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2万5000円の「底」へ向かう日経平均。“動けない日銀“ほか3つの波乱材料の着地点は?=馬渕治好

日米等主要国の株価は、3月頃までに一段の下落を示すだろう。具体的な下値めどは、日経平均は2万5,000円、ニューヨークダウは3万ドル、米ドル円相場は1ドル100円程度を想定している。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2022年2月13日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。

馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」2022/02/13号より

過ぎし花~先週(2/7~2/11)の世界経済・市場を振り返って

<先週も、想定以上の株価リバウンドのあと、市場は波乱>

先々週に続いて、先週も、世界の株価は想定以上にリバウンドし上昇したあと、週末にかけて崩れ、波乱模様となりました。

波乱をもたらしたのは、米CPIの高騰、連銀地区連銀総裁のタカ派発言、ロシアのウクライナ侵攻の観測でした。こうした材料を受けて米国株価が下落する一方、米10年国債利回りは一時跳ね上がりましたが、週末にかけてやや低下しました。今後も米国では、短中期金利が上がりながらも、長期金利は頭が重い展開、ないし小幅低下するものと見込みます。

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来たる花~今週(2/14~2/18)の世界経済・市場の動きについて

<市場は上にも下にも荒れ続け、方向感を見出しにくいだろう>

(まとめ)
今週は、日米のマクロ経済統計など、材料はあります。そのなかでは、2/15(火)の1月の米PPI(生産者物価指数)が注目されるでしょうが、よほど極端に強い数値にならない限り、先週のCPIで市場は「予行演習」していますので、PPIのデータを受けて波乱に陥る、という展開にはなりにくいと考えます。

ただし、株式市場のみならず、米債券市場や外貨市場も含め、投資家が方向感を失い、ちょっとしたことで(場合によっては材料がなくとも)売りに買いにと右往左往しそうで、市場は荒れ続けるものと懸念します。

(詳細解説)
今週は、日米のマクロ経済統計など、材料はあります。

日本では、2/15(火)に10~12月期のGDP統計、2/17(木)に1月の貿易統計などが、公表予定です。また、12月までの企業決算発表が、週前半に残っています。

米国では(以下、米国のマクロ経済統計については、すべて1月分)、2/16(水)に小売売上高、鉱工業生産、2/17(木)に住宅着工件数、2/18(金)に中古住宅販売件数が、発表されます。

それ以上に注目されそうなのは、2/15(火)に公表予定のPPI(生産者物価指数)でしょう。前年比は、12月の9.7%上昇から1月は8.9%上昇へと、鈍化すると予想されています。また、予想外に伸びを高めたとしても、市場はインフレ懸念については先週のCPIで「予行演習」していますので、PPIが大きく株価などを落とし込むとは想定しがたいです。

ただ、最近は、株式市場のみならず、米債券市場も外為市場も、大きく上下に変動が続いており、多くの投資家が方向感を失っていると推察されます。ポジションも傷んでいる場合が多いでしょう。そのため、ちょっとした材料に驚いてあたふたと売買する、何も好材料がないのに底値と見て買う、悪材料がないのに売り急ぐなど、混乱が続きそうです。

最終的には3月頃とみる底値のタイミングに向けて、主要国の株価も外貨相場ももう一押しすると予想していますが、その軌道は全く一直線ではなさそうです。

Next: 波乱相場に飲まれるな。先週の市場動向から見出せる3つのこと



盛りの花~世界経済・市場の注目点

<先週の市場動向から見出せる3つのこと>

先週の市場動向を様々に振り返ると、以下の3つの点を注目すべきだと考えます。

1つ目は、すでに述べましたが、市場の上下動が激しく、今後も激しいと懸念されることです。
特にこうした荒れる相場では、短期的な相場の動きを予測することは、無理です(荒れない相場でも短期変動を見通すことは無理ですが)。筆者にもまったくわかりません。

こうした環境下(に限りませんが)では、レバレッジ(次の「理解の種」もご覧ください)をかけた、少しの市況変動で大きな損益が発生する取引は、儲けることは不可能だとは言いませんが、かなり難しいです。なぜなら、市況の理不尽でかつ日常茶飯事な振れで、損失があっという間に膨らむことがありうるからです。

レバレッジをかけて、短期的に手っ取り早く大儲けしよう、という投資手法は、今後もお財布に厳しいだけではなく、精神的にも厳しいものとなる恐れが強いです。

もちろん、投資は、自身ですべての損益を引き受ける(自己責任を取る)限り、何をやるのも自由です(法律などを犯さないという前提で)。したがって、筆者が「レバレッジをかけた取引をやってはいけない」などと言える筋合いはありません。ただ、そうした取引に対し、筆者がアドバイスできることは、何もありません。幸運を祈るばかりです。

