な内戦が戦われた。北アイルランドのイギリス帰属をめぐって、対立する少数派のカトリックと多数派のプロテスタントが、それぞれ「IRA」と「アルスター義勇軍」の武装集団を組織し衝突した内戦だった。

アメリカの成人人口の8%から12%がトランプ復帰のために暴力を支持しているという現状は、北アイルランド内戦の始まる直前の状況に類似しているというのだ。

内戦が始まった1968年、北アイルランドのカトリック教徒の13%が、アイルランドのナショナリズムのための武力行使が正当化されると答えていた。その直後、わずか数百人のメンバーで暫定「IRA」が設立された。その後、30年にもわたる血なまぐさい暴力が続いた。13%の支持率は、内戦を開始するには十分すぎるほどの支持率だった。

シカゴ大学の研究者は、少なくとも2,100万人から3,100万人はいる暴力革命の支持者は、ちょっとした火種があれば、実際に発火する可能性のあるカラカラに乾いた木の塊のような存在だとしている。

この記事では、1月6日に議会議事堂に集合したケンタッキー州出身の元沿岸警備隊員の発言を、トランプ支持派の怒りを反映する象徴的な発言として紹介している。

私は国のために戦います。神よ、私たちは内戦に向かっていると思います。内戦が止まるとは思えない。私は本当にそう思います。犯罪者たち、つまりナンシー・ ペロシとその犯罪組織が、内戦を強要しているのだと思います。憲法を愛し、憲法を守るために命を捧げる人々に、民主党は彼らに対して武器を取ることを強要している。

これはまさに、憲法を破壊する民主党の策謀から神聖なアメリカを守るためには、武器を手に取り戦うことも避けられないという気持ちだ。

では、このような乾き切った木のような怒りの感情に着火する火種となるものはなんなのだろうか?

Next: 「トランプの次のクーデターはすでに始まっている」



「トランプの次のクーデターはすでに始まっている」

実は、そのような火種は各州の州議会のレベルで着々と準備されているようなのだ。

これは、2024年の大統領選挙で本当に暴力の火種になる可能性がある。これがこの記事の題名が、「トランプの次のクーデターはすでに始まっている」となっている理由だ。

これは日本ではまったく報道されていない事実だが、今後の大変な火種になるはずだ。

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