統一教会との関係ばかりがクローズアップされていますが、そろそろ選挙のない「黄金の3年間」を手にした岸田政権で私たちの生活がどう変わるのかを考える必要があります。「新しい資本主義」と言いながら何のアナウンスもされない現状を見ると、結局は「自助努力」「個人裁量」がすべてと言わざるを得ません。(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2022年8月22日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
まさに「黄金の3年間」。盤石な政権を作り上げた岸田自民党
衆参両方の選挙で、数的には盤石な政権を作り上げた岸田自民党、発足時に派閥領袖の意向で幹事長に就いた甘利明氏も小選挙区落選で退き、岸田政権にとって“最大の圧力”とされていた安倍派領袖も不慮の事故で倒れ、とうとう自民党内で岸田文雄総裁を脅かす勢力はいなくなったような感じです。
そんな流れで内閣改造を行い、これで岸田政権は3年間という盤石体制を手にしました。
あくまでも“見ているだけ”のイメージで、その内実は権力闘争ですからわかりませんが、それでも、かつてあった内部紛争で引きずり下ろされたり、思わぬことで解散に追い込まれない限り、「黄金の3年間」と呼ばれる「時間」は手にしたように思えるのです。
私たちの生活は「新しい資本主義」で豊かになるのか?
それゆえ、これからの世界における日本の立ち位置、経済の行方、社会のあり方、それらはみんな、岸田政権の政策で決まっていくことになります。
つまり、岸田政権が発するメッセージで、これからの私たちの生活がどうなるかはわかるというものです。
そのヒントを探るのが、今のところ「新しい資本主義」という政策になります。
ただ宏池会政権の「本心」とされている、財政再建のための「増税」や、「脱新自由主義」としての「金融政策転換」と言ったものが頭をもたげてくるのではないかという懸念もつきまといます。
事実、日銀人事においては、審議員として金融緩和に積極的な「リフレ派」片岡剛氏任期満了に伴い、後任に金融緩和の副作用を問題視する発言が多い高田創三井住友銀行上席顧問が就くことになりました。
2023年に、ここまでの強力な金融緩和政策を推し進めてきた黒田東彦総裁と若田部昌澄副総裁が退任、後任人事次第では、金融政策の方向転換も考えられるでしょう。
増税&金融引き締めで景気低迷へ
もし「増税」+「金融引き締め」となると、景気が腰折れになるのは必至で、まだまだデフレから脱却していない脆弱な経済状況においては、増税と金融引き締めは、日本経済にとっては“命取り”になりかねません。
緊縮が悪いとは言ってはいません。あくまでも「タイミング」の問題です。
黒田日銀総裁も、今すぐには金融政策を変更するときではないということを、足元の景気の状態を踏まえてきちんと説明しています。
低金利政策が円安を誘発しているとして日銀政策を非難し、円安を止めるために金利を上げろと言っているグループもあるようですが、それをすると景気はますます悪くなります。
円安しか見ずに金融政策を語るなんて「愚の骨頂」ですね。
まさかとは思いますが、ポピュリズム、大衆迎合のスタンスで増税に金融引き締めに舵を切ったなら、とんでもないことになりますからね。
Next: 具体策なき「新しい資本主義」。結局は国民に丸投げか
具体策なき「新しい資本主義」
話を「新しい資本主義」政策に戻しますが、「資産所得倍増」と「脱新自由主義」に関しては、特に取り上げるものはないです。
「資産所得倍増」はNISAとiDecoの微調整で、日本人全員で株価を支えてもらおうというものですし、“脱安倍路カラー”の象徴ともされる「脱新自由主義」は政治的イデオロギーの問題で、「分配優先で成長を促す」という具体的な道筋は、何も示されてはいません。
人々が資金的に余裕を持たない限り成長なんてあり得ないと、自民党総裁選挙では、保守政党でありながらリバラル色が強い主張をして、これを「脱新自由主義」の象徴のように語っていましたが、そのための財政出動に関してはなんの具体的なメッセージを発していないどころか、総理になってからはこのことに関しては「音無しの構え」になっています。
「分配なくして成長なし」として所得倍増を促す「令和版所得倍増計画」も、いつの間にか「資産所得倍増」に看板が据え換えられていて、後でも説明しますが、所得増に関しては、政府がどうのというよりも「個人裁量」に期待する内容になっています。
なんか、もう「新しい資本主義」政策検証の結果が怪しくなってきましたね。
「成長と分配」と言いながら、結局は国民に丸投げ?
