4年ぶりに大発会で大幅高を見せた日本株だが、6日のマザーズ市場の暴落により、東証一部市場も大きく伸びるのは難しい状況となった。吉凶予想のつかぬ新春相場となり、2022年の相場が陰線か陽線で終わるかは予想がつかなくなったが、大きな波乱相場を含む1年となることは間違いないだろう。(「週報『投機の流儀』」山崎和邦)
※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2022年1月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
マザーズ市場での急激な信用取引の損益悪化
6日(木)の840円安は売買代金が約3.1兆円であったから、久しぶりに3兆円台に乗せたということは、この下げが6日に限りホンモノであったということが言える。黒田総裁の任期は23年4月で切れる。今年後半には後任人事が取り沙汰されることになろう。日銀が緩和維持と言い続けても、政策変更への思惑は広がらざるを得ない。まずは債券相場にその波乱の芽が出るであろう。
6日(木)の840円安はインデックス中心に指数先行で意図的に売り方が下げさせているという面も大いにあると思う。本稿で言うところの「ヒトがやる相場ではなくて、機械がやる相場だ」というところである。だから、上がる時も下がる時も一直線であって、相場のうねりとか地合いというものがなく無機質になる。
7日(金)の週末は午前から約200円高とわずかに戻したが、前日の下げに比べれば4分の1幅の戻りにしか過ぎない。但し、こういうことは言える。200日平均が28,821円だから、そこに一旦は届いたことになる。ここでまた売り方が仕掛けるかもしれないし、これを抜けば少し上に行くところであるが、ここは今迷っている最中であろう。
以下は、松井証券の発表。
信用評価損益のマイナス20%が6週間続いているという。追い証が連発しているという意味である。31%まで来たという。こういう状態だとマザーズに向かった個人投資家は新しい銘柄を迎える状態ではないであろう。
楽天証券も同様なことを言っている。SBI証券は、追い証の売りが出て、買い向かう人が減っていると言っている。ネット中心の証券会社の状態は似たようなものらしい。最終損益の赤字とか、PERの高い銘柄が多いマザーズ指数には逆風が吹いている感じである。
年末には、日銀が許容する変動幅の上限の0.25%を試すであろうと思われる。 この日銀の変化が促す金利上昇が、後半の株式市場の一つの上値抵抗線になるであろうと思われる。
年足で陰線か陽線か?波乱含みが予想される2022年相場
今まで3年連続して大発会は前日に比べて安かったが、今年は大幅高で始まった。これは、一つは前日のNY株が高かったこと、もう一つは、年末はVIXが16ポイントまで落ちた。こういう時は、機関投資家が株式会社組み入れのウェイトを高めるという動きなのかもしれない。いずれにしても、4年ぶりに大発会が高かった年である。
思えば、2018年にも大発会は大幅高だった。ところが、その年の10月2日にアベノミクス相場の老年期大天井をつけて、年足では陰線になった。歴史は繰り返すというが、そのまま同じには繰り返さない。但し、似た現象は起きる。「株式相場はダイスやルーレット勝負のような都度々々が独立して現れるものではなく、過去を記憶して動くものだ。そこに罫線観測の意味がある」と言う旨を本稿は述べ続けてきた。少なくとも今年は、年足で陰線か否かは分からないにしても、波乱含みであることは間違いあるまい。
大発会は4年ぶりの大幅高だったが、翌々日には大発会の大幅高を遥かに超える下げ幅を示現した。
大発会は3年続いて前日比より安かった。今年は510円高で、ほぼ高値圏で終わった。但し売買金額は2兆円台だから、本格的な上げ相場とは言えない。しかし、次のようなことは言えると思う。
これだけ大幅に上がっても25日線との乖離率は2.7%、騰落レシオは100%強、よって「買われ過ぎ」の現象は呈していない。
また、いわゆる「This is Japan銘柄」が新高値をとってきた。トヨタ・ソニーがそれである。そして海運株が軒並み暴騰した。これは、原油が高い翌年はオイルマネーが買いに入るというアノマリーがあったが、それなのかもしれない。彼らは売る時も劇的だし、買う時も劇的だった。今後どうなるかは判らないが、オイルマネーが入っているのかもしれない。その割に売買代金は少ないのだが、「This is Japan銘柄」が高いということは、オイルマネーかと思われる点もある。
しかし、4年ぶりと言うのは、小さいながら一種の異常状態だ。果然、6日には大発会の大幅高を遥かに超える下げ幅を示現した。
