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【1月FOMC】マーケットにとっては大失敗。パウエル議長が3パートに分けて丁寧に説明したかったこと=脇田栄一

公表された1月FOMC(日本時間4時)での声明文は実質上、3つに区切られるような形で公表された。結論をいってしまえば、今回の会合では政策金利を維持するが、インフレ率が2%を大幅に上回り労働市場も堅調であることから近く政策金利を引き上げる(利上げする)ことを想定している、とのこと。お察しのとおり、これはマーケットに対する「3月利上げの折り込み」であって、市場のボラを安定化させることを狙っている。

プロフィール:脇田栄一(わきた えいいち)
FRBウォッチャー、レポートストラテジスト。1973年生、福岡県出身。個人投資家を経て東京都内の大手株式ファンドでトレードを指南。本来は企業業績を中心とした分析を行っていたが、08年のリーマンショックを経験し、マクロ経済、先進国中央銀行の金融政策の影響力を痛感。その後、FRBやECBの金融政策を先読み・分析し、マーケット情報をレポートで提供するといった業態を確立。2011年にeリサーチ&コンサルティング(現eリサーチ&インベストメント)を起業。顧客は機関、個人投資家、輸出入企業と幅広い。

「1月FOMC」で示された3点

さきほど公表された1月FOMC(日本時間4時)での声明文は実質上、3つに区切られるような形で公表された。

以下、ステートメント「Federal Reserve issues FOMC statement Press Release – 1/26/2022」から局所抜粋。例のごとく第3パラグラフ政策決定箇所から。

the Committee decided to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent. With inflation well above 2 percent and a strong labor market, the Committee expects it will soon be appropriate to raise the target range for the federal funds
rate.

結論をいってしまえば、今回の会合では政策金利を維持するが、インフレ率が2%を大幅に上回り労働市場も堅調であることから近く政策金利を引き上げる(利上げする)ことを想定している、とのこと。

お察しのとおり、これはマーケットに対する「3月利上げの折り込み」であって、市場のボラを安定化させることを狙っている。ここのところの市場の乱高下は効いているものと想定。

なぜなら冒頭に書いたように、金融政策に関するリリースが同日3つ公表されており、いつもであればこの声明文1つで終わるものが、バランスシート縮小についても言及しなくてはいけない。以下、「Principles for Reducing the Size of the Federal Reserve’s Balance Sheet/Press Release – 1/26/2022」(声明文と同時リリース)から。

The Federal Open Market Committee agreed that it is appropriate at this time to provide information regarding its planned approach for significantly reducing the size of the Federal Reserve’s balance sheet. All participants agreed on the following elements

やはりQTが注目されていることをFed自身が大きく自覚している。

冒頭文はそれを示したものになる。バランスシート縮小のアプローチ、計画を情報提供することが示されたわけだが、個人的に気になったのは、「現段階で」(at this time)と補足しているものの予想に反して大きくサイズを縮小する(significantly reducin)ということである。

マーケットはこれに関し、それこそ現時点では金利政策(利上げ)が維持されたことから、反応は鈍いがあとから効いてくるダウンサイドリスク、であると想定。 で、以下も局所抜粋。(重要箇所)

The Committee intends to reduce the Federal Reserve’s securities holdings over time in a predictable manner primarily by adjusting the amounts reinvested of principal payments received from securities held in the System Open Market Account (SOMA).

NY連銀のSOMAにカウントされている債券のロールオーバーの額を調整、長期的に削減する(FOMC参加者すべてが同意)となっているが、まぁここでは難しいことは置いといて(面倒臭い、というわけではない)、2017‐2018年に実行した保有証券の償還分の再投資額を徐々に縮小し、長期的に自然償還させていく、といったアプローチを公表した。

つまり、前回記事では、過去にロールオーバーの額を大きく減額し失敗したことから、SRFを大きく活用すると思っていたが(それも活用すると思われる)、そのようなテクニカルな細かい内容を声明文で出せるわけもなく、出せるものを出したという印象。

つまり、2018年10月に月500億ドルの自然償還を実施したときリスク資産は急落したことから、(利上げスタート後に)QTを実行したとしても少額で進めていくことを宣言した、というふうに受け止めた。

ただ、先述のように大きくバランスシートのサイズをカットする、ということから、市場はさらに軟化のリスクを負った形になる。これをコミュニケーションの失敗、というか否かは見る立場の人間によって違うが、マーケットにとっては完全な失敗である。彼にとってはそれを見越したうえでの発信だといえるだろう(実際問題としてどのみちバランスシートは縮小させないといけないので)。

1月下旬は焼け野原、とくどく言ってきたが的中するのは悲しいことだといえる。それを望んでいるわけではなく、当然ながら市場の安定化を望んでいる。また更新します。

追記:目先数ヵ月、反発局面があったとしてもQTの詳細がハッキリするまでは上値は抑えられ、ファンダメンタルズは軽視されるだろう。

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image by:stockwerk-fotodesign / Shutterstock.com

本記事は脇田栄一氏のブログ「ニューノーマルの理(ことわり)」からの提供記事です。
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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