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「おもてなし」の日本はどこへ?“企業優遇”政策でサービス低下、大企業がお金を溜め込み政府も消費者もずっと貧乏のまま=角野實

日本の最大の欠陥は、岸田さんが言った通りで分配にあります。あまりにも企業を優遇しすぎています。日本は政府と消費者がずっと貧乏なまま、企業がその利益を外部に転換しようとしない、おかしな構造なのです。お金は循環するから景気がよくなるもので、ある主体だけに、お金が滞留するのは社会全体にとって非常に不健全な状態です。(『 角野實のファンダメンタルズのススメ 角野實のファンダメンタルズのススメ 』)

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※本記事は有料メルマガ『 角野實のファンダメンタルズのススメ 角野實のファンダメンタルズのススメ 』2022年10月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め 今月分すべて無料のお試し購読 今月分すべて無料のお試し購読 をどうぞ。

プロフィール:角野實(かどの みのる)
大学卒業後、金融機関に10年ほど勤務。独立して投資家の道へ。現在は企業経営者として活動、FX関連の執筆を多数行っている。

「おもてなし」を失った日本

私は日本ほど住みやすい国はないと思っていますし、ほかの先進国(アメリカを筆頭に)よりもずっと日本人のほうが良い暮らしをしていると思っています。

しかし、国内に目を転じていると、なんだかなぁ~と残念に思うことが非常に多い。「文句たれのお前らしい(笑)」と言われますが、本音は“日本は素晴らしい”です。

たとえば、自宅のロボット掃除機が壊れたので新しいものを買い求めようといろいろ探しているのですが、日本製のロボット掃除機がないのです…。あるのはアイリスオーヤマだけ、という状態です。

家庭内の掃除機がロボットに移行するなかでなぜ、日本メーカーは作らないのであろう、とは思います(編注:パナソニックの「RULO」、日立の「minimaru」ほか日本メーカーも参入しています)。

さらに、故障をしたときに、おそらく日本メーカーの問い合わせ窓口は電話も通じない、最終的には無責任なことを言い放つのはわかりきっていることで、たとえば、アマゾンやダイソン、に電話を掛けたときの対応と、楽天や日本の携帯会社にかけたときの対応の違いに圧倒されるのであろうな、と思います。これはご経験のある方が多いでしょう。

滝川クリステルがおもてなし、とシャウトしたとき日本人はおもてなしのできる国だ、と認識をしていますが、現実的にはまったく違うよね、と思います。

企業が力を持ちすぎた

なぜ、こんなことになってしまったのか、といえば、日本は企業が力を持ちすぎなのです。

要は、失われた20年・30年と言われている間、自民党の政策は企業優先。企業に体力を持たせるために雇用を流動化させ、そして儲かる体質になる優遇税制など盛りだくさん。

ところが、本来、ロボット掃除機などの分野に進出しなければいけない研究開発を怠る。新機軸の研究開発が一向に進まないので儲からない。もう従前のパナソニックやシャープ、東芝のような時代ではないものが、まだマーケットの中心にいる。パナソニックなどを指しているのではないのですが、本来ならつぶれなくてはいけない企業が生きながらえている、つまり企業の新陳代謝が一向に進まない体質になってしまっているのが、この原因だよね、と思います。

契約社員や非正規雇用の人間が会社の利益、利益と言い出すのはおかしな話であり、そのお給料でそれを求めるのは酷な話だよね、とは思います。

結果、顧客サービスも自身の雇用を守るためには企業の不利益になるような対応はサービス要員が拒否してしまう。外国資本は顧客の求めることに対して、その通りのことを実行する。このままでは外国企業に日本は席巻されるだろうな、と思います。アマゾンの対応では人としてまともなことを求めるとしっかりと対応するけど、日本の企業にそれはないよね、と思います。これが私の見る現実です。