大幅安した6日(木)の東京は2018年以降の大雪だった。2018年と言えば、大発会は大幅高だったし、アベノミクス大相場の老年期大天井の年だった。また、縁起の良い話では、今年の東京は2003年以来の低温だというが、2003年と言えば、小泉相場の始動年の7,600円の春だった。
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マザーズ市場に追証連発、東証一部のトレンドを変えたか
大発会の大幅高・翌日の小幅高、これを合わせた分が6日(木)に半日で消えてしまった。新年早々から時価総額の大きい大型株が上昇し、本稿で言うところの「This is Japan銘柄」(日経新聞1月6日で言うところの「これぞ日本という代表的な銘柄」)に資金集中があったように思う。これは緩和マネーの縮小で売られやすい小型株が急落し、消去法的に大型株に買いが入ったと思われた。
マザーズは新年早々大幅下げで、1月5日には1年7ヶ月ぶりの安値を付けた。マザーズは2018年の1,367円と2020年の1,368円、「鬼より怖い1文びっこのダブルボトム」を示現して、そこから890円まで478円幅、高値から見れば35%安を演じた。当然に、追い証が連発したであろう。
アベノミクス相場の大天井が2018年10月、マザーズが同じく2018年に天井を付けてからそれ以後、2020年3月に527ポイントまで急落した。半値以下になった。高値の40%にまで、60%を下げた。そこから同年10月に2倍以上になったのだから、下げがきつくても止むを得ないだろう。
マザーズ銘柄を追求してきた個人投資家は、追い証の始末の最中に第一市場を振り返る暇はない。したがって他の資金が、例えば海外投資家の資金などを含めた筋の違う資金が第一市場の大型株に入ったと思われる。米株式市場では、景気敏感株が買われる動きを受けて大型海運株を始め、トヨタ・ソニーなどの「This is Japan銘柄」が新高値を付ける動きがあったが、木曜日にはこの動きも一旦は終わった。
バフェット指数は「過熱ライン」越え
当面の市況は、週末現在で25日線と概ね並び、騰落レシオも概ね100%近傍を維持、200日線と概ね並び、「程よいレベル」だというところであろう。我々が気にすることは「レベル」ではなく「方向」である。
昨年2021年は、世界の株式時価総額は年間約2,000兆円伸びて、過去最大だったことが知られている。日米だけでなく、世界全般に財政出動と金融緩和の当時並行という金融緩和の最先端政策を使って経済再生に向けた。これを好感し、再生後の経済を先取りした相場だった。米国株の上昇が目立ち、月末にはNYダウは史上最高値を更新した。世界のGDPは年央にコロナ前の水準を取り戻した。
いわゆるバフェット指数(時価総額とGDPとの比率)は「過熱ライン」に来ている。また、筆者の「マーシャルのk」からヒントを得て始めた「時価総額と個人金融資産との比率」も「買われ過ぎ」の域を超えている。この両者ともに「買われ過ぎ」のレベルを超えてから久しい。
2022年以降はFRBの資産の縮小を早期に済ませ、その後、二度または三度の利上げを行うということも市場は織り込んだ。実際に、それが実現されれば市場に影響を及ぼすかもしれないが、今のところそれは全て織り込んでいる――
<山崎和邦の投機の流儀 vol.501 1/9号>
・第1部:当面の市況
(1)NYは、ナスダックは4日続落・ハイテク株売り・景気敏感株買いの小動き
(7)恒例の日経新聞1月1日版の著名20氏のアンケート
(8)昨年2021年の個人マネーは米成長株とインデックスに流入
■ 第2部:中長期の見方
(1)2021年の日本の株式市場の概観
(2)日本経済全体をGDPから観る、及び家計に「過剰貯蓄30兆円」
(3)岸田首相の「新しい資本主義」について
(4)中長期の見方
(5)日銀・ETF購入・出口戦略
(6)2020年の株式市場
(7)「唐突だ」と多くの読者諸賢から言われた安倍政権成立当時の憲法改正について、再び触れる。岸田政権は必ずこれを出してくる。
(8)原発再開と東電株
(9)三たびトルコ事情
■ 第3部:読者との交信欄
長年の読者T様との交信
- 新年2度目にあたって -
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『山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2022年1月9日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。