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ドル円「乱高下」も4月中旬までは122円台で継続か。不確実性に包まれるウクライナ情勢とインフレ見通し=脇田栄一

日銀の無制限オペによって為替市場は一時ボラ高になった。これは「わかりきったことなのに急騰しすぎ」「継続しない」といったことであり、現在は反動からの下げ幅であるが、それでも米短期金利はプライムレートを超えている。この先、為替相場とインフレはどこへ向かうのか?

プロフィール:脇田栄一(わきた えいいち)
FRBウォッチャー、レポートストラテジスト。1973年生、福岡県出身。個人投資家を経て東京都内の大手株式ファンドでトレードを指南。本来は企業業績を中心とした分析を行っていたが、08年のリーマンショックを経験し、マクロ経済、先進国中央銀行の金融政策の影響力を痛感。その後、FRBやECBの金融政策を先読み・分析し、マーケット情報をレポートで提供するといった業態を確立。2011年にeリサーチ&コンサルティング(現eリサーチ&インベストメント)を起業。顧客は機関、個人投資家、輸出入企業と幅広い。

予定どおりの為替市場「ボラ高」

日銀の無制限オペによって為替市場は一時ボラ高になったわけですが、これは以前からお伝えしていた、さらには制度化されているものなので長期金利をみていれば実施されることは予想されていたわけです(今後もそう)。

125円まで急騰したことはそういう意味で逆に驚いた、というか投機的要素を考えれば驚かない?わけですが、常日頃からこれら要素が頭に入っている人は皆そんな感覚だったんじゃーなかろうか。

※参考:「輸入インフレ」を助長する日銀YCC上限死守について雑感 – ニューノーマルの理 (ことわり) Powered by Ameba(2022年2月11日配信)

日銀は他国の金利を見ている

日銀はイールドカーブの数値目標を出していて、当座預金3層構造の付利についても変更することはないので、それを基本ベースにどこを観るかといえば、結局は他国の金利(利回り)なんですよね。

ユーロ圏に英国、米国は利上げ方向、日本は違う。もうこれだけで(現時点の方向が継続する限り)紆余曲折はあれども円安方向、円独歩安と捉えてもおかしくないわけです。冒頭の驚いた(125円)というのは意味が違うわけですが。

で、金利といえば短期金利、世界的なインフレ退治のツールとして引き上げ方向となっているわけですが、そのインフレ要因は供給制約で、出発点は世界的なコロナ規制。そこに今回ロシア侵攻が加わった。

コロナ規制は欧米で解除され、ワクチンマンデート(接種義務化)に関しては、米連邦最高裁がバイデン政権の訴えを退けた

これら2つの要素は高インフレを抑制する追い風になったが、ロシアの侵攻によってエネルギーやレアメタル調達問題がインフレに影を落としている状態、ここはまだ見通しが誰もできない。

Next: 停戦交渉は本当に進んでいるのか?報道に振り回される相場



停戦交渉は本当に進んでいるのか?

停戦交渉が進んでいるとの報道だが、形だけを整えるロシア、というか肝心のプーチンのウクライナに対する意向はまったく聞こえてこない。彼は現在も融和的でなくゼレンスキーの声を聞き流しているだけだろう。

現実問題として直視すべき報道は悪材料が多い。
※参考:アブラモビッチ氏とウクライナ交渉団に毒物か 関係筋明かす – AFPBB News(2022年3月29日配信)

第一、プーチンにとってそのような合意や協定は、形式破りの彼を縛るものではないので、周りがどう報道、または議論しようとも彼が出てこない限り、彼が決めることになる。

反戦デモや世論、経済制裁ですらプーチンを縛らない、というかテクニカルデフォルトですらもともと織り込み済みといわれていた。

結局は彼の周囲、とくに身近なところで何が起こっているか。和平か破滅か、そしてインフレかディスインフレかは、そこと結びついており、日々目にする報道や議論は無駄なもので溢れかえっている(ほとんどの人たちがそう思っていると願いたい)。

コモディティは軟化の兆候

ただ、エネルギー含むコモディティは、欧米の中銀が流動性を低くすれば、今がそうであるように一定程度は軟化する。

市場の流動性も低下の兆候が見られており、原油先物価格含むCRB指数は300超で頭打ち、パラジウムやネオンなども市場価格自体は軟化、抑制されている(価格低下が実際の調達問題を解決するわけではないが)。

追記(2022‐3‐30 21:10)

冒頭がわかりにくい、という指摘ありましたので語弊なきよう、というか名誉のために付け加えておくと、先週通して、私が運営するeリサーチ発行の公式リポートでは「徐々に円安、一旦124をつけたのちは4月2週あたりまで123弱継続(122円後半)が基本シナリオ」としていた。

当然ながら米国における各年限の利回り、そして政策金利を挟み込む金利政策。それらを照合させたうえで上振れ・下振れを見極めたもの。

122円後半の段階で、金融当局による50bp引き上げ発言を織り込む動きが若干入っていると。よって4月3週‐3週明け(20日前)には25bp or 50bpが明確になるので(自分の中では)、前者であれば123前後継続、後者であれば短期の利回りに伸びしろあり、さらに伸びる、としていた。

そのうえで、日本の10年債利回りが上昇しているので「日銀のオペ発動後に若干の警戒感」ということも多々補足的にお伝えしていた(ここは2月はじめに日銀が強い発信をしていたので)。

簡素にいえば、「わかりきったことなのに急騰しすぎ」「継続しない」といったことであり現在は反動から下げ幅あり、それでも米短期金利はプライムレートを超えている。ドル円に関しこのあたりはリポートとの兼ね合いあり、普段あまり言えないんですよね、お察しいただければ。でも大まかにはわかるかな、と。

ちなみにユーロ圏の利上げも話題になっているが、これについては政策金利ではなく、預金ファシリティ金利の引き上げが重要になる。

旧Eoniaと取って代わったESTER、またはESTERレート(若しくはただ単純にESTR)とよばれるユーロ圏のオーバーナイト銀行間平均金利を誘導するのがこの預金ファシリティ金利であり、ユーロ相場は実質的にこれに左右されることになる。ここの引き上げは10bpずつで、引き上げが実現すれば‐0.50%から‐0.40%になる(と想定)。政策金利を引き下げた時のように5bpずつ、ということはない。なぜならユーロ圏の利下げ局面では利下げバッファーが残っていなかったからである。

なぜ追記のみ新たに更新しないのか?テクニカルな話では目立ちたくないので。

image by:Asatur Yesayants / Shutterstock.com

本記事は脇田栄一氏のブログ「ニューノーマルの理(ことわり)」からの提供記事です。
※タイトル・リード・見出しはMONEY VOICE編集部による

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