巨額の利益を生み出す大企業はさぞかし多くの税金を納めていると思われていますが、それは単なる思い込みです。実際には名だたる大企業ほど税制で優遇されており、税金を払っていません。(『神岡真司の人生逆転の心理術』)
※本記事は有料メルマガ『神岡真司の人生逆転の心理術』2022年2月21日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ビジネス心理研究家。日本心理パワー研究所主宰。法人対象のモチベーショントレーニング、組織活性コンサルティング、心のパワーアップセミナーなどで活躍。著書に『思い通りに人をあやつる 101の心理テクニック』(フォレスト出版)、『苦手な相手に勝つ実践切り返し術』、『必ず黙らせる「クレーム」切り返し術』(日本文芸社)、『効きすぎて中毒になる 最強の心理学』(すばる舎)など多数。
大企業はたくさん税金を払っている…という「思い込み」
さて、今回のテーマは「なぜ大企業ほど税金を払っていないのか?」です。
当メルマガが扱っている心理学とは一見関係ないテーマと思われるかもしれませんが、こうした「既存の思い込み」を打ち破るテーマにも、いろいろ取り組んでいきたいと思っています。
さて、私たちには世間の常識という「思い込み」があります。
これらは、「認知バイアス」という思考の傾向によって、生み出されたケースがままあります。
今回は、税金をたくさん払っているのは大企業――という思い込みが、あなたのヒューリスティックに組み込まれているため、それを打破し、思考の枠組み(フレーム)を修正する試みです。
人生や世の中を俯瞰(ふかん)する時、バイアスのかからない論理的なアルゴリズム思考を養っておくことはとても重要だからです。
それでは早速ご紹介していきましょう。
消費税率アップは「法人税」と「所得税」を下げるためだった
1989年度には19兆円あった日本企業全体の法人税収が、2019年度には11兆円にまで減っています。法人税収が減ったのは、法人税率をどんどん下げたからでした。
法人税率は、1980年代には43.3%でしたが、以降は世界的潮流に従って下げられ、現在は23.2%となっています。
法人にかかる税金は、法人税だけではありません。
他にも法人の所得金額に対して法人住民税、法人事業税がかかり、これらの総額の所得に対する割合を「実行税率」といい、法人税等の税負担率は2014年度の34.62%から毎年度下げられ、2017年には29.74%にまで下がりました。
大企業とマスメディアは、「日本の法人税の実効税率は世界と比べ高すぎる。これでは企業の競争力が殺がれ、産業の空洞化がすすむ」と訴え、政府もその意を汲んで実効税率を下げてきたのです。
また、所得税の累進構造も1970年代には最高税率が75%もあり、91年の税収では27兆円近くあったものの、今では最高税率が45%まで緩められ、直近では19兆円の税収です。
法人税も所得税も、税率を下げて大企業や富裕層に手厚い優遇をしてきたのですから、税収が減るのも当然なのです。
慢性的な財政赤字の日本では、1989年4月に3%の消費税を導入し、結局法人税収や所得税収の減った分を、消費税率を5%、8%、10%と上げることで消費税収は20兆円まで増やしたものの、消費税率アップのたびに消費を鈍らせ、景気を押し下げました。
実際、一般会計の税収全体は、消費税導入翌年の1990年度に過去最高の60兆円を記録後、2018年度に60兆円超えに戻ってくるまで長く低迷してきたのです(消費税増税分の8割が所得税減税分と法人税減税分と見合う)。
Next: データでわかる大企業ほど税負担が軽い現実
大企業の「儲けの蓄積」は膨大なものになっている
この結果、国民は負担の増加で貧乏になる一方でした。
反対に資本金10億円以上の大企業は、2011年以降連続で内部留保額を増やし、その額は2018年度には463兆円にも達し、21年3月には484兆円にまで膨らんでいます。
内部留保とは、企業の純利益から税金や配当、役員賞与などを引いた残りで、利益剰余金や利益準備金と呼ばれるもので、いわば「企業の儲けの蓄積」です。
アベノミクスの円安誘導もあって輸出大企業ほど利益を積み上げてきたのです。
大企業ほど「税負担」が軽くなっている
先に法人税等の税負担である実効税率は29.74%と紹介しましたが、驚くことに大企業ほど、この実効税率よりもはるかに税負担は軽いのです。
まずは古いデータから見ておきましょう。
法人税率がまだ30%だった頃、国税庁が発表した「平成22年度(2010)会社標本調査」があります。
これによれば各種の税制優遇措置を経たのちの法人税等の負担率は、資本金1億円未満の中小企業が25.5%、資本金1億円以上10億円未満の中堅企業が27.6%、資本金10億円以上の大企業が19.6%という有様だったのです。
当時の法人税等の実効税率は、39.54%でしたから、大企業の実際の税負担率は実効税率の半分程度にすぎなかったわけで、中小企業や中堅企業が、大企業よりもはるかに重い税負担率だったのです。
最新のデータではどうでしょうか。
東洋経済オンラインが2019年11月に発表した「税負担の少ない大企業ランキング200」によれば、売上高1,000億円以上の直近本決算(2018年10月期~2019年9月期)から算出した法人税等の税負担率では、10%に満たない大企業が14社あり、10%台の大企業が54社、20%から25%未満の大企業が92社もあり、ランキング200位の大企業でさえ26.2%の税負担率に過ぎないのでした。
このランキングには名だたる大企業が並んでいるのですが、大企業ほど税金を少ししか払っていない実情が驚くほどに見えてくるのです。
Next: 大企業による政権への「政治献金」が諸悪の根源だった?
大企業による政権への「政治献金」が諸悪の根源だった?
なぜ、大企業ほど税負担が軽くなるかは、各種の減税優遇措置が、大企業だからこそ効果的に働くからなのです。
例えば次のような優遇措置が挙げられるでしょう。
・「連結納税制度による所得金額の軽減措置」…100%出資子会社は黒字と赤字相殺可能
・「受取配当金の所得不算入」…他社からの株式配当を決算に反映しても所得から除外可能
・「外国子会社配当金の益金不算入」…外国子会社の配当の95%までは所得不算入可能
・「所得税額控除」…配当収入に所得税が課せられていれば法人税からの控除が可能
・「研究開発費の税額控除」…研究開発経費総額の15%まで法人税からの控除が可能
こうした控除の活用で、大企業は10兆円近い税金カットの恩恵を受けています。
大企業ばかりが優遇されるのは、政権与党への「政治献金」が効いています。政党助成金導入時に廃止されるはずだった「企業献金」が存続するため、政策は大企業有利に歪められるのです。
従業員の給与が上がらず、賃金の低い非正規雇用ばかりを増やし(全雇用者の4割に及ぶ)、大企業の法人税や富裕層の所得の累進構造が、優遇されて減税されてきたのが、今日の日本の姿なのです。
私たちは、選挙で声を上げて、こうした現実を正常な姿に変えていくよりないでしょう。
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『神岡真司の人生逆転の心理術』(2022年2月21日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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