各国中央銀行がマネーバブルの出口戦略を取る中、日米株価は上昇の動きを見せています。しかしそう簡単にインフレが下がるとは思えません。今後、数ヶ月の動き次第では、未曾有の資産インフレがやってくる可能性があります。(『菅下清廣の”波動からみる未来予測”』菅下清廣)
※本記事は『菅下清廣の”波動からみる未来予測”』2022年8月15 日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:菅下清廣(すがした きよひろ)
国際金融コンサルタント、投資家、経済評論家、スガシタパートナーズ株式会社代表取締役、学校法人立命館顧問 近畿大学世界経済研究所客員教授。ウォール街での経験を生かした独自の視点で相場を先読みし、日本と世界経済の未来を次々と的中させてきた「富のスペシャリスト」として名を馳せている。「経済の千里眼」との異名も。著書に『今こそ「お金」の教養を身につけなさい』ほか多数。
波動から見る日経平均の陽転
「7月20日に相場は陽転した」とスガシタボイス会員の皆さんにお伝えしました。
なぜか?
まず第一に、私独自の波動論からそう判断しました。
“株式相場が陽転した”というのはどういう意味かと言うと、長らく底値圏でもみ合っていた株価がようやく底入れして、立ち上がった。
つまり株価が上昇し始めたのです。
人間の心理で言えば、今までモヤモヤしていたのが吹っ切れて、目標に向かって行動開始という感じです。
では私独自の波動論とは何か?
価格の波動と時間の波動による判断です。
まず価格の波動では、7月20日に日経平均株価の日足チャートで、上にマドをあけて上がり始めています。
日経平均日足(SBI証券提供)
その後、陽線3本連続して、酒田五法でいう“赤三兵”(あかさんぺい)という形が出た。
赤三兵という型は強い上昇暗示、つまり、これから株価が上昇しますよというサイン(予兆)とされています。
また時間の波動、古来、日柄とも言われますが、昨年2021年9月に2番天井をつけて、日経平均株価は、その後、下落調整局面が続いていました。
日経平均週足(SBI証券提供)
2020年3月19日の1万6,358円のコロナショックの安値から始まった上昇相場(コロナバブル相場)が、2021年の2月16日、9月14日に3万円の大台を奪回、ダブルトップ(2番天井)をつけて、株価の下落トレンドが続いていたのですが、ようやく株価は7月を転機として反転上昇のトレンドに入ったと言えるのです。
なぜか?
2021年9月に株価が天井をつけてから7月、8月、9月で約1年。
コロナバブル相場のような大きな上昇相場の後は、少なくとも数ヵ月もしくは12~13ヵ月休むというのが時間の波動から見る、経験法則です。
その日柄で判断すると、7月に株式相場が陽転して、8月に新しい上昇の動きが出てきて、9月頃までに当面の戻り高値をつけてもみ合うという展開が予想されます。
以上が相場の波動から見た、東京株式市場の現状分析と目先きの相場見通しです。
米国株式相場は7月から反転
さらに株式相場が7月に陽転したと判断した、もうひとつの理由は、米国株式相場がナスダック、NYダウともに6月末頃までにFRB(連邦準備制度理事会)の利上げ、金融引き締めという株安材料(情報)を当面織り込んで、7月相場入りから反発し始めたことです。
とくに、米国と世界の株価上昇をけん引してきた、ナスダックが底入れして7月は反発しました。
NASDAQ週足(SBI証券提供)
ナスダック総合株価指数は、6月末比で7月は12%高となり、2020年4月以来の月間上昇率となっています。
アマゾンは7月に月間で27%、アップルは19%上昇しています。
この米国株の反発高、ナスダックの戻りが一時的なものなのか、当分上昇波動が続くのかは、まだ判断できませんが、先週末8月12日金曜日のNYダウは424ドル高、プラス1.27%、ナスダックは267ポイント高、プラス2.09%、また先週末の日経平均株価は727円高、プラス2.62%の2万8,546円と2万8,500円近辺の壁を突破しそうな動きになっています。
それに加えて最近まで弱気相場(ベアマーケット)が続いていた仮想通貨市場にリスクマネーが入ってきています。
直近のビットコイン現物は330万円台をつけて6月下旬の安値230万円台から約100万円上昇しています。
イーサリアムも同じく6月下旬の安値12万円近辺からほぼ倍以上の26万円台をつけています。
米国ナスダックの復活、アップル、アマゾン、テスラなど主力株の上昇、ビットコイン、イーサリアムの続伸ということになれば、マネーバブル相場第2幕が切って落とされるということになるが、果してどうでしょうか?
