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夢の“サラリーマン大家”で撃沈続出。利回りわずか1.5%の超ハイリスク・ローリターン不動産投資の罠=神樹兵輔

“サラリーマン大家さん”という言葉が定着するほど、流行している不動産投資ですが、冷静に投資効率を見てみると、利回りはわずか1.5%ほどしかありません。多額の借金を抱える危険の割には収益は少なく、超ハイリスク・ローリターンな投資です。「家賃年収1億円突破!」とか言う話を真に受けると痛い目にあいます。神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』)※この記事は音声でもお聞きいただけます。

※本記事は有料メルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2022年9月26日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:神樹兵輔(かみき へいすけ)
投資コンサルタント&マネーアナリスト。富裕層向けに「海外投資懇話会」を主宰し、金融・為替・不動産投資情報を提供。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』 『面白いほどよくわかる最新経済のしくみ』(日本文芸社)、『経済のカラクリ』 (祥伝社)、『見るだけでわかるピケティ超図解――21世紀の資本完全マスター』 (フォレスト出版)、『知らないとソンする! 価格と儲けのカラクリ』(高橋書店)など著書多数。

“サラリーマン大家さん”を待ち受ける危険な罠

今回のテーマは、近年大流行の“サラリーマン大家さん”が陥りがちな不動産投資の危ない実態とその闇に迫ります。

定期収入が見込めるサラリーマンという属性を活かし、年収の何倍もの投資用ローンを金融機関から借り入れ、レバレッジ(てこの原理)を効かせた不動産投資に臨む…といった人たちが増えています。

危険な罠に嵌らないよう用心してほしいのです。

2019年に金融庁の報告書で物議を醸した「老後資金2,000万円問題」というのがありましたが、これ以降日本人の間には、老後不安をなくすための投資が必要…といった強迫観念が非常に強まってきたように感じます。

「NISAだ」「株だ」「FXだ」「投信だ」「リートだ」「ラップ口座だ」「クラウドファンディングだ」「現物不動産投資だ」…とばかりに、年代に関係なく多くのサラリーマンの人たちが浮足立ってきているわけです。

今回は、そうした中でも不動産投資の注意点として、“メガ大家さん”、“ギガ大家さん”と呼ばれるような人たちの底なし沼のような危ない投資法の事例から、その実態を知っておいていただきたいと思います

リスクてんこ盛りの不動産投資

不動産投資における賃貸経営には、次のようなリスクがあるといわれます。

★金利上昇のリスク(変動金利での借り入れの場合)

★入居率低下による空室増加・賃料減少のリスク

★入居者トラブル(騒音・ゴミ放置・複数人無断入居・無断ペット飼育、近隣者への危害、残置物放置での夜逃げなど)に悩まされるリスク

★想定外の修繕(雨漏り・漏水・給排水管毀損など)のリスク

★賃料の想定外の下落リスク(通常は年率1%程度の下落)

★孤独死・自死・事故死などの発生で事故物件になるリスク

★風水害・地震などによる被災リスク

★周辺環境の激変リスク(大学や工場などの大規模移転発生)

★投資物件の大幅な価格下落による担保割れでの売却困難(出口戦略の失敗)に陥るリスク

★管理会社の倒産や家賃持ち逃げのリスク

★家賃保証会社(代位弁済)の倒産や家賃持ち逃げのリスク

いかがでしょうか。

不動産投資には、いろいろなリスクがてんこ盛りなのです。

こうした事態にも的確に対応できる知識や精神力、経済的余力を養っておくことが大事といえるでしょう。

こうしたリスクを背負って、10年、20年といった長期の投資を行っていくのが、通常考えられる不動産投資というものになっています。

投資元本(頭金)に対して金融機関から5倍~10倍といった融資のレバレッジをかけ、入居者の継続的な賃貸収入によってローンの返済を進めることで、やがてローン完済後には、自分の純資産(借金のない資産)を築けるのが、不動産投資の醍醐味となっています。時間のかかる投資法なのです。

