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「インフルエンザ程度でしょ?」オミクロン株を甘く見ると再び経済停滞へ。海外研究でわかった特性と危険度=高島康司

日本ではあまり報道されていないが、オミクロン株の海外研究で最近明らかになってきた実態を紹介する。インフルエンザと同じようなものと認識しているといかに危険か、それがよくわかるだろう。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)

※本記事は新型コロナウイルスに関する内容が含まれます。新型コロナウイルス感染症については、厚生労働省などの公的機関が発表する情報をご確認ください。

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止まらぬ「オミクロン株」感染拡大

さまざまな研究から明らかになりつつある、オミクロン株の実態について解説したい。決して安心してはならない内容だ。

日本でもオミクロン株の感染拡大が止まらない状況になっている。1月19日には感染者は東京では7,000人を突破し、全国でも4万人を越えた。感染の拡大スピードはデルタ株と比べても格段に速く、いまの状態が続くと全国の感染者数が10万人を越えるのも時間の問題と見られている((編注:原稿執筆時点2022年1月20日)。

このような状況に対処するため、19日に政府は「まん延防止処置」を発令した。適用地域は13都県に及ぶ。これに大阪や京都などの関西圏が後に追加されると思われるので、実際の適用地域はもっと拡大するはずだ。

期間は今月の21日から来月の13日までとなっているが、社会行動の制限や店舗などの営業規制など具体的な中身は各都府県に任せられている。今回は、酒類の提供規制は考えていない自治体が多いようだ。

危機感が薄い?「インフルエンザ程度」と見られているオミクロン株

オミクロン株は、ワクチンの抗体を回避して感染する可能性が高い。

だが、オミクロン株の予想を越えた急拡大にかかわらず、人々の危機感は薄い。マスクの着用は定着したものの、デルタ株の第5波のときと比べ、社会的行動を規制するものはあまりいない。都市の繁華街は、コロナのパンデミックが始まる前の2019年頃の状態に戻りつつある。

このように、人々の危機感が薄い理由は、重症化リスクがかなり低く、致死率も相当に低いというオミクロン株の特徴にある。オミクロン株への置き換わりが早く進んだ英国の「健康安全保障庁」の2021年末の報告では、デルタ株に比べ、オミクロン株への感染では病院を受診するリスクは半分程度、入院するリスクは3分の1程度だという。

入院リスクなどが低い理由はまだわからない。オミクロン株が弱毒化している可能性もあれば、ワクチン接種や感染によって新型コロナウイルスに対する一定の免疫を持つ人が増えたためだという可能性も指摘されている。また、オミクロン株への感染者がもともと重症化しにくい若い世代に多いからなのかもしれないとも言われている。

また、デルタ株に比べると、オミクロン株に感染したときの症状はかなり軽い。感染後6日目の鼻腔や肺のウイルス量は、オミクロン株ではデルタ株などの100分の1だった。さらにオミクロン株に感染した患者では、デルタ株などへの感染に比べ、熱と咳き、喉の痛み、頭痛、全身の倦怠感が中心で、重症化のリスク要因である肺炎はあまり起きていない。発熱は、だいたい3日程度で回復する事例が多いとされている。

Next: オミクロン株は季節性インフルエンザか?海外研究でわかってきたこと



オミクロン株は季節性インフルエンザか?

感染しても軽症で終わることの多いオミクロン株のこのような特徴から、これは季節性のインフルエンザのような株であり、2020年3月から続く新型コロナウイルスのパンデミックが終了する最初の兆候かもしれないという楽観的な見通しも広まっている。

また、オミクロン株の感染が始まった南アフリカや、爆発的に感染が拡大したイギリスでは、感染の拡大がピークアウトし、次第に沈静化しつつある。このような情報から、オミクロン株は怖くないというイメージも広まっている。

しかし、実際に調べると、季節性インフルエンザとオミクロン株との間には顕著な違いがあることが分かる。オミクロン株は季節性インフルエンザよりもはるかに危険なウイルスである。

以下は、それぞれのウイルスで1人が感染させる人数、そして10万人当たりの死亡率を比較したものだ。

1)感染力
・インフルエンザ:1人が1.3人に感染
・オミクロン株:1人が20〜36人に感染

2)死亡率
・インフルエンザ:10万人あたり1.8人の死亡
・オミクロン株:10万人あたり23.1人の死亡

この数値を見ると、オミクロン株は季節性インフルエンザとはかなり異なっていることが分かる。感染力でインフルエンザの15倍から28倍、10万人当たりの死亡者数では、インフルエンザの12倍である。

