マネーボイス メニュー

なぜトヨタは5年間税金を払わなかったのか?政治献金で100倍得する大企業、減収分は消費税でまかない国民だけがやせ細る=神樹兵輔

大企業とマスコミによる「法人税を下げろ」の一大キャンペーンにより、日本の法人税は下がり続けました。その下がった税収を負担したのは国民の消費税。自動車業界は1億円程度の政治献金を行っていますが、その100倍の利益を得ています。大企業は肥え続け、国民がやせ細る消費税は廃止すべきでしょう。『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』)

※本記事は有料メルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2022年8月15日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:神樹兵輔(かみき へいすけ)
投資コンサルタント&マネーアナリスト。富裕層向けに「海外投資懇話会」を主宰し、金融・為替・不動産投資情報を提供。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』 『面白いほどよくわかる最新経済のしくみ』(日本文芸社)、『経済のカラクリ』 (祥伝社)、『見るだけでわかるピケティ超図解――21世紀の資本完全マスター』 (フォレスト出版)、『知らないとソンする! 価格と儲けのカラクリ』(高橋書店)など著書多数。

「法人税を下げろ」大企業とマスコミによるプロパガンダ

今回のテーマは、 なぜ大企業ほど中小企業よりも税負担が軽くなるのか?という問題をえぐっていきたいと思います。

2021年度の国の税収は、約67兆円で過去最高でした。

前年2020年度に記録した過去最高の税収額、約61兆円を6兆円も上回ったのです。

原因は、コロナ禍からの景気回復と、円安による企業収益の増加、エネルギー価格の上昇による消費税の増収分などが寄与したからでした。

ところで、その内訳は主要3税収のうち、所得税が21.4兆円(前年度19.2兆円)、法人税が13.6兆円(同11.2兆円)、消費税が21.9兆円(同21兆円)で、合計が約57兆円です。

残り約9兆円は、相続税、揮発油税、タバコ税、印紙収入、自動車重量税、関税などが占めます。

総額約67兆円の税収比率を見ると、主要3税で全体の85%を占めますが、所得税が約32%、法人税が約20%、消費税が約32.7%です。主要3税で、消費税が最高税収比率となっていることにも驚かされます。

1989年度には、まだ19兆円あった日本企業全体の法人税収が、2019年度には11兆円にまで減り、2021年度は円安効果もあって13兆円まで戻しましたが、法人税収が減ったのは、法人税率をどんどん引き下げてきたからでした。

法人税率は、1980年代には43.3%でしたが、以降は世界的潮流に乗って下げられ、現在は23.2%となっています。

法人にかかる税金は、法人税だけではありません。

他にも法人の所得金額に対して法人住民税、法人事業税などがかかり、これらの総額の所得に対する割合を「実行税率」といい、法人税等の税負担率は2014年度の34.62%から毎年度下げられ、2017年には30.62%にまで下がりました。

大企業とマスメディアは、「日本の法人税の実効税率は世界と比べ高すぎる。これでは企業の競争力が殺がれ、産業の空洞化がすすむ」と訴え、政府もその意を汲んで実効税率を下げてきたのです。

~中略~

トヨタは5年間も税金を払わなかった

トヨタといえば日本を代表する大企業です。

2020年3月期決算では売上高29兆3千億円、営業利益2兆440億円でした。

前年の19年3月期には、日本企業初の売上高30兆円超えでも知られます。

しかし、このトヨタが2009年から2013年までの5年間、儲かっていたのに法人税を払っていなかったのです。

トヨタの社長が2014年の決算発表で「やっと税金が払えるようになり、うれしい」などと吐露したのですから、当時も波紋を呼びました。

「何で5年も?」という疑問の声が飛びかったのです。

たしかにかに08年のリーマンショックを受けた翌年の2009年3月期決算では、本業の儲けを示す営業利益は1,880億円の赤字に陥り、翌10年が3,280億円の赤字、11年が4,810億円の赤字、12年が4,400億円の赤字となりました。

4年連続で本業が赤字だったというのですが、実は経常利益で見てみると、赤字になったのは、2010年(770億円の赤字)と2011年(470億円の赤字)のたった2年間だけで、09年は1,825億円の黒字、12年は230億円の黒字だったのです。

10年と11年の赤字の合計は1,240億円で、トヨタにとっては微々たる金額です。

それなのに、なぜ5年間も法人税を払っていなかったのでしょうか。

10年と11年が赤字だったので、決算で赤字分の金額は、翌年以降に繰り越せます。しかし、両年の赤字金額は、2013年3月期決算で8,560億円もの経常利益を出したので解消されているのです。

ゆえに、2009年から2013年まで、5年間も法人税を払っていなかったことの整合性が見えないことになるわけです。

先にふれた通り、「大企業ほど税負担が軽くなる仕組み」が、このトヨタの5年間にわたる法人税ゼロに貢献したわけです。

その一つで大きいのは、トヨタが製造業なので莫大な「研究開発費の税額控除」が挙げられます。

そして最も大きな税負担の軽減が、「外国子会社配当金の益金不算入」になるのです。

これはリーマンショックの翌年の09年から導入された制度で、トヨタのために導入されたと囁かれる疑惑の軽減税制ですが、外国子会社は現地で税金を払っているから、その子会社の配当金には95%の税額控除を認める、というものすごい優遇制度なのです。

