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“岸田ショック”で日経平均急落?FOMCまで1週間あるのに大きく下げたワケ=脇田栄一

引き締め観測でダウも日経平均も大きく下落した。FOMCまで1週間あるにもかかわらずこの下落である。SNS上では「岸田ショック」との声も聞かれるが、以前から警告していたとおりのパウエルショックである。

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プロフィール:脇田栄一(わきた えいいち)
FRBウォッチャー、レポートストラテジスト。1973年生、福岡県出身。個人投資家を経て東京都内の大手株式ファンドでトレードを指南。本来は企業業績を中心とした分析を行っていたが、08年のリーマンショックを経験し、マクロ経済、先進国中央銀行の金融政策の影響力を痛感。その後、FRBやECBの金融政策を先読み・分析し、マーケット情報をレポートで提供するといった業態を確立。2011年にeリサーチ&コンサルティング(現eリサーチ&インベストメント)を起業。顧客は機関、個人投資家、輸出入企業と幅広い。

「FOMCまで1週間あるにもかかわらずこの下落」

引き締め観測でマーカンタイルのダウ先物、日経平均も超下落。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

まぁ、以前より警告していたことだが(以下、昨年末の私のブログより部分抜粋)。

パウエルショック、パウエルリスクをつらつらと述べてきたけど、

脆弱なのは間違いないですね。マーカンタイルのダウ先物は35,000ドル割れ。WTI原油先物は68ドル。年末年始にかけてアタフタするとお伝えしていたが、さらに以前パウエルショックでお伝えしたように、1月下旬から2月上旬はマズイんじゃないですか?<中略>

政権の方針観たらわかりますよね。簡素にいえば乱高下を受け入れながら行きつくところは1月の悲観である。バイデン政権が政策転換することはできないので、同じようなボラ相場は続くでしょうね。

※参考:バイデン軟化と株式軟化 – ニューノーマルの理(2021年12月20日配信)

FOMCまで1週間あるにもかかわらずこの下落。

米11日にパウエルが議会証言したでしょう?金融政策の正常化。すなわち、ゼロ金利解除と資産圧縮を実行することを明言した。このとき、ブログ更新も考えたわけですが、所用が重なりできなかったわけです。

なぜドル円は上がらないのか

引き締め観測(ゼロ金利解除)がこれだけ出てきて債券利回り上昇、なぜドル円は上がらないの?といった疑問をお持ちの方は少なからずいると思う。

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

本日の値動きをみてお分かりのとおり、米短期金利は急騰している。そして先日のダウ平均下落に続く形でマーカンタイルのダウ先物も下落。

引き締め観測、というより引き締め警戒。さらに言うのであれば、FEDに対する警告ともいえる。

つまり資金巻き戻し、リパトリ(エーション)による円転が金利上昇に勝る、ということになる。

引き締めによって金利上昇したとしても、急激なリパトリによる株式の急落(ブレーキ)は米金利上昇を飲み込む形で必ず円転、円高になる(※しかし、それも株式急落時のみで引き締め=基調的ドル高という考え方に間違いはない)。

Next: いよいよ利上げか。来週のFOMCに向けて株価はどう動く?



来週のFOMCに向けて株価はどう動く?

米短期金融市場では、来週の会合(25〜26日)で25bpの利上げに踏み切るとの見方が安定的に強くなっている。

3月会合に至っては、11日のパウエル証言を通じて連続的な利上げ、若しくは3月会合にてゼロから0.50%(FFレート)へと一気に50bpの引き上げが観測・警戒されてきた(株式にとっては、「警戒」という言葉が適切だといえる)。

ここでさらに懸念されているのはQT(量的引き締め)である。11日の公聴会では年後半にQTをおそらく実施(パウエル)としたが、ここがまだ漠然としている。

パウエルは何度か発言しているが、今回のQTは過去のQT(拙著『為替の基本とカラクリがよ〜くわかる本[第2版]』7‐6「QEからQTへ」参照)とは違った形になると発言した。

まぁパウエルの場合は前言撤回・修正があるので、信ぴょう性は薄いが(だからボラ高になる)仮に違う形で資産圧縮となれば、持ち切りではなく売り切りといったことだろうか。

今回のコロナ騒動がいくら過去のクラッシュ(リーマン・ショック)と違うといえども、売り切り(資産売却)はできない。それをやってしまえば、2018年10月同様、マーケットの洗礼を浴びることになるだろう。そして前言撤回である。

簡素にいうと、ここ数日の株式下落はFOMCを前にして、FEDが「急激な引き締め」を匂わす、または表明することを懸念してのもの。マーケットからの警告と見ることもできる。急激な利上げ(50bp)、そしてQTの具体的手法は表明するな!という値動きに見える。

当ブログでは、昨年末よりパウエルショックを連呼してきた。彼の唐突な「掌返し」は言い過ぎかもしれないが、彼の急激発言に安堵することはできない。マーケットの早期リパトリ?には納得できるし、FRBは伝統的にgradualism(漸進主義)を重んじてきた。

(※筆者注:当然、株式の浮揚、安定化が望ましい。FOMC後、反転するも続落するもこのプレッシャーを受けたFOMCボードメンバーの判断次第、ということになる。投資は自己責任で。また更新します。)

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image by:Federalreserve at Wikimedia Commons [Public Domain], via Wikimedia Commons

本記事は脇田栄一氏のブログ「ニューノーマルの理(ことわり)」からの提供記事です。
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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