オミクロン株は、インフルエンザ程度のものではない。危険性ははるかに高いと判断したほうがよい。

気になる南アフリカの死亡者数

ところで、オミクロン株の特性については分かっていないことが多い。

いま世界各国の専門機関で集中的に研究されているので、これからこのウィルスについてはもっと多くのことが分かってくるはずだ。

そうしたなか、オミクロン株の流行がピークアウトした可能性が高い南アフリカで、気になる数値が発表になっている。「南アフリカ産業科学研究会議(CSIR)」の上級研究員、リドワーン・スリマン博士は、南アフリカでのオミクロン急増の数週間後に死亡率が上昇している事実をツイッターで報告した。以下がその内容である。

ここでは、オミクロン株の感染者の状況を5つの項目のデータで示している。

・感染者数:-34%
・検査数 :-4%
・陽性率:-14%
・入院者数:-17%
・死亡者数:+36%

南アフリカはオミクロン株の蔓延がピークアウトしたと言われている通り、感染者数や入院患者数は大きく減少している。

ところが、それにもかかわらず死亡者数は逆に増加しているのだ。いったいこれはなにを意味するのだろうか?

Next: なぜ感染者数が減っているのに死亡率は上昇?気になるデータ



「ACE2受容体」とは異なる「ヘパラン硫酸」

南アフリカで感染者数は減少しているにもかかわらず、なぜオミクロン株の死亡者が増大しているのか、そのはっきりした理由は分からない。感染者の多くが重症化リスクの高い高齢者だったからなのか、または南アフリカ独自の理由もあるのかもしれない。

しかし、最近の研究でオミクロン株に独自な特徴も発見されており、それが死亡者数の増大にかかわっている可能性も指摘されている。

それは、オミクロン株が人間の宿主細胞に進入するための経路である「受容体」の種類が、オミクロン株では異なっているようなのだ。

周知のように、デルタ株までのコロナウイルスはウイルスの表面の「スパイク蛋白質」が、人体のなかにある宿主細胞の「ACE2受容体」と結合することで感染した。ウイルスが細胞の中に侵入し遺伝物質を注入すると、正常な細胞はウイルス細胞に侵され、増殖する。こうした「ACE2受容体」は、消化管、腎臓、心臓、血管などに広く分布しているものの、肺に集中的に存在している。この結果、コロナウイルスは主に肺に侵入し、重度の肺炎を引き起こした。

だが、「ベルリン自由大学」と「マックス・プランク研究所」のドイツの研究者たちによる新しい研究で、オミクロン株は「ヘパラン硫酸」を含む様々な「細胞性ポリアニオン受容体」を利用して、宿主細胞に結合することができるという驚くべき結果が出た。

筆者は医療分野の専門家ではないので、詳しい解説はできない。要点のみの指摘に止める。「ヘパラン硫酸」とはすべての動物組織に見られる線状多糖類のことだ。それは、動脈組織,白血球,脳,腎臓,肝臓などに広く見いだされる。これはどういうことかというと、オミクロン株のウイルスがこれを受容体にして宿主細胞に侵入するのであれば、肺のみならず広い範囲の臓器に問題が起こる可能性を示唆している。

過去の研究では、「ヘパラン硫酸」のような受容体に結合することによって、ウイルスが様々な長期的な医学的問題を引き起こすことが既に示されているようだ。「ヘパラン硫酸」は様々な細胞プロセスや経路に重要であるためだ。

この研究結果を紹介した医療専門サイト、「タイランド・メディカルニュース」によると、最初は無症状か軽い症状しかなかったにもかかわらず、数週間後、数ヶ月後にオミクロン株に感染した人々にさらに心配な病状が生じてくる可能性があるとしている。

これらの新しい病状の多くは、脳卒中、心不全、脳静脈洞血栓症(CVST)、急性腎障害、脳や中枢神経系の障害、肝臓障害、胃腸の問題による癌や敗血症、免疫システムの調節障害による二次的日和見感染、免疫不全などではないかという。

Next: オミクロン株の後遺症なのか?発症例が増えている病気とは



「脳静脈洞血栓症(CVST)」の増加

オミクロン株の症状と関係があるかどうかはっきりとはしないが、気になる情報がある。

「タイランド・メディカルニュース」などによると、「脳静脈洞血栓症(CVST)」と診断され入院するケースが急増しているのだ。これにはコロナが陽性であっても、症状が軽かったり無症状であったりする人もいれば、オミクロン株の感染が確認された人もいる。