Next: 通貨価値下落で未曾有の資産インフレ相場が到来
資産インフレ相場の到来
2020年のコロナショックで始まったマネーバブル相場第1幕は、日米欧の未曽有の金融緩和がその背景でした。
しかし今はFRB(連邦準備制度理事会)が利上げ、金融引き締めへと政策を転換、ECB(欧州中央銀行)も利上げ、引き締めへと動き始めています。
その金融政策の変化や欧米のインフレ率の急上昇の中で、マネーバブル相場は続くのでしょうか?
もし続くなら、バブル相場第2幕は資産インフレ相場の加速ということになるでしょう。
欧米の中央銀行が多少金融を引き締めて、利上げしても、なかなかインフレは収まらない。
高いインフレ率が継続します。
なぜなら、ウクライナ戦争が長期化すれば、欧州各国の生産活動は停滞して物資不足でモノの値段が値上りするからです。
もしロシアが敵対するNATO、欧州各国への天然ガスや石油の供給を全面的にストップしたりすれば、オイルショック時代のようなことが起りかねません。
いわば、ニューオイルショックです。
物価が急騰したり、エネルギー価格が急上昇したりして、一般庶民の生活は大混乱に落ち入る可能性も出てきます。
インフレがますます加速して、欧米の中央銀行が対応に追われる。
いっそうの金融引き締め、利上げを迫られるが、やり過ぎるとオーバーキルとなり、不況を呼び込むことになります。
次の2~3年に、猛烈な資産インフレ相場がやってくるかもしれません。
なぜなら2020年以来、日米欧が異次元の金融緩和や財政出動を実施してきたので、円、ドル、ユーロなどの法定通貨の価値は限りなく減少しているからです。
円やドルを売って、日米のハイテク株を買う。
東京、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、パリ、ロンドンなどの一等地の不動産価格がさらに上昇するというような、かつて経験したこともないようなバブル相場の到来です。
そのような史上最大の資産インフレの波が押し寄せれば、今なおゼロ金利の円は売られて140円どころか160円などという超円安時代がやってくるかもしれません。
2022年は世界と日本の大転換点
どちらにしても2022年は世界と日本の大転換点となります。
まず、FRB(連邦準備制度理事会)が今後、利上げ、引き締め策でインフレを退治できるかどうか?
次にロシアが欧州向けの石油や天然ガスの供給をどの程度停止するか。
ロシアは中国や同盟国にのみ供給するという攻撃に出るかもしれません。
第3に米国の金利が何%まで上がるか?
米金利の上昇は世界のマネーをドルに引き寄せて、さらなるドル高となって新興国経済に大きな打撃を与えます。
第4に金利が上がっても、米国のニューハイテク株やビットコイン、イーサリアムなどの価格が再び上昇するというサプライズが起きます。
なぜなら余剰マネーがインフレヘッヂの対象として、成長性の高いハイテク株や流動性を求めて仮想通貨市場に大挙流入してくるからです。
第5に日米欧対ロシア中国の新冷戦構造のもと軍備拡大が進む。
そのため鉄、銅、チタンなどの資源争奪戦、食料争奪戦が起こりうる。
以上のことから、今後世界のホットマネー(投機的資金)はインフレヘッヂを求めて、ランダムに大きく揺れ動くというのが、近未来にありうるシナリオです。
なので、今後は揺れ動くマーケットで、大いに投資チャンスがあると同時に、誰もが生活防衛の努力を強いられることになることでしょう。
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『経済の千里眼 菅下清廣の“波動から見る未来予測”』(2022年8月15日号)より抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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