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賃金の4割ピンハネ。なぜ人材派遣会社の中間搾取は許されている?労働基準法をすり抜ける悪魔の雇用システム=神岡真司

なぜ中間搾取の労働者派遣事業が堂々とまかり通っているのでしょうか。これは将来の生活保護受給者蔓延にもつながる問題です。(『神岡真司の人生逆転の心理術』)

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※本記事は有料メルマガ『神岡真司の人生逆転の心理術』2021年11月29日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:神岡真司(かみおか しんじ)
ビジネス心理研究家。日本心理パワー研究所主宰。法人対象のモチベーショントレーニング、組織活性コンサルティング、心のパワーアップセミナーなどで活躍。著書に『思い通りに人をあやつる 101の心理テクニック』(フォレスト出版)、『苦手な相手に勝つ実践切り返し術』、『必ず黙らせる「クレーム」切り返し術』(日本文芸社)、『効きすぎて中毒になる 最強の心理学』(すばる舎)など多数。

労働基準法で禁じられているはずの「労働者派遣事業」

「人材派遣」などと称して労働者の賃金を3~4割も抜いて儲ける、本来は労働基準法で禁じられていたはずの中間搾取を行う労働者派遣事業があります。

政府は、“使い捨て労働者”を求める産業界の要請を受け、1986年に「労働者派遣法」を制定し、当時から「業務請負」と称して偽装派遣を行っていた違法営業の法人を次々と救済したのでした。

当初、表向きは、専門性の高い業務のみの派遣のはずが、実際は抜け道だらけの法改正で、今や雑用業務までやりたい放題になっています。

派遣先にすれば、

・「交通費ナシ」
・「賞与ナシ」
・「退職金ナシ」
・「福利厚生ナシ」
・「社会保険ナシ(今は派遣会社で制度導入した)」

といった労働者ですから、戦前のタコ部屋奴隷労働に先祖返りさせた制度といえるのです。

戦後は「労働基準法・第16条」で、労働者の「中間搾取(ピンハネ)」は禁じられたはずでした。「何人も法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」となっていたはずなのです。

この規定に従えば、明らかに労働者派遣業は、「中間搾取」に該当するように思えますが、現実には「派遣元会社は派遣労働者との間で雇用契約を結んでおり、派遣先企業との間では派遣契約を結んでいるので、派遣元会社は、労働基準法・第16条が指す第三者には当たらない」という法解釈なのだそうです。

コジツケもよいところでしょう。収入の原資は、派遣労働者がもたらしているのですから。

要するに、「法律に基づいて許される場合の外」とあるように、労働者派遣法を成立させたことで、中間搾取が認められるようになったという解釈のほうが、妥当のように思えるのです。

Next: 人材派遣業界はスタート時点から「違法」のオンパレード



違法オンパレードの人材派遣業界

驚くべきことに、この業界はスタート時点から違法のオンパレードです。

・「禁止業種への派遣」
・「無許可・無届営業」
・「偽装請負」
・「二重派遣」
・「女子の容姿のランク付け開示」
・「派遣先への履歴書開示」
・「派遣先企業への事前面接(会社訪問の名目で実施)」
・「マージン率の非開示」

こんな悪徳業態の企業が堂々と上場しているのですから、笑止千万といえるのです。

今でも違法だらけの業界ゆえに、何度も法改正が繰り返されてきましたが、実態は変わりません。

いつでも首切り可能――というのが、そもそもの派遣業界の「キモ」なので、大手派遣会社は政治献金や接待供応で与党政治家らを篭絡し、抜け道だらけの法改正で乗り切ってきたからです。

バイトやパート、契約社員など、有期雇用の非正規雇用労働者は、今や労働者の4割近く(2020年:2,090万人)にのぼり、そのうち派遣労働者が占める割合は6.6%(同138万人)を占めます。

