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米雇用統計が為替介入「3回目」のきっかけに?パウエル発言から読み解く今後のドル円相場とトレード戦略=ゆきママ

今年2度目となる日本政府のドル売り・円買い介入によって、150円の大台から叩き落とされたドル円相場。果たして今日発表の雇用統計が再び150円台、そして3回目の為替介入のきっかけとなるのか、相場の現状を踏まえながら解説していきます。(ゆきママ)

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やっぱりドル一強?揺れるマーケット

先週・先々週は利上げペース減速論が台頭し、買われ続けてきたドルに対する見通しの修正が入りました。

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

ご存じのように世界的なインフレが続いていることで、各国の経済にもダメージが見え始めてきており、BOC(カナダ中央銀行)やRBA(豪準備銀行)、ECB(欧州中央銀行)などが、相次いでインフレ退治優先・利上げ継続スタンスを修正し始めています。

今年の大きなテーマとしてインフレと景気というのがありましたが、欧州を中心に景気の悪化が深刻になりつつあり、利上げばかりもしていられない状況になっていることが背景としてあります。

このことからFRB(米連邦準備制度理事会)も利上げペースを落とすのではないか、との観測になり、利上げによる世界同時金利高も一服、各国の金利(国債利回り)が低下し、買われ続けてきたドルが調整下落となっていました。

しかし、今週のFOMC(米連邦公開市場委員会)後のパウエルFRB議長の記者会見で、経済データ次第で利上げペースが減速していく可能性は認めながらも、これまでの見通しよりもターミナルレート(いわゆる最終利上げ地点における金利)は高くなりそうだとしていました。

直近の0.75%といった大幅な利上げはそろそろ終わってペースが終わるとはいえ、まだまだFRBの利上げそのものは継続されそうとのことで、昨日今日は再びドルが買い戻されています。

今夜発表される雇用統計において、この利上げ継続姿勢が正当化されるような結果が出るかどうか、特に平均時給(賃金上昇率)も含めて注目されることになりそうです。

Next: 雇用市場に変化の兆し?先行指標から読む今後の展開



雇用市場にやや変化も感じられる

それでは、先に発表されている雇用指標の数字を見ながら、今日の展望を考えていきましょう。

雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

全体的にはまずまずの数字が並んでいます。新規失業保険申請件数については誤差の範囲でしょう。歴史的な低水準は続いています。

気になるISM非製造業の雇用指数の下振れについては、前月が6ヶ月ぶりの高水準となったことの反動もありますが、一部では景気見通しの不透明感から、一部企業では採用を控えているとの話もあります。

求人件数などが高水準を維持する一方で、これまでのように何がなんでも採用しようという状況からは、やや変化の兆しも見受けられるといったところでしょう。

悪い数字が出そうというほどでもありませんが、強い数字もあまり期待できないといったところでしょうか。事前予想値としては非農業部門雇用者数が+20.0万人増、平均時給が前月比+0.3%・前年比+4.7%となっています。

弱い数字に要警戒。調整の幅が大きくなる

強めの数字、特に平均時給が上振れればドル円は一段高となりそうですが、弱い数字が出てしまうとインフレ後退・利上げ減速意識で上値は一層重くなりそうです。

全体的に弱い数字が出ると調整が大きくなる可能性は十分ですから、警戒しておきましょう。

ドル円チャート(日足)

非農業部門雇用者数は+10万人以下にでもならなければ問題はないように思います。それ以上に平均時給が引き続き強い伸びを示せるかどうかが重要で、前月比+0.2〜0.3%、前年比+4.5〜4.7%以上の数字に落ち着くことがドル円を押し目買いできる判断基準といったところでしょうか。

145円台は為替介入でも割れなかった水準なので、多少数字が弱い程度ならここまで下がることはないでしょう。非農業部門雇用者数や平均時給がマイナスとなった場合は、その限りではないので注意したい。

Next: 今夜のトレード戦略は?1ドル=146.50〜149.00円を想定



今夜の想定は1ドル=146.50〜149.00円

トレード戦略としては、非農業部門雇用者数が予想を下回り、平均時給が予想よりも強めの数字となった場合、どうしてもヘッドラインの雇用者数の数字に強く反応しますから、落ちてくれば147円台半ばから押し目買いでしょうか。

逆に雇用者数が上回っても、平均時給が予想並か弱めだった場合、上値の重さを嫌気してズルズル落ちてくる可能性が高いですから、その場合はスルーです。149.20円レベルに損切りを置いて、148円台半ばから売ってみるのはありです。

もっとも、米国と日本、主要国の政策スタンスの違いから、ドル買い円売りの動きが根底にありますので、基本的にはロング・押し目買いを狙っていくべきだと考えています。

したがって、介入への警戒感によって148.50〜150.00円レベルはかなり上値が重たくなっていることを踏まえ、押し目を狙えるチャンスがないのであれば、無理をしないで様子見するのがベターではあります。

勝てるタイミングのみ、平均時給の数字が維持されているのを確認した上で、下がれば146.00~147.50円レベルを押し目としてエントリーするのが今夜の推奨戦略となります。

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image by:GaudiLab / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2022年11月7日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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