ホームセンター・雑貨店を展開する東急ハンズが、公式ツイッターにおいて男性同性愛者を侮蔑するような発言を行ったとして、大きな騒動となっている。
問題視されているのは、東急ハンズの公式ツイッターが6月12日に発信した「ゴリラゲイ雨が来たらちょっと困るけど、ゴリラゲイ雨を見てみたい気もする」といったツイート。
直後から多数の指摘を受けたようで、当該ツイートは数時間で削除。当日夕方から謝罪の意を示すツイートが幾度も投稿されるも、いまだ批判の声は燻っている状況だ。
昨日、こちらのアカウントで、不適切な表現を用いた投稿をし、多くのお叱りを頂きました。不適切な表現との認識が不足していたと反省し、あらためてお詫び申し上げます。
差別的な意図は念頭になく投稿したものではありますが、発信に当たっての確認が不十分でした。— 東急ハンズ (@TokyuHands) June 13, 2022
(承前) 公式アカウントとして適切な発信を徹底するため、今回の経緯をしっかり振り返り反省するとともに、体制・運用などについて必要な改善・強化を図ってまいります。
誠に申し訳ございませんでした。— 東急ハンズ (@TokyuHands) June 13, 2022
「差別的な意図は念頭になく」と釈明も…
「ゲリラ豪雨」の言い間違いから、2000年代後半あたりに発生したインターネットミームとされる「ゴリラゲイ雨」。いわゆるアナグラムの一種なのだが、それならば「ゴリラゲウ雨」となるところが、なぜか“ゲウ”ではなく“ゲイ”で定着してしまっているのは不思議なところである。
一部からは“ゲウ”では語感が悪いから…といった、日本語の音韻的な問題でそうなったのではという説も指摘されているが、いっぽうで「ゴリラゲイ雨」という語が発生した時期といえば、例えば「やらないか」や「ガチムチパンツレスリング」といった、ゲイを無邪気に取り扱ったミームがネット掲示板や動画サイトなどで多く流布していた時代。
そんなノリのなかで「ゴリラゲイ雨」も、男性同性愛者への侮蔑的意図が含まれるのではという点が大きな問題として取沙汰されることなく、ミームとして定着してしまったといった経緯も大いに考えられそうである。
ただ、それも10年以上も前の話で、今となってはその経緯も知らずに、ただ単にあくまでミームのひとつとして取り扱っただけで、本当に性的侮蔑の意図はなかったのでは……といった見方もあり、実際東急ハンズ側も謝罪のなかで「差別的な意図は念頭になく…」と釈明している。
ところが、東急ハンズ公式ツイッターによる過去のツイートを改めて検証してみると、2013年には「ホワイトデーのトモチョコ、略してホモチョコ」といった発言があったようで、いわゆるツイッター上での“ゲイいじり”は今回が初めてではなかった模様。こうなると、先の「差別的な意図は念頭になく…」といった弁明も、かなり胡散臭く聞こえるのも致し方がないところである。
東急ハンズの過去ツイート。「騒ぎすぎ」「言葉狩りだ」と言う方はこれを見ても同じことを言えるのでしょうか。
当該ツイートがされた9年前から何ひとつ人権意識を変えずにここまで来てしまった、
企業のコンプライアンス意識の低さ以外に他ならないですよね。 https://t.co/LlzyuNZb5e pic.twitter.com/hULBkm9oFX— Rikaレズビアンの不動産屋さん (@L_rikas) June 12, 2022
差別意識の有無を「ご不快構文」で有耶無耶に?
いっぽう、今回の一件で「ゴリラゲイ雨」ツイートそのもの以上に怒りを買う格好となっているのが、上記にあげた一連の謝罪ツイートの内容。そこで東急ハンズ側は「不快に受け止められた方に謹んでお詫び申し上げます」という、いわゆる「ご不快構文」的な謝罪を行ったからだ。
元ツイートに多数のお叱りをいただいており、不快に受け止められた方に謹んでお詫び申し上げます。差別的な意図は念頭になく投稿したものですが、そのような文脈で使用されることもある単語であるとの認識が不足しておりました。誠に申し訳ございません。
— 東急ハンズ (@TokyuHands) June 12, 2022
ご不快な思いをさせて申し訳ありませんといった趣旨の「ご不快構文」は、昨今多くの企業が様々な騒動における謝罪で用いられるものだが、いっぽうで「どこが悪かったのかを全く理解していない」と、さらなる批判を受けることが多々ある言い回し。今回の件に関しても、東急ハンズ公式ツイッター側の“差別意識の有無”が問われてしかるべきところを、「ご不快構文」で論点ずらしを行い、誤魔化そうとしているのではといった見方もあがっているのだ。
「ゲイがうるさいから」という論点にすりかえてないか?