Next: 日本の最大の欠陥は「分配」。賃金を上げるしか道はない



日本は企業だけが「お金を溜め込む」歪な社会

こういったことを解消するためには賃金の上昇のほかないのですが、インフレ時にはその値上げ分を企業が負担することによって売り上げ低下を防ぐ、などということが公然と行われている、状態だと思います。

今回のインフレも待っていれば下がれば、ますます、企業の抱えている利益が従業員に回らず、ますます企業内で留保されていくのであろうな、と思います。

日本の最大の欠陥は、岸田さんが言った通りで分配にあり、あまりにも企業を優遇していたのです。たとえばドコモなどがその典型で、政府が料金を下げろ、というと公然と反発をする、携帯は今や社会的なインフラになっており、そして許認可事業であるのにも関わらず、メディアを通じて反発をする、裏でやればいいものを。結果、ドコモは金融サービスの不誠実さでつぶされたのです。表向きは、NTTに吸収合併になっていますが実態は事業免許取り消しになるので吸収合併という形で面子を保ち、潰されただけの話です。

日本のおかしさというのは統治形態で、あまりにも企業が優遇されるので勘違いしている企業が多いとは思います。今回の電通の問題にしても同じ話で、政府のオリンピック委員会よりも、元電通の方が偉いような状態ですから、起こるべくして起こった事件のように感じます。

企業の経営者からすれば売り上げ「増」が自分たちの生命線であり、それによって自身の雇用を確保しているだけの話ですから、売り上げが減るということは自身のクビに直結するわけですから、料金を下げろ、なんて言われると公然と反発するわけです。それを平気で言い放つ神経がおかしいのです。気持ちはわからなくはないですが。

やはり政府が大規模な借金状態、消費者は賃金が上昇せずに常に青色吐息状態、企業は莫大な社内留保を担保。この流れが固定してしまっているのがおかしいのです。

たとえば米国ではつい半年前までは企業が絶好調で、消費者が極大不振状態でした。現在は企業が大不振で、消費者に光がさしているように資産やマネーの循環によって生きているわけです。

日本は政府と消費者がずっと貧乏なまま、企業がその利益を外部に転換しようとしない、おかしな構造なのです。お金は循環するから景気がよくなるもので、ある主体だけに、お金が滞留するのは社会全体にとって非常に不健全な状態です。

なぜバーナンキ氏に経済学賞?

以前にも少しお話しましたが、こういった大きなショック、不景気があると、金融政策には流れがあります。バーナンキが経済学賞を受賞したらしいですが、その流れを作ったのはバーナンキです。最近、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)なんて時代の遺物が注目されましたが、CDSなどはバーナンキの失敗の代表作のようなもので、差益を中心に考える投資家にとっては非常に有益な商品ですが、社会にとっては害悪、他ならないものです。

CDSというのは株価に対する保険で、A社が倒産しようというときにCDSという保険を購入するのです。つまり投資家は株価では損を出すけれども、保険というCDSがそれを保証してくれるという商品です。

ですからリーマンのような巨大不況のときにも流動性不足が起こらないとバーナンキが主張をしたのですが、蓋をあけてみてもAIGの倒産でリスクは回避できず、儲かったのは一部の投資家だけでした。

要は保険をかけても、流動性不足などのリスクは回避できない、それをバーナンキが推奨をしていたのですから噴飯ものです。

政策実行者としては名を挙げたバーナンキですが、理論はかなりおかしなものがあり、なぜ、彼が経済学賞なのか私には理解できません。

また話が違う方向に行きましたが、その流れが以下の通りになっています。

大不況発生

各国での金融政策の発動

その際に最大規模は米国 → ドル安 金利安

順調にアメリカ景気が回復 → ドル安 金利安の撤回
↓(今、ここです)
アメリカ以外の国は金融緩和拡大 → ドル高金利高→他の国は通貨安金利安を維持

諸外国も景気回復

これが大規模な不景気や事件が起こった際の流れになります。

1年目に徹底的なドル安が敢行され、結果、アメリカ経済が回復します。そうすれば、アメリカは現在のようなドル高政策に転換します。

世界経済はアメリカ経済が立ち直れば、ある程度の回復を目指すことができますので、ほかの国は、アメリカよりも1年程度、緩和を延長させる、それによって世界の景気がよくなっていくというのが道筋というのを示したのがバーナンキだったのです。あるいはイエレン財務長官になります。