見方によっては、日銀の超金融緩和策が生み出した「あだ花」のような危ない投資法ともいえるでしょう。

出口に到れるかどうかで最終的な投資の成否が決まるからです。

Next: 日銀の超低金利政策が生み出した“サラリーマン大家さん”という幻想



超低金利政策が生み出した“サラリーマン大家さん”という幻想

近年の不動産投資は、このように家賃収入がローン返済額を大きく上回っている状況があるために行える投資法となっているのです。

32年前のバブル崩壊より以前は、ローン返済のほうが家賃収入よりも大きく、不動産投資といえば、多額の借金を背負った上に、毎月自己資金からの持ち出しになるのが普通でした。

現在の不動産投資状況とは、明らかに異なっている構図があったのです。つまりは、現在の不動産投資法は日銀の超低金利政策の恩恵に他ならないわけです。

そのため、借金額を大きく膨らませれば膨らませるほど、家賃収入とローン返済額の差額が大きくなり、無から有を生むがごとくに、キャッシュフロー(現金収入)が生まれ、うまくいけば、そのままFIREや早期リタイアによる、サラリーマン卒業も実現可能になるわけです。

一見すると、とてもオイシイ投資法にも見えてきます。

つまり、不動産物件がもつ投資の高利回りと、金融機関融資の低金利の「格差」を利用した、イールドギャップの活用という手法が、現在多くのサラリーマンの方々の注目を集める不動産投資法なわけです。「打ち出の小槌(こづち)」のような投資法ともいえるでしょう。

おかげで、投資元本に乏しいサラリーマンでも、ローンを使うことで大きな資産が築け、金持ちになれる…というのが、多くのサラリーマンの幻想を呼ぶ核心にさえなっています。

“資産”と“純資産”を間違えてはいけない

書店の不動産投資本コーナーに行くと「家賃年収1億円突破!」とか「年収500万円のサラリーマンが5年で資産10億円のメガ大家さんになった!」などといった、不動産投資における「成功物語」が誇らしげに語られる書籍がずらりと並んでいます。

こういう本を手に取った方は、「この著者ってスゴイなぁ!」と思わず感心するでしょうし「同じサラリーマンの自分でもやれるかもしれない」などといった夢や幻想を抱きがちでしょう──

(中略)

こうした“メガ大家さん”や“ギガ大家さん”と呼ばれる人たちは、本当に儲かっている人といえるのでしょうか。

総投資額10億円以上の不動産投資家の実際の例で見ておきたいのです。

Next: 利回りわずか1.5%。ハイリスク・ローリターンの不動産投資



利回りわずか1.5%。ハイリスク・ローリターンの不動産投資

計算を簡略化するために、複数のマンションの合計で10億円の投資額になるのでなく、いきなり1棟が10億円のマンションと仮定して、ざっくりですが、その収益をここでシミュレーションしてみましょう。

借金10億円の投資で、築20年の中古マンションを購入(鉄筋コンクリートの法定耐用年数は47年)したとします。

満室の場合には、表面利回り10%で、1億円の家賃年収が得られるケースとします。

まず、頭金もゼロとして10億円を年利3%の投資用ローンで、物件の残りの法定耐用年数27年間で借りたとします。

すると、年間返済額は5,535万円になります(27年間の総返済額は14億9,469万円)。

保守管理や固定資産税などの経費率15%と年間空室率8%を合わせると、23%の諸経費率で約2,300万円になります。

1億円の満室想定家賃収入から、ローン返済額と経費の総合計7,835万円を引くと、税込の利益である手残り(税込キャッシュフロー)は、たったの2,165万円なのです(簡略化のため、ここでは減価償却費を経費に加えません)。

“メガ大家さん”は法人設立での節税経営が多いので、法人税の実効税率を29.7%とすれば、実質年収は2,165万円マイナス税金643万円で、正味のキャッシュフローは1,522万円になります(減価償却費を経費に加えると所得が圧縮され、実際の税金はもっと低くなります)。