Next: 1億円の「政治献金」で100倍以上の見返り



1億円の「政治献金」で100倍以上の見返り

トヨタの売上に占める海外販売台数は、90年代に入ると5割を超え、今や8割超が海外での販売です。

海外に子会社を作り、クルマを売っているのです。

しかし、現地での配当金の税額は、世界的に見ても10%程度と低いのが相場です。

対する日本での法人税率は、元々なら23.2%です。

海外で1,000億円の子会社配当があれば、現地での税額は10%として100億円しか払っていないので、日本の法人税額相当の約230億円との差額分130億円を、本来ならば日本の法人税で払うべきなのですが、現実にはこうした強力、かつ特別の税制優遇策で徴収されない形になっているわけです。

ゆえに、その分がガッポリ儲かります。

さすがに日本を代表する大企業なのです。

毎年、日本自動車工業会とトヨタからの政権与党への政治献金は、大体1億円程度ですが、その百倍以上の見返りを受けていることになります。

1億円の政治献金で、100億円以上の見返りが得られるなら、安いものなのです。

~中略

消費税収の4分の1は、払ってもいない輸出大企業に還付される形ゆえ、一般庶民は開いた口がふさがらないのです。

これは、ほんの1例にすぎません。

政府・与党は、従業員の賃金もろくに上げない大企業を肥え太らせることをやり、そのツケを「消費税率アップ」という庶民に大打撃を与える施策をとってきたのが実態なのです。

こんな政策はやめさせるべきでしょう。

消費税は廃止すべきです。

代わりに、所得税の累進課税率を強化すれば、大企業経営者に巨額の報酬をもたらす動機も消滅します。

フランスの経済学者トマ・ピケティが唱えるように、所得の再分配政策を強力に推し進めない限り、格差は一層広がり、庶民の富裕層への憎しみのマグマは貯まり続けることでしょう。

サラリーマンは一生金持ちになれない

次回は、「なぜ金持ちはますます肥え太り、庶民はますます貧乏になるのか──金持ちほど税金を払わないですむカラクリ!」について、鋭くえぐっていきたいと思います。

サラリーマンの人は、一生金持ちにはなれません。

ぜひ、次回のメルマガを読んで、資産形成のカラクリを身に着け、金持ちになる一歩を踏み出して頂きたいと思います。

それでは、次回をご期待ください。

続きはご購読ください。初月無料です

<初月無料購読ですぐ読める! 8月配信済みバックナンバー>

※2022年8月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

2022年8月配信分
  • 大企業は中小・企業よりも法人税を払っていない!(8/15)
  • 日本人の賃金低下を促す「労働者派遣事業」は禁止すべし! 「中間搾取」「間接雇用」「有期雇用」が格差社会の元凶!(8/8)
  • 兄弟姉妹間での「争族」を増やす! 「亡親の遺産」独り占めを狙う親族に加担する悪徳公証人が横行!(8/1)

いますぐ初月無料購読!


※本記事は、神樹兵輔氏のルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2022年8月15日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読を

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

2022年7月配信分
  • 日本の生命保険は加入者とは「利益相反」の矛盾だらけの高額で無駄な欺瞞商品!(7/25)
  • 「ふるさと納税」は金持ち優遇で税金の無駄遣い! ただちに廃止すべき、その理由!(7/18)
  • 悪名高き奴隷労働の「外国人技能実習制度」はただちに廃止すべき!(7/11)
  • 世襲議員が日本を滅ぼす!(7/4)

2022年7月のバックナンバーを購入する

[/touroku_block]

【関連】仕事は60歳でスパッと辞めよ。人生100年は嘘、死ぬ間際に後悔しない「FIRA60(ファイラ60)」の人生プラン=榊原正幸

【関連】天才投資家ジム・ロジャーズは「現金はゴミ」の時代に何を買う?3つの投資先を明言=花輪陽子

【関連】ベーシックインカムは日本を壊したい誰かの妄言。「働き損」で貧困層だけの国になると気づけ=鈴木傾城

image by:ChameleonsEye / Shutterstock.com

神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』(2022年8月15日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!

[月額660円(税込) 毎週月曜日(年末年始を除く)]
1990年のバブル崩壊から続く「失われた30年」を経て、ニッポン国の衰退ぶりは鮮明です。デフレ下でGDPは伸びず、賃金は上がらず、少子高齢化で人口は減り、貧富の格差も広がりました。いったいどうしてこんなことになったのでしょう。政治、経済、社会、マネーや投資に瑕疵があったのは否めません。本メルマガは、そうした諸分野に潜む「闇」を炙り出しグイグイえぐっていこうとするものです。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。