2つ目は、悪材料が多い割には、株式市況が意外と堅調なことです。先々週も先週も、目立った悪材料がない局面では、主要国の株価指数はしっかりと上に向かっていました。

また、「過ぎし花」で述べたように、1月の米CPIが2/10(木)に公表された際は、直後こそ下落したものの、その後に一時ザラ場で前日比プラスに転じました。CPI急騰という一撃では、米株価はそれほど崩れなかったわけです。米株価がようやく膝を屈したのは、同日にブラード総裁のタカ派発言という、第二撃をくらってからでした。かなり粘り強い株価動向だと解釈できるでしょう。

その株価の粘り強さの背景は、(メタの減益決算などは先々週にありましたが)足元の企業業績が総じては堅調だからでしょう。

とすれば、主要国の株価指数の、3月に向けてのもう一押しを、欲張るべきではないのでしょう。日経平均は、3月「頃」に2万5,000円「前後」に下押しすると予想していますが、そうなるかどうか、わかったものではありません。売りで儲ける局面は、せいぜい年初の2万9,000円台からの下落局面であって、今からでは遅いです。新規で売りから入り、大いに儲けよう、というのは、もうあきらめた方が良いのではないでしょうか。

むしろ、すでに相場下落で収益が膨らむポジションを構築しており、それで利益が出ているのであれば、どのあたりで手仕舞い勝ち逃げするかを、ゆっくりと検討し始めるべき時期だと考えます。2万5,000円近辺まで必ず下がると信じ込み、レバレッジを大いにかけた取引で尻尾までもっともっと儲けようと欲にとらわれ、いつまでも売りポジションを引っ張り続けると、たとえば2万5,000円より手前で市況が急反転し、損失を被る、という結末も否定できないと思います。

逆に、そろそろ、底値の「辺り」で何を買おうかと、楽しみながら研究し、ゆっくりと買いためていく時期に入り始めているのではないでしょうか。どうせ底値では一気に買えません。そうして研究する時間を、のんびりと楽しんでください。投資は苦しむのではなく、楽しむことが大切です。

投資していて苦しくて辛いのなら、それは元々のやり方自体が間違っている可能性が高いです(見通しを誤ったとか、そういうことではないです)。その間違いの多くは、たいがい手っ取り早く大儲けしたい、もっともっと儲けたいという、自身の欲に起因します。欲に潰されてしまう人はとても多いです。最大の敵は、他の誰でもなく、市場でもなく、自分自身です。

Next: 「動けない日銀」が株式市場をさらに乱す?



3つ目の注目点は、日銀の金融政策と、それが意味するところです。

前号のメールマガジンの「盛りの花」(「動けない日銀」が今後材料視されそう)では、欧米主要国の中央銀行はインフレ対応のための緩和縮小に動けるが、日本では経済が構造的な脆弱さを抱えており、日銀の金融政策は行き詰って動きが取れないだろう、と解説しました。そして「海外投資家の目が、現在の金融政策についての内外格差を契機に、日本経済の体たらくに向かえば、一段と日本株を買いたいとは考えないでしょう」と書きました。

実際、日銀は、2/14(月)に10年国債を0.25%で無制限に買い取る(利回りの0.25%超えを容認しない)と、先週2/10(火)に通知しました。現状の金融緩和政策(10年国債利回りをプラスマイナス0.25%の間に抑え込む)を一切変えない、との姿勢が明らかになりました。

こうして「利上げすらできない情けない日本」との見解が海外に広がると、当面は日米株価格差が広がりそうです。

3月頃の下値めどとして、日経平均は2万5,000円前後、ニューヨークダウは3万ドル前後を見込んでいますが、その「前後」で前と後のどちらの可能性が高いと考えているかをあえて述べれば、ニューヨークダウは3万ドルまで下落しない展開がありそうだと予想しますが、日経平均は2万5,000円を割り込むことがありそうだと見込みます。

株価ではなく、米ドル円相場については、本来は「情けない日本」との見解が広がれば、円安をもたらすはずです。米ドル円相場は、2/10(水)の米CPI発表時に一時116.30円近辺まで円安が進みました。この背景として、米国でのインフレ→米金利上昇→日米金利差から米ドル高・円安、という面もあったでしょうが、「日本売りによる円安」といった要因も強かったと考えます。

ところが2/11(金)にかけて、米ドル円相場は急速に円高方向に振れ戻り、一時115円ちょうど辺りまで下押ししました。これは、米株価が2日連続で下落色を強めたため、「リスク回避のための円高」が進んだためでしょう。

今後も、「日本がダメだから円安」と「世界株価がダメだから円高」ががっぷり四つに組み、米ドル円相場は方向感なく上下動をしばらく繰り返すものと予想します(最終的には、世界株価の下落がもう一段進展し、投資家のリスク回避的な姿勢が一層強まると考えるため、円高が勝ると見込みます)。

米ドル/円はどう動く?