別のキーワード、たとえば「ノンケ」だとしても、脈絡もなく企業アカウントと.. https://t.co/segonmBhth
「東急ハンズ公式アカウントが「ゴリラゲイ雨」と発言したことを陳謝「不快に受け止..」https://t.co/gbr4iBBbAB にコメントしました。
— 伝説のガービー★@自由博物館終身名誉館長 (@legendarygarvey) June 12, 2022
差別発言を放置したままイイネとRTを稼ぎながら、責任者も明かさずに、リプライ欄で最悪な「ご不快構文」をポッと投げるだけとは。
「意図はない」「受け止められた方が」で、まともに差別であると認めない醜悪さ。更に最悪なんだが東急ハンズ…… https://t.co/bn20j6BARd— ぐぱおん (@gupaooooon) June 12, 2022
東急ハンズ全然笑えない
ご不快構文使ってるのも何がよくなかったのか全く理解していなくて最悪だけど、"ゴリラゲイ"ってどう使われても侮辱的なニュアンスを含むのに差別的な意図はなかったと言ってしまうところが無理
もう使わないかな pic.twitter.com/8VWr7Qtgey— 藤川 (@eLba60012L) June 12, 2022
コレ、東急ハンズの公式も同様の間違いをしてるんだけど「差別的に思われる方の問題」ではないんだよ。「差別した側の問題」なの。それを正しく認識できてないのなら全く真摯ではない。
「ゴリラゲイ雨」が面白いと思ったわけでしょ?何が面白いのか説明できます?差別的だと思った我々の問題なの? https://t.co/iJtVgRAFif— ばくま (@bakma1580) June 12, 2022
このように、今回の「ゴリラゲイ雨」や過去の「ホモチョコ」発言などに潜む差別意識に対して、改めて向き合うことを避けようとしている風にも見える東急ハンズの対応には、「まともに差別であると認めない醜悪さ」「どう使われても侮辱的なニュアンスを含むのに差別的な意図はなかったと言ってしまうところが無理」といった批判の声が殺到。さらには「ゴリラゲイ雨が面白いと思ったわけでしょ?何が面白いのか説明できます?」と、今回の発言で東急ハンズ側が企図したところを、より具体的に問い詰める声まであがっている。
先の謝罪ツイートで「今回の経緯をしっかり振り返り反省するとともに、体制・運用などについて必要な改善・強化を…」とコメントしている東急ハンズ側だが、SNS上ではそれよりもさらに突っ込んだ「自己反省」を求める声で溢れている状況だ。
Next: 企業アカウントは所詮企業アカウント
ツイッターの反応
「不快に受け止められた方」と受け手側の問題に置きかえるのではなく、「東急ハンズが差別をしたからごめんなさい」ですよ。 https://t.co/7ttr5genJi
— UNICO (@unico32) June 12, 2022
再びRTされていて何かと思ったら東急ハンズの公式アカウントが「ゴリラゲイ雨」とツイートしていたのか。既に削除されたようだけど、ホモフォビックな侮蔑が"ミーム"として消費される現状が今なお続いていること、企業がその侮蔑をPRとして使ってしまうことの問題性、重く受け止めてほしい。 https://t.co/nmCuCFhNRV
— 松岡宗嗣 (@ssimtok) June 12, 2022
なんで自分の責任ではなく、まず「受け取った側の問題」にするのだろう。差別表現は「受け取り手が嫌だと言うから」ではなく「差別だから」ダメなんですよ。企業はご不快構文がbestでないことを学んだ方がいい。
私は東急ハンズは差別的なことを言うのだなと思った。
不快じゃなくて軽蔑している。 https://t.co/uODIPvfdUw— 女をアゲる女 (@amaterasu_solar) June 12, 2022
「ゲリラ豪雨」の音を入れ換えたら「ゴリラゲウ雨」じゃなく「ゴリラゲイ雨」になるの、「ei」と「ou」がひとまとまりの音として認識されてるんだなって感覚が掴めてよい
— the loyaltouch (@theloyaltouch) June 12, 2022
東急ハンズの炎上を見て思うのは、企業アカウントは所詮企業アカウントということ。SNSの流行に乗るのが大事、なんて業界では言われているが、ウケる投稿をしようと擦り寄るほど、世間一般の常識との乖離が生まれ、大半のSNSユーザーの期待との乖離が生まれる。誰も企業にウケる要素なんて求めてない。
— shomarketer|しょま(マーケティング戦略室) (@shomarketer) June 13, 2022
東急ハンズ、ゲイ差別ツイート。
企業アカウントかツイッターで面白いことを言ってフォロワーを増やしたいと思っても、担当者に天性のセンスがあれば別だけど、シロウトさんがそんな面白いことなんて言えないので、マイノリティいじり(イジメ)に走りがち。やめた方がええ。 https://t.co/RnDfyoCmnX
— mipoko (@mipoko611) June 13, 2022
※本記事内のツイートにつきましては、Twitterのツイート埋め込み機能を利用して掲載させていただいております。
Image by:Wikimedia Commons