ところが、今年の2月のウクライナ侵攻によって「インフレ」が発生してしまったのです。

Next: それでも「日本は買い」?インフレに対して正しい治療法を行っている



世界経済の回復はまだまだ先

読者のみなさんは、私がそれ以前から「インフレを警戒した方がいいよ」と言っていたのをご存じのように、ウクラウイナ侵攻でインフレが起こったのではありません。アメリカが緩和をし過ぎたから、インフレが起こったのです。ロシアはスパイス程度のことです(笑)。

その根幹をすり替えて、プーチンが悪いと騒いでいるバイデンはアホ、ということにしかならないのが私の見方です。お前が悪いことを他人の所為にするな、と小学生への説教をしておきます(笑)。

結果として、とくに欧州などはインフレを極度に警戒しますので、本来ならまだ緩和を拡大しなければいけないものを反対に、縮小してしまっているのですから、まだ本来の体力が戻っていないのに緩和の縮小をしてしまっているので、世界経済が回復するわけがない、というのが私の見立てです。

「日本は買い」

日本は、そういった中で、本来は緩和を継続しなければいけない時期に緩和を拡大しているのですから、正しい治療法を行っているのです。

だから、私は「日本を買いだよ」と言っているのですが、世界全体の波に今は飲まれている状態であろう、と分析しています。

しかし、国内の企業に冒頭の状況をみて投資できる対象がそれほど多くなく、債券は投資魅力がゼロの状態です。だから、海外に投資家は向かうのでしょうね、と思います。結果の円安です。

今後の展開

0.75%の利上げは異常なこととメディアは騒いでいますが、おそらくこの利上げを継続しても、インフレは終わらないと考えています。

理由は明快で、商品相場や半導体などの価格は最終的には何度もお話ししているように同じ価格になるからです。

ドルが高くなって、原油価格は120ドルなどという価格は解消されましたが、たとえば日本は円安に30%もなっているのですから、現在の80ドルの3割増しの価格なのです。ユーロも15%売られていますので、15%増しのユーロ建て価格なのです。

日本とユーロのエネルギー価格が高ければ、最終的にはドル高によって表面上は下がっているように見える米国原油価格ですが、実質のドルは20%上昇していますので、20%増しの80ドルであっても以前の96ドルということになるのです。

今回の米国のインフレ対策は、米国だけが助かる道筋であり、日本やユーロは苦しむ形になります。インフレを解消するためには、ユーロも円も通貨高にしないといけないのです。おそらく、金融危機の対処と同じで、また、アメリカが助かる道をみつけてそのほかはそのあとという金融政策を推し進めることでG7は一致しているのでしょう。

でも、下がりませんよね。ドル以外を通貨高にすれば、アメリカのドル建てエネルギー価格が上昇して、元の木阿弥になるのでしょう。

Next: 利上げしてもインフレは止まらない。根本的な解決方法は?



金利をいくら引き上げても、このインフレは収まらない

根幹は以下の通りです。

米国の資金供給量

コロナショックで大規模な金融緩和を行い、ドル高にしていますが、FRBの通貨供給量は去年よりも3.3%多い状態です。これを減らせば、買い占めを行う資金をシャットダウンすることができると思われます。

要は、金利を上げるより、緩和量のペースをもっと上げないと根本的な解決にならないよ、ということです。

おそらく、金利上げの議論よりも、今後はFRBの資産の圧縮が今後は、パウエルやイエレンが言い出すことになると思います。金利をいくら引き上げても、このインフレは収まりません。もちろん、過去の10%もの利上げを行えば収まりますが、弊害が多すぎることになるでしょう。もちろん、緩和量を減らしても、大きな弊害が金利上げと同様な、弊害が出るとは思いますが。社会実験をするほかないような状況に追い込まれることになるでしょう。

