止まらない円安・ドル高…そして、ついに日本政府は9月22日に24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入に踏み切りました。現在、1ドル=145.00円ラインを挟んでの上下となっていますが、果たして雇用統計でどうなるのか!また、2回目の為替介入はあるのか!今日の雇用統計の展望と併せて解説していきたいと思います。(ゆきママ)
為替介入で意識される145円ライン、米雇用統計の結果次第で上抜けも
9月22日に2.8兆円と過去最大規模の単独為替介入に踏み切ったことで、ドル円は145.00円レベルが天井として意識されやすくなり、上値が重たくなりました。
一方で、ドルそのものに目を向けると、大きく上下を繰り返しています。
英政府が大規模減税と財政支出拡大を掲げたことで、国債増発懸念からポンドが急激に売られ、金融市場の混乱から欧州通貨もオセアニア通貨も連れ安となり、リスクオフでドルが大きく買われる場面がありました。
先週後半からは売られていた欧州通貨がやや落ち着きを取り戻し、さらにはRBA(豪中銀)の利上げ幅が予想を下回ったことで、世界的な景気減速から利上げペースの鈍化が意識され、大きくドル安に傾きました。
米国指標が悪化したことも景気減速、利上げ後退といった見方を後押ししました。
このように、ドルそのものは大きく乱高下しましたが、ドル円は1ドル=144.00〜145.00円のコアレンジ帯に押し込められてパワーが溜まっていますので、今日の雇用統計の数字次第では大きくレンジを抜けていく可能性に警戒したいところです。
もしも上抜けて1ドル=147円、148円という水準まで上昇するのであれば、週明け早々に為替介入といった展開は十分想定されますから、それも踏まえてトレードを考えていきましょう。
Next: 週明け早々に「為替介入」おかわりも?先行指標から読む今後の展開
先行指標から読み解く米雇用統計の展望
それでは、先に発表されている雇用指標の数字を見ながら、今日の展望を考えていきたいと思います。
全体的に堅調な数字が並んでいます。新規失業保険申請件数は依然として歴史的低水準が継続していますし、ADP社の雇用報告に至っては、前回分が+18.5万人増と大幅に上方修正されての数字ですから、見た目以上の強さがあります。
唯一の低水準だったISM(米供給管理協会)製造業・雇用指数に関しては、好不況の節目となる50.0ポイントを下回るのが今年で4回目ということで、そこまで気にする必要もないでしょう。
製造業の雇用指数が下振れした背景も、米金融当局が金利引き上げに積極的になっていることで、従業員数を抑えようとしていることがあります。一方で大企業がレイオフ(一時解雇)を行っていないのは、まだ景気の現状、短期的な見通しは問題ないとのことで、今回の雇用統計に寄与する影響は小さそうです。
非製造業部門の雇用指数は相変わらず堅調で、アフターコロナの回復が未だに続いていると言えそうです。
したがって、全体的に見ればまだまだ米国の雇用市場は堅調ですから、予想並かそれ以上の数字が出ることが予想されます。
146円台に乗せるにはサプライズが必要
ISMの非製造業部門の数字を受けて、一昨日あたりから徐々にドルが買い戻されていますので、上抜けるハードルはやや高めかもしれません。
また、仮に大きく上がってレンジブレイクしたとしても、週末ということで週明けの東京市場を意識せざるを得ませんから、介入警戒感も相まって早い段階での利食いによる急落も十分あり得ますので要注意です。
予想値は非農業部門雇用者数(NFP)が+25.0万人、平均時給が前月比+0.3%・前年比+5.1%となっています。
予想並かこれを上回る数字なら、ドル円はジリジリ買われて介入のあった145.90円に迫るかもしれませんが、これを更新して146円台乗せとなるためには、NFPが+35〜45万人といったサプライズが必要でしょう。あるいは平均時給が前月比で+0.7〜0.8%といった数字が求められそうです。
逆にNFPがマイナス圏に沈む、平均時給が大きくマイナスになるといったことでもなければ、なんだかんだ円の売られやすい状況は変わらないわけで、目先安値の143.50円を割り込んでいく可能性は低そうです。
Next: 今夜のトレード戦略は?想定レンジは1ドル=144.00〜145.90円
今夜の想定は1ドル=144.00〜145.90円
となると、トレードとしては、予想並かそこそこ強めの数字が出て146.00円手前で伸び悩むなら、146.00円で跳ね返されるのを確認して介入警戒からの下落に期待してショート(売り)するか、あるいは予想を下回って144.00円に落ちてくるならロング(買い)といった程度です。
前者の場合は146円台に定着するなら一旦撤退ですし、後者の場合は目先安値の143.50円を割り込んだら損切りでしょう。
バイアス的には常に上方向ですが、介入警戒の値動きも想定されますから、あまり長くポジションを持ちすぎず、50銭〜1円幅が利食い目標でしょう。
また、仮に147円といった1998年の高値に近づいてくるようだと、介入警戒感からの急落や、実際の為替介入が起こってもおかしくないですから、146円を超えそうなら一旦利食いで、特にロングポジションは持たないようにしましょう。
あっさり高値を更新して147円という話になると、為替介入の効果は限定的ということで、一段と大きめの介入が入って叩き落とされて一瞬で10円ぐらい円高に傾いてロスカットということになりかねませんから、ご注意いただければと思います。
ちなみに、10円幅の大きめな介入となれば、おそらくは事実上最後の為替介入ということになりますので、そうなれば下がり切ったのを待ってコツコツとロングしていけば大ボーナスとなるでしょう。不安な方は介入されるのをまって手堅くトレードしていきましょう。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2022年10月7日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による