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「空き家」相続は突然に。“負の財産”にしないための4つの選択肢と対処法=牧野寿和

高齢化が進む日本社会で、今後は「空き家」急増が懸念されています。もしあなたが空き家を所有することになったら、どのように対応するのが最適なのでしょうか?(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)

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プロフィール:牧野寿和(まきの ひさかず)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。

「空き家」対策の準備

人が住まずに放置されている「空き家」問題が取り沙汰されてからずいぶん経ちました。

戸建て住宅であれば、庭には雑草が生い茂り、家屋にも出入り自由の無法地帯になりかねません。また近隣に住んでいる人には、防火・防犯面で不安を煽り、時には野良ネコの住処になり衛生の面でも迷惑をかけかねません。

しかし、住む人がいなくなった「空き家」でも、持ち主はいます。

そこで、今回は「空き家」の持ち主になりそうになったら、近所の人に迷惑をかけないために、どのように準備して対応すればいいのかについて考えてみます。

「負の遺産」を相続してしまうケースも

「空き家」が生まれる原因のひとつに、親からの遺産分割で、実家を相続したケースがあります。

実家を相続した子どもが、すでにほかのところに持ち家があり、しかも、その住んでいるところが実家から離れた場所なら、頻繁に実家に来ることもできなくなり、管理が手薄になりかねません。

このケースは、子どもがひとりという状況だけに限りません。複数の子どもがいても、子どもたちにはそれぞれの家庭があり、おいそれと実家を相続できません。それにもかかわらず相続した、という事情も考えられます。

実家は、相続する子どもたちの親が、数十年間は生活をしていたところです。実家が「空き家」に急に生まれ変わるとは、なかなか考えづらいものがあります。

Next: 「空き家」を持っていると「お金」の負担はどれくらい?



空き家にかかるお金

「空き家」にもお金はかかります。

この費用は両親が亡くなった後の実家の場合、「空き家」を相続した人が支払う必要があります。また、相続する人が決まるまでは、共同の所有者として、その子ども全員が分割して支払うことになります。

具体的に空き家にかかるお金としては、まず、「固定資産税」や「都市計画税」があります。納税先の市町村・東京23区から、その子どもの代表者に納税通知が送付されるます。

また、実家が子どもの住んでいるところから、遠方であれば、「空き家」の実家を管理してもらう業者を雇う費用もかかります。

雑草や庭木の剪定(せんてい)のための費用も、別に必要になるでしょう。この費用は、防犯防火、公衆衛生の面でも、必要な費用です。

今後、その空き家に住む予定があれば、建物内の水道の配管が老化しないために、水道の契約を継続しておいたほうがよく、そのお金もかかるでしょう。

空き家になった実家の活用法

では、「空き家」になった実家をどのように活用すればいいのでしょう。

その活用法として、以下などが考えられます。

(1)親族が住む
(2)賃貸で貸す
(3)売却
(4)事業経営

順番に見ていきましょう。

<(1)親族が住む>

現在、子ども家族が住んでいるところを売却するか、賃貸住宅として貸すかして、実家に引っ越してきて住む場合です。

子ども家族ではなく、子どもの子ども、両親からしてみれば、孫や孫の家族が住むことも考えてもいいでしょう。

この場合は、実家が築古の住宅の場合は、リフォーム費用が必要になります。また、引っ越しの費用もいるでしょう。

しかし、引っ越して来る子ども家族が住んでいた家が、現在、住宅ローンの返済中であれば、通常その物件は賃貸には出せません。

まずは、その問題を解決することも必要です。住宅ローンを返済している金融機関などに事前に相談してみることが賢明です。

また、この子どもに兄弟姉妹がいた場合、相続の問題が発生しないように、事前に遺産分割の協議をして、兄弟姉妹のあいだで、両親からの相続の内容を、決めておくことも必要です。

この両親からの相続に関しては、次頁で解説する(2)から(4)の案でも大切なことです。

Next: どんな方法を選んでもお金はかかる。自分に合ったベストな対処法は?



<(2)賃貸で貸す>

「空き家」になった実家が

・鉄道の駅に近く交通の便がいい
・商業施設が近隣にある
・文教地区である

といった、戸建て住宅を借りる人の需要を満たす立地であれば、建物をリフォームして、戸建て賃貸住宅として貸すのもいいでしょう。

また、建物は解体して、土地を整地して、駐車場として貸すこともできます。

この場合は、次の項目「(3)売却」で、見ていきますが、建物の解体の費用や土地の費用などが、必要になります。

ただし、複数の子どもがいた場合、次の世代を考えると、上述の「(1)親族が住む」と同様に、リフォームや建物の解体といった費用を兄弟姉妹が共同で出し合い、みんなで貸主になることなく、兄弟姉妹のうち、実家を相続したひとりが、家主として貸すことが大切になります。

<(3)売却>

土地建物ごと売却して現金化もできます。

この場合、建物が築古の場合は、建物を解体して更地にして売却したほうが、高く売れることもあります。

相続する人が決まってから、売却するのであれば、解体費用は相続する人が支払い、売却して得たお金も相続した人のものです。

相続する人が決まる前に売却するのであれば、解体費用は兄弟姉妹全員で分担して支払い、売却して得たお金は、兄弟姉妹全員で分けます。

なお、解体費用は、その費用を知ることも必要です。しかし、売却をして得たお金が手元に入るまで支払いを待ってくれる業者もあるようです。

ここは、解体業者を決める前に、十分に打ち合わせをすることが重要です。

<(4)事業経営>

事業経営をすることもひとつの案です。

実家の土地を更地にして、例えば、コインランドリーやベーカリーといったお店を始める。

また、実家の建物を利用して、古民家風の喫茶店などを、始めることも考えることができます。

もちろん建物は、建て直してもいいでしょう。

事業経営をする場合は、上記の(1)から(3)とは違い、事業用の資金も必要になります。

Next: 「空き家」になったら、まずは専門業者に相談すること



専門業者に相談すること

上記の(1)から(4)以外の、「空き家」を活用する方法はあるでしょう。

「空き家」をどのように活用するにしても、その事業の専門の業者に相談することが、「空き家」活用の第一歩になります。

例えば、「空き家」の実家を何とかしたいけど、どうしたら最善なのか、迷っているなら、不動産業者に相談します。

ただし、不動産業者は、

・アパートやマンションの部屋の仲介
・土地や建物の売買

のどちらかを専門に商いをしています。

部屋の仲介の専門業者には、賃貸にした場合の入居率や収益率などを聞き、土地や建物の売買の専門業者には売買価格の話を、大手や地元の複数の不動産業者から話を聞きます。

そして、最善の方法で、「空き家」解消の対応をすることです。

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image by:akiyoko / Shutterstock.com

【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2022年5月18日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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