それでも岸田政権としては、「成長と分配」政策においては明確にメッセージを発しています。その本質を、というか「本性」を探っていきましょう…。
<成長戦略>
政府がデジタル化と脱炭素推進のメッセージを出すことで、企業がインフラ投資に積極的になる…。
<分配戦略>
副業・兼業ができやすいように選択的週休3・4日制を推進、リカレント教育、職業訓練などを拡充…。
これを表現を変えると、こうなります。
<「成長戦略」のウラ>
財政出動をしないで民間企業に「デジタルインフラ投資」と「脱炭素インフラ設備」をさせる…。
<「分配戦略」のウラ>
給料は上げられないので「副業・兼業」を頑張ってもらう、「副業・兼業」のアイデアがないなら「投資(資産運用)」で所得を増やしてもらう…。
なんと、あれだけ言っていた「所得倍増」は「個人裁量」に任せるというのです。企業の設備投資も、表現の仕方は色々ありますが、わかりやすく言えば「(お金を出さずに)企業の“お尻を叩くことで設備投資をさせる」だけというものですね。
国がやることは、国が主導して給料が上げられる分野においては給料を引き上げ、それに伴い民間企業が給料を上げてくれることを期待し、また、政府調達においても、給料を上げた企業を優先するという政策で、なんとか民間企業に従業員給料を上げてもらおうということです。
結局は財政出動は渋るようで、財政再建の財務省の意向に沿ったかたちのようにも見えます。
それでも「アベノミクス“三本の矢”経済政策」で、財政を出すと言っておきながら出さなかったことよりかは、財務省が財政を出さないとしている状況では効率的と言えるのかもしれません。
「アベノミクス“三本の矢”経済政策」での「成長戦略」に当たるのが「経済安全保障」になるのでしょう。
国のお墨付きで一部の産業を支援することで投資を呼び込もうというもので、これも財政出動が伴わない経済政策なのかもしれませんね。
Next: 「国には頼るな」というメッセージ?副業や投資での「自助」が必須に
「国には頼るな」というメッセージ?
こんな表現だと“身も蓋もない”ことになってしまいますが、この形で岸田政権は始動するので、私たちが取り組まなければならないことは、給料アップを当てにしないで副業・兼業にアイデアを絞ることで、投資(資産運用)の精度を高める努力をしなければならないということになります。
一方で、テレワーク推奨だとか働き方の多様性から、都会に住む重要性、居住地を都心近くに求める必要性は薄れ、むしろ「コスト」なり「快適さ」で居住地を選ぶことが優先されるようになりました。
生活コストを下げる…。
もっともらしい表現ですが、つまりは家賃と光熱費が安いところに引っ越そうというもので、今まで削減不可能と思われていた住居費関連(家賃・光熱費等)にまで節約しなければ家計が厳しい状況になってきたということです。
とくに急に物価高となり、ウクライナ情勢でエネルギー価格も上昇し、円安も手伝って光熱費の高騰が大きく家計を圧迫してきました。
生活コストの見直しという、ある意味究極の節約にまで手を出さなければならないことになって来たということです。
それもコロナによる社会構造の変化によるものと受け止められるでしょう。
「もはや日本人労働者の給料は上がらない」
日本の雇用形態や社会構造、企業収益の在り方、競争力低下も含め、もはや日本人労働者の給料は上がらないと見切ったほうが良いでしょう。
デジタル化が進み、企業の事務コストが下げられ、労働生産性を真正面から検討して付加価値を上げられる企業収益構造に変えることと、なにより雇用の流動性を進める、つまり解雇規制を緩和して、「ジョブ型」評価を受け入れて、従業員の能力を純粋に評価してもらう風土が作れれば、給料は上がるのかもしれません。
同じインフレに見舞われているのに、同じ人手不足に悩んでいるのに、世界では賃金が上がって日本では何十年も賃金が上がらないのは、社会構造、企業収益構造が違うということと、なにより海外では雇用が流動化していて、日本では硬直化しているということにつきます。
つまり、海外では企業業績が厳しときはレイオフが頻繁に行われる一方で、人手を必要としたときは雇用者のほうが選び放題で、高い給料を払わないと人手が確保できない状態(労働市場の活性化)になっています。
それに対して日本では、給料は上がらなくてもよいからレイオフだけはやめてという風土になっていて、給料が上がることよりも給与所得者の地位にしがみついた結果だということになります。
Next: 「自助努力」「個人裁量」がすべて。副業・資産運用に励むしかない
「自助努力」「個人裁量」がすべて
サラリーパーソンでさえいれば、給料は上がらなくても老後年金はもらえるし、社会保険はついてくるので、一生を通せば社会保障が充実しているサラリーパーソンという身分保障に固執するほうが得だと思っているのでしょう。
これでは社会構造改革を行わない限り、給料は上がりませんね。
政府や会社への制度依存体質から脱却し、真の「自立」を目指す…。政府や会社に支えられるのではな、自分の足で立つことを目指す…。
そうしないと、これからの私たちの未来は切り開かれないでしょうね。
ということで、副業・兼業と投資・トレードに一生懸命がんばりましょう。結局、結論は「自助努力」「個人裁量」が全てということです…。
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』(2022年8月22日号)より
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