ちなみに「静脈洞血栓症」とは、静脈洞が血栓で閉塞することにより、血液が頭蓋外に出て行きにくくなる病気だ。

脳には静脈洞という特殊な構造をした静脈系がある。静脈洞は脳の中を灌流してきた血液が、頭蓋から出ていく前に、最後に集まってくるところだ。頭蓋外へ出ていく血液の主な出口である。ここが血栓で詰まり、血液が流れなくなる。その結果、頭蓋内圧亢進、静脈性脳梗塞、脳出血、けいれんなどを起こす。患者の多くは頭痛を訴え、なかには頭がぼーっとしたり、初期段階で目の奥が痛くなったりする人もいる。

「静脈洞血栓症」は、コロナウイルスのワクチンの副反応としてまれに報告されている。その意味では、オミクロン株の蔓延拡大にとともにワクチン接種が進んでいるので、その結果として患者数が増えているとも考えられる。しかし発症の増加は、2021年11月のオミクロン株の発生と同時期に始まり、イギリス、ドイツ、そしてアメリカ、シンガポール、タイで発症の増加が確認されている。

いまのところ、「静脈洞血栓症」の増加にオミクロン株の蔓延がかかわっているのかどうかは分からない。しかし「静脈洞血栓症」は、「ACE2」ではなく「ヘパラン硫酸」を受容体として宿主細胞に侵入するオミクロン株で、発症の可能性が疑われる病気である。念のためでも、注意したほうがよいだろう。

次の変異株はアジアから現れる?

このように見るとオミクロン株は、インフルエンザのようなものなので、怖がる必要はないなどと決して安心してはならない。

感染から回復しても長期的な影響が残る可能性だってあるかもしれない。とにかく、マスクをきちんと着用し、適切なソーシャルディスタンスを維持し、過度な社交的活動は制限したほうが無難だろう。

そのようななか、新たな変異株が出現する可能性を示唆する情報もある。インドネシアの研究によると、次の致命的な変異株は、インドネシア、フィリピン、タイ、ミャンマー、カンボジアのいずれかの国から発生する可能性が極めて高いというのだ。

これら東南アジアの国々は、ワクチン接種率がまだ低く、中国製ワクチンやアデノウイルスベクターベースのワクチンなど様々なワクチンが混在し、ゲノム解読やモニタリングが不十分で、HIV、ヘルペス、HPV、結核、デング、マラリアなど他のウイルス・細菌感染も現地住民の間で高率であることから、コロナの新たな変異株が現れる可能性は極めて高いという。

さらに悪いことに、これらの国の郊外では、人々があらゆる種類の野生動物を取引し、食べており、特定の野生生物との距離が近いことも心配される。また、これらの国にはコウモリが多く生息しており、その他にも様々な野生動物もおり、地元の人たちはそれらを食用としている。

Next: 「コロナが季節性インフルエンザ程度になるとはいまのところ言えない」



「コロナが季節性インフルエンザ程度になるとはいまのところ言えない」

すでにこれらの国の多くでは、オミクロン株の他に2種類以上の変異株が流通している。

例えば、インドネシアでは「B.1.470」と「B.1.466.2」という2つのローカルな変異株が存在している。これらの変異株が、感染力が強く、免疫回避が高く、毒性が強い株である可能性もあるという。

インドネシアのタンゲランにある「スイス・ドイツ大学」の研究者たちは、インドネシアで分離されたさまざまな変異型の全ゲノム配列決定を含む新しい研究で、これらの変異型の遺伝子に複数の変異が起きていることを発見した。研究者はこれらの変異が、ウイルスの特性に変化をもたらし、場合によってはワクチンの効果や疾患の重症度に影響を与える可能性があることを憂慮している。

同研究チームによると、2021年11月末現在、インドネシアで確認された変異は、デルタ株の変異が5348例、アルファ株が78例、ベータ株が22例、インドネシアのローカル変異株の「B.1.466.2」の変異が1833例あることが判明した。

もちろん、発見されたこれらの変異株がすべて蔓延するわけではない。多くは増殖のエラーが蓄積し、自己崩壊してしまうものがほとんどだ。しかし、こうしたものの中から、オミクロン株に代わって新たなパンデミックを引き起こす変異株が出現しないとも限らない。

このような状況を見ると、将来コロナが季節性インフルエンザ程度になるとはいまのところ言える状況にはない。

当分の間は注意して生活するべきだろう。気になる新しい情報があれば、このメルマガですぐに紹介する。

これは日本ではまったく報道されていない事実だが、今後の大変な火種になるはずだ。

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