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介護施設に父親入所。相続対策を企む息子夫婦がハマった収益不動産建設の罠=小屋洋一

相続対策に賃貸不動産の建設をするといいという話をよく耳にします。今回は父親が介護施設に入所した息子さんが、父親の土地に収益性不動産を建設しようした事例で、相続対策としての効果を検証しました。(『億の近道』小屋洋一)

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プロフィール:小屋洋一(こや よういち)
ファイナンシャルプランナー。株式会社マネーライフプランニング代表取締役。1977年宮崎県生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、総合リース会社に就職。2008年、個人のファイナンシャルリテラシーの向上をミッションとした株式会社マネーライフプランニングを設立。

父親の介護施設の入所を機に、収益不動産を建設

今回はクライアントさんの相談事例をお伝えします。不動産のお話です。

今回の相談は、父親の相続対策で、父親が高齢で介護施設に入所したので、その間に自宅を解体し、収益不動産を建設しようとしているお客様の相談です。

相談者としては

・父親が介護施設に入所して自宅を利用しなくなった

・相続地策として「賃貸不動産」を建設すると、土地の評価を下げられるだろうと思っている

・父親名義で借り入れをすればさらに相続税を下げられると思っている

という状況と思惑でした。

賃貸不動産は相続対策になるのか?

お話を伺ったうえで、まず気になったのは、土地に賃貸不動産を建設するのが本当に相続対策になるのか?

という点です。

税理士さんに相続税を試算してもらったところ、

賃貸不動産を建設して借り入れを行う < 現状の自宅のまま < 建設中に父親が亡くなる

という順序で金額が異なってくることがわかりました。

父親の状況がそれほど良くないという状況でしたので、場合によっては建設中に父親が亡くなってしまい、現状よりも相続税が高くなるリスクも十分にあるという事を理解することが必要でした。

Next: 収益性のない賃貸不動産に固執する息子夫婦



収益性のない賃貸不動産に固執する息子夫婦

そして、最も大切な建設する賃貸不動産の収益性です。

残念ながら今回のケースで、デベロッパーから提示された収益率は5%程度で、とても収益性が低く、このままでは、建設後のキャッシュフローの安定性が見込まれない試算になっていました。

しかし、クライアントのご夫婦は、収益性の分析やキャッシュフローのことがあまりよくわからないので、このまま計画を進めてしまおうかと考えておられるほどでした。

もし、このまま計画を進めてしまうと、多少の空室が出る、経年に従って賃料が下がってくる、金利が上昇するなどの変化が起こると、すぐにキャッシュフローが赤字になってしまう状況にもかかわらずあまり理解されていませんでした。

また、デベロッパーの収益試算表をみると、税引き前の数字しか出ておらず、税引き後の収益は書かれていませんでした。

これも、誤解を生ずる一因になっていると思います。

今回のポイント

・(本人たちは)相続税対策のつもりでも、本当に対策になっているかどうかは、試算をしないとわからない

・素人の人がデベロッパーに不動産の収支計画表を説明されても、あまり内容は理解できない

・結果的に建設後に失敗する事例に事欠かない

ということを意識してほしいと思います。

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image by:shigemi okano / Shutterstock.com

億の近道』(2022年7月28日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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