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日本のビールCMはなぜここまでダサいのか?長期投資を呼び込む海外企業の段違いのマーケティング力=山田健彦

長期投資の銘柄を選ぶポイントの1つに「高い参入障壁」というのがありますが、マーケティング力をもった企業は、この条件に当てはまります。日本と海外の企業でどのような差があるのか?ビール業界を例に見ていきます。(『資産1億円への道』山田健彦)

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マーケットの動き

米国ではNASDAQ指数の週足で戻りが強く、指数は196週線で底を確認したようです。
一方、日足では75日線は明確な下向きですが、指数値は7月27日に、この75日線を超え、3日連続の陽線。5日線も75日線を下から上に突き抜け、とても強い形を描いています。

NASDAQ日足(SBI証券提供)

SP500指数は、週足で13週線を超えてきました。この13週線は下向きから横向きに転じ、週足のMACDもGCです。

S&P500日足(SBI証券提供)

市場関係者は、3月には125ドル台をつけていたNYの原油相場は直近では98ドル台まで下げ、他の商品市況も最高値から大きく下げたことからインフレのピークアウト感が出てきたのでは、との見方を示しています。

原材料価格の下げが直ちに最終製品価格の下落につながるわけではありませんが、このような状況から米国の利上げは続くにしても、今後の利上げ幅は小さくなるのでは、と思われます。

FRBのパウエル議長も会見で今後の利上げペース鈍化の方向を示唆しました。ナスダック指数、SP500指数の反転上昇はそれを事前に予想していたと言えます。

日本株については日経平均週足は、13週、26週線が、やや上向きに転じ、あと少しで52週線を突破しそうです。

ただ、52週線は微妙に下向きで、6月6日の週足では、一旦52週線を超えたところから指数は押し戻されています。

52週線を超えたところから指数が押し戻されたのは、1月3日の週、6月6日の週と今年に入ってから2回あり、今回は「3度めの正直」となるかが気になりますが、直近の企業決算内容で良いものの主たる要因は「予想を超えた円安」でしたので、円安が一服した今、再度指数は押し戻されるのでは、と筆者は危惧します。

6月4日の週に日経平均が一時52週線を超え、割と大きな上ヒゲをつけた際の上ヒゲ上限値は28389.75でした。仮に指数値が週間でこの値を上回ってくると、これは力強い上昇基調の確認ということになりますが、やはりここからは、例年「夏枯れ相場」の到来になるので、この28389.75奪還は早くて8月下旬になると思われます。

日経平均日足(SBI証券提供)

4~6月の決算発表を見て

4~6月の決算発表が本格化してきました。円安の追い風を受ける輸出関連株中心に大幅増益となった銘柄も少なからずありますが、増益の最も大きな要因は円安という銘柄、或いは需要拡大による売上の増加が増益の主たる要因であっても、決算発表前に株価が上げ過ぎた銘柄は、利益確定の売りに押される傾向があり、要注意。例えば、

キヤノン<7751>
日東電工<6988>
太陽ホールディングス<4626>
デクセリアルズ<4980>
日立建機<6305>

など数えていたらキリがありません。

7月雇用統計はどうなるか?

8月5日に出る米7月雇用統計は、インフレと金融引き締めのピークアウトを期待する動きにとっては注目すべき統計となりそうです。

新規雇用者数の伸びの鈍化や賃金上昇の伸び率の低下といった、景気過熱感の後退を示唆する内容となれば、市場は引き続きこれを好感することになるでしょう。

それ以外にも、今週は米国で8月1日に米7月ISM製造業景況指数、3日に7月ISM非製造業景況指数の公表。

中国では1日に7月財新製造業PMIの公表。3日のOPECプラスの会合結果も注目です。

Next: 長期投資の投資先を選ぶ3つの基準



長期投資で投資先を選ぶ3つの基準

前回、前々回と奥野一成さんの著書である『ビジネスエリートになるための教養としての投資』について、そこから筆者なりに得た気付きを書きましたが、内容は以下のようなものでした。

1)高い利益を上げている企業
2)高い参入障壁があり、他社が容易に参入できず、上記1の高い利益を将来にわたりキープできる可能性が高い企業
3)実際に長期的に見て売上高や利益が伸びている企業

その中で、「2)高い参入障壁』の1つに「マーケティング力」も含まれるという趣旨のことを書きました。今回は、その「マーケティング力」についての筆者なりの気付きの話です。

国内と海外、ビールのCMの違いで見えるマーケティング力の差

国内主要ビール各社が、今後ビール広告でイメージガールを使わないことを発表しました。
アサヒ「イメージガール」廃止へ ビール大手4社から姿消す

各社とも「総合的な判断」として詳細を公表していませんが、筆者は女性層の開拓と本格的に世界で戦っていくための第一歩ではないか、と捉えています。

そもそも「イメージガール」などというのは典型的な日本のオジサン的発想で、イメージガールを残したままのマーケティングで女性層の開拓を望むのは無理があるのと、世界で戦っていく際に国によっては、イメージガール広告は、セクシャルハラスメントで訴えられる可能性もある、との懸念もあったのではないでしょうか。

例えば、キリンのCMとハイネケン、バドワイザーのCMを比較します。

キリンのCMはいかにも出演料が高そうな著名なタレントを出して、その旨さを強調しているように見えます。

「旨さ」というのは、その人の味の好みやその日の体調等が影響しているので筆者などは「そこまで旨さだけを強調して、意味あるのかな~?」などと思ってしまいます。

それと、これらのタレントさん、私生活では他社のビールや日本酒、ウィスキーやワインも飲んでいるんだろうな~、などと想像して、CMの中で「旨い!幸せ!」なんて嬉しそうに言っているのを見ると、逆に「ただの台詞だよな~」と白けてしまいます。

対してハイネケンは、人々の生活の潤滑油のような位置づけで製品をさりげなく売り込んでいるような気がします。

バドワイザーの広告は、退役軍人、殉死した軍人の遺族に奨学金を提供する良き社会構成員でありたいという会社の意思を織り込んでいるように見えます。

筆者の個人的感想ですが、キリンと欧米2社のCMの違いは、欧米2社のCMの方が圧倒的に心に響く点です。それに比べ、キリンのCMは何となく薄っぺらくて心情に訴えかけるものがほとどありません。

海外のタレント事情には詳しくはありませんが、欧米2社のCMに出演している人は、それ程著名な人ではないような気もします。その方がリアリティーを感じられるという事かもしれません。

皆さんは、この3社のCMを見て、どのビールを飲みたいと思いますか?筆者なら、バドワイザー、ハイネケン、キリンの順です。

個人的な味の好みから言うとキリン、ハイネケン、バドワイザーの順なのですが、その順位を入れ替えるほどCMのインパクトは大きいのです。これがマーケティング力の差の一つの例です。

チェックしてみると、バドワイザーは営業利益率が25.5%、キリンホールディングスのそれは3.7%(共に直近会計期の実績値)です。

販売しているプロダクトが違うものもあるので一概にどうこう言えませんが、それにしてもこの数値の差は大きいです

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image by:JDisobeyArt / Shutterstock.com

資産1億円への道』(2021年8月1日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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資産が1億円あるとゆとりある生活が可能と言われていますが、その1億円を目指す方法を株式投資を中心に考えていきます。株式投資以外の不動産投資や発行者が参加したセミナー等で有益な情報と思われるものを随時レポートしていきます。

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