もっと緩和量を減らせ、という圧力が出てくることでしょう。バイデンもパウエルもそこまで追い込まれるとは考えています。

その際にマーケットはどうなるか?強烈な通貨高、株安、リスク資産安になります。このときに住宅ローンを抱えている人は最悪になると思います。現金を持っている人が一番、強いという経済になり、以前の老後資金は預金で運用という形に戻ってくるとは考えています。

私は以前から、このインフレが起これば、大規模なデフレになるよ、と言っている通りの現象が起こるとは思っています。みなさん、インフレになるよ、と私が一人で騒いでいたとき誰も信用しなかったでしょう。コロナ蔓延で株式が大変なことになるよ、と言っていたのを皆さん信用しなかったでしょ。現実的にそうなったでしょ。

今回もだんだんとこの状態が不可避になってくる確率が非常に高くなってきています。

コロナが終わりに近づくとインフレ、そしてその後はデフレと苦難の道がまだ続くよね、ということです。この流れが見えている人と見えていない人では、対応はまったく違いますので準備をすることです。

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2022年10月配信分
  • 大きな流れでマーケットを見る(10/17)
  • 為替介入のポイント(10/16)
  • 米小売り売上と「衝撃」のイエレン発言(10/15)
  • CPI、インフレ指数の解説とそのあとのこと(10/14)
  • アジアの円安とインフレの仕組み(10/13)
  • やはり単なる投げであろう(10/12)
  • マーケットの基本(10/11)
  • ドル高なのかドル安になるのか?(10/9)
  • 少しみなさんの役に立つマーケットの話(10/8)
  • 雇用統計は少し見通しを変更(10/7)
  • ドル高ですけど円高は進行中(10/6)
  • リスク回避、選考のタイプが変わってきている(10/5)
  • これは戻りなのか、押し目買いなのか?(10/4)
  • 株価は割安になったけど・・・(10/3)
  • 10月相場の注意点(10/2)

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2022年9月配信分
  • ようやく光がみえてきた(9/30)
  • もとに戻ったか?(9/29)
  • 金利の急騰は相当ヤバイ状況だと思う(9/28)
  • マーケットがぐちゃぐちゃになる可能性がある(9/27)
  • ドル円相場のまとめ、もう一度(9/26)
  • 円安の原因 まとめ(9/25)
  • ドル円介入のシステム 読んでおいたほうがいいと思う(9/23)
  • パウエル議長発言の意味(9/22)
  • FOMC後の世界(9/21)
  • 台風が去ったけどマーケットの台風はFOMC(9/20)
  • 円が安くなった理由(9/19)
  • 初心者にもわかりやすいドル円の話(9/18)
  • インフレは終息しつつあるのだけど(笑)(9/16)
  • 相場は転換期に来ている可能性が非常に高い(9/15)
  • インフレ指数の解説とマーケット(9/14)
  • 二番天井をとる動きだと私は思っています(9/13)
  • 動く国際情勢と動くマーケット(9/12)
  • もう一度おさらい、つまり展望のこと(笑)(9/10)
  • ドル円相場が異常な理由(9/9)
  • 円安のメカニズムと考えられるもの(9/8)
  • 中国経済復活の可能性がでてきた!(9/7)
  • バカンス明けのマーケット(9/6)
  • 負け戦にコストを払い続ける欧米とドル円、円安について(9/5)
  • なぜ雇用統計は「良い」と判断するのか?(9/3)
  • 直観では急激な戻りだけど・・・(9/2)
  • 2年債が15年ぶりの高値(9/1)

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image by:Matej Kastelic / Shutterstock.com

角野實のファンダメンタルズのススメ 角野實のファンダメンタルズのススメ 』(2022年10月17日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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