1,522万円の実質的な手取り収入は、サラリーマンの立場の人から見れば大きいかもしれませんが、事業収益としては微妙です。

月の収入がわずか126万円にすぎないからです。

10億円の投資に対して、年間1,522万円のリターンですから、実質利回りは1.5%しかないことになります。

利回り4%の上場株式を10億円分保有すれば、年間4,000万円の配当が得られますから、この不動産投資のケースはあまりにも利回りが悪すぎるわけです。

ハイリスク・ローリターンの典型なのです。

大規模修繕(エレベーター改修含む)などを行えば、軽く1,000~2,500万円といった千万単位の費用がかかるので、この程度の年収だと、それだけで一瞬に吹き飛んでしまいます。

しかも、空室率が20%になっただけで、税引き前の年収はたったの165万円にさえなります。月収ではなく、年収がです。

税引き後の手取り年収は115万円となり、月額たったの9.6万円の収入ということにもなるわけです。

これでは事実上の赤字転落に到るのです。

まことに空恐ろしい話ともいえるでしょう──

(中略)

次回は、「弱いものイジメの消費税! インボイス制度導入は、さらなる消費税率アップへの布石! 今こそ消費税反対! インボイス制度導入阻止の声をあげよう!」というテーマでお届けしたいと思います。

自公政権の中核は、自力で人生を切り開いたことのない甘ちゃん世襲ボンボン議員たちが実質支配し、献金をくれる大企業や富裕層の優遇政策ばかりが目白押しであって、国民の声を完全に無視し続けてきました。

これから先の将来、ますます衰退の度を深める日本には、真に国民が主体の、国民生活主権の政治を取り戻すことが何より大切でしょう。

ぜひ、こうした消費税の闇についても、関心を持ち続けていただきたいのです。

それでは、次回をご期待ください。

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2022年9月配信分
  • 不動産投資で失敗する人続出! イールドギャップの罠に嵌り、メガ大家を目指すサラリーマン不動産投資家の危険な構図!(9/26)
  • アパート入居者は大損させられている! 都市ガスよりも料金が2〜3倍も高いプロパンガス業界の闇!(9/19)
  • なぜ「個人情報保護法」があるのに、他人の秘密を暴く「探偵調査業や興信所」という商売がはびこっているのか?(9/12)
  • 無資格で誰でも始められて事故続出!リラクゼーション業界の闇(9/5)

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※本記事は、神樹兵輔氏のルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2022年9月26日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読を

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2022年8月配信分
  • 宗教とカネ! 所詮は金集めが中心の宗教団体! 宗教法人のオイシイ税制優遇制度!(8/29)
  • なぜ金持ちはますます肥え太り、庶民はますます貧乏になるのか――金持ちほど税金を払わないですむカラクリ!(8/22)
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  • 日本人の賃金低下を促す「労働者派遣事業」は禁止すべし! 「中間搾取」「間接雇用」「有期雇用」が格差社会の元凶!(8/8)
  • 兄弟姉妹間での「争族」を増やす! 「亡親の遺産」独り占めを狙う親族に加担する悪徳公証人が横行!(8/1)

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2022年7月配信分
  • 日本の生命保険は加入者とは「利益相反」の矛盾だらけの高額で無駄な欺瞞商品!(7/25)
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神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』(2022年9月26日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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1990年のバブル崩壊から続く「失われた30年」を経て、ニッポン国の衰退ぶりは鮮明です。デフレ下でGDPは伸びず、賃金は上がらず、少子高齢化で人口は減り、貧富の格差も広がりました。いったいどうしてこんなことになったのでしょう。政治、経済、社会、マネーや投資に瑕疵があったのは否めません。本メルマガは、そうした諸分野に潜む「闇」を炙り出しグイグイえぐっていこうとするものです。

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