なお、今後の米ドル円相場についての別の注目点を挙げると、日本の金融機関などの米債投資が、債券価格下落により、かなりの損失を抱えていると懸念されることです。3月決算期末を意識して、損失確定の売りが嵩むことがありえます。

とは言っても、満期まで保有する目的であれば簿価のまま計上すればよいので、売買に動かない金融機関も多いでしょう。また、手持ちの米ドルを米債購入に充てることも(特に大手銀行などでは)多いため、米債を投げ売りしても、その米ドルをそのまま保有しておく場合もあります。

また、円資金から米債を購入した場合でも、その際同時に為替先物でヘッジしている(現物で米ドルを買って米債に投じるのと同時に、先物で米ドルを売る)こともあり、すると米債売却時に米ドルから円に換えると同時に先物の米ドルを買い戻すので、為替には中立です。

このため、3月期末を意識した日本の金融機関の動きが、必ずしも円高を引き起こすわけではありませんが、市場で動向が注目される可能性はあります。

Next: 3月に2万5,000円割れも?中長期シナリオ結論



中長期シナリオ結論(2022/1/30時点)

<2022年3月辺りまでのシナリオ>

2022年の世界市場については、3月辺りにかけて、もう一段、株価や外貨相場の下押しを見込む。その主要な要因は、米国の金融政策が企業や投資家に与える影響と、「中国リスク」だ。

米連銀は11月からテーパリング(量的緩和縮小)を開始し、来年1月から縮小を加速することも決定した。利上げ開始の時期も、当初想定より早く、2022年3月の可能性が高まっている。

米マクロ経済が好調だからこそ緩和を縮小するわけであり、また緩和脱却は、一気にではなく、段階を踏んでいこう。そのため、本来は、緩和縮小は大きな波乱要因にはならないはずだ。

しかし、米国の企業や投資家、市場はこれまであまりにも金融緩和に依存してきたため、金融政策の修正が大きな波乱を引き起こす恐れがある。

そうした波乱とは、具体的には以下を想定している。

1. 脆弱な米国内産業・企業の資金繰り破綻、
2. 米国における、社債の発行市場の好調さに依存した企業の資金調達の変調と、それが自社株買いの減退につながる恐れ、
3. 世界的に、低金利による運用難でリスクをとっていた投資家が、長短金利の上昇でリスク資産(株式等)から一気に利回り物に資金を移動する可能性と、それを材料にした株式売りなどが嵩む展開、
4. 株式の信用取引や、ジャンク債(格付けの低い債券)、その他高リスク取引を拡大していた投資家の破綻、
5. 米ドルに依存してきた新興国の苦境(米ドル建て債務の借り換えの困難化、米ドル高・自国通貨安を防衛するための望まない利上げなど)、

また、中国の様々なリスクは、2022年に噴出しよう。そうしたリスクとは以下などだ。

1. 中国経済の減速
2. 米中対立の深刻化(安全保障面の衝突を含む)
3. 中国政府による突然の産業政策の変更(IT、不動産、株式投資、教育産業など)と、それを嫌った世界の投資家による中国市場からの逃避
4. 中国企業の巨額の債務問題

加えて、先進国経済や企業収益が、回復基調にはありながらも既に回復の勢いが衰え始めていること、物流などの人手不足が輸送コストの上昇や品不足を招く可能性、欧州でEU(欧州連合)の求心力に陰りが出ていることなど、不安材料は極めて多い。

このため、日米等主要国の株価は、3月頃までに一段の下落を示すだろう。具体的な下値めどは、日経平均は2万5,000円、ニューヨークダウは3万ドル、米ドル円相場は1ドル100円程度を想定している。ただしこれは大まかなめどに過ぎず、実際の下値はこの予想数値からかなりずれることがありうる。

<2022年3月以降>

2022年3月辺りまでに、世界市場の波乱が一巡すれば、それ以降、長期的には、主要国の株高・外貨高基調に復すると予想している。その要因として最も大きいのは、世界的な景気拡大の持続だ。それを支えるのは、新興諸国を中心とした人口増であり、技術革新、新商品・サービスの開発だろう。
加えて、2022年の市場の波乱が実体経済に著しい悪影響を与えると判断されれば、米連銀が緩和縮小の中止、あるいは再緩和を打ち出す展開もありえよう。
個別に見れば、2022年の波乱という試練をくぐり抜け生き残ることができた企業や投資家は、強いものだろう(弱者の淘汰)。そうして生き残った企業や投資家が、先行きの経済や市場を支えていこう。
2022年末時点の見通し数値としては、日経平均が3万2,000円手前まで、ニューヨークダウが3万8. 000ドル手前まで、米ドル円相場が115円手前まで戻りうると考える。日米株価は、2021年の高値を2022年末までに抜き返すことができない場合でも、2023年の早いうちには高値を再奪回するものと予想する。

10年単位で展望し、株式等リスク資産を保有すべきだと考える。

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理解の種~世界経済・市場の用語などの解説:レバレッジ

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※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2022年2月13日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した項目もすぐ読めます。

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2022年2月16日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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