欧米の場合、派遣社員の報酬は正社員を雇うよりも高い

そもそも、労働者派遣という業態は欧米で始まったシステムです。

欧米の企業は、正社員であっても、人種・国籍・宗教などによる差別「以外」なら、従業員のクビを簡単に切ることができます。

日本のように、派遣労働者ゆえに簡単にクビ切りができるシステムとは異なり、正社員であっても、クビ切りが容易なのです。

にもかかわらず、なぜ「派遣労働者」が必要かといえば、専門スキルのある人材を、臨時プロジェクトなどで必要な時だけ、仕事をしてもらう利便性が優先されたからです。

そのため、欧米の場合の派遣社員の報酬は、正社員と同じ仕事なら同額の報酬が得られます。「同一労働同一賃金」の原則が働くからです。

また、高度な専門スキルがある派遣労働者の場合は、派遣先企業の正社員よりも、はるかに高額の報酬が支払われるようになっています。

そして、派遣会社には、派遣労働者の賃金に上乗せした手数料を払うことになりますから、臨時に派遣労働者を利用すると、正社員を雇うよりも高くつく場合が往々にしてあるのです。

日本の労働者派遣企業の場合は、自社の派遣を企業に受け入れてもらうために、労働者派遣企業同士が競争して、報酬のダンピング合戦が起こりがちです。

そして、そのシワ寄せが、派遣労働者の賃金に及ぶことになるのです。

Next: 労働派遣事業は「3~4割のピンハネ率」で大儲け



3~4割のピンハネ率

厚労省のデータによれば、2018年度の労働者派遣事業の派遣売上高は、6兆3,816億円にのぼっています。

事業所数は約38,000ヶ所です。ピンハネで儲かるので、べらぼうな数になっています。

そして、派遣会社の派遣労働者賃金のマージン率は平均30.4%で、営業利益率は5.9%にのぼります。業種によっては、5割近いマージン率のところもあるようです。

企業にとっては、賃金の高い正社員よりも、賃金の低い非正規雇用の派遣社員を雇いたがるのは、自明の理です。これでは、貯蓄もままならない人たちが増えるのも当然なのです。

資本金10億円以上の日本の大企業では、人件費を削りに削って、2020年度には内部留保額が466.8兆円にものぼっています。

内部留保とは、企業の純利益から税金や配当、役員賞与などを引いた残りで、利益剰余金や利益準備金と呼ばれるもので、いわば「企業の儲けの蓄積」です。

アベノミクスの円安誘導もあって、輸出大企業ほど、利益を積み上げてきました。人件費を削って、タンマリ貯め込んだわけです。

近い将来「生活保護受給世帯」は激増する

労働者が現役時代に十分に稼げなければ、蓄えもないまま老後を迎えることになります。厚生年金の支給額も低くなり、それだけ暮らしは苦しくなります。

2018年度の生活保護受給世帯は164万世帯(総額3.6兆円)ですが、半数は65歳以上の高齢者です。

したがって、このまま賃金の低い現役世代が多いままだと、将来の生活保護受給者は、激増間違いないことになるでしょう。

2030年には生活保護費総額が6兆円に及び、2040年には9兆円に及ぶという試算もあるのです。

こうした老後破綻する人の予備軍といえるのが、現在の非正規雇用の現役の人たちであり、派遣労働者たちといえるのです。

日本の賃金は、下がり続けています。ここ20年間に他の先進国が軒並み2割~3割上昇しているのに日本だけが1割弱も下がっているのです。

おまけに消費税率アップで、可処分所得(自由に使えるお金)も減る一方です。

賃金アップを図るためにも、こうした中間搾取を許す労働者派遣業は禁止すべきなのです。

そして、競争原理で賃金のアップが期待できるように、すべての労働者は一般企業による直接雇用体系にすべきでしょう。

労働者派遣の会社など要らないのです。諸悪の根源だからです。

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神岡真司の人生逆転の心理術』(2021年11月29日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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