仮想通貨取引所大手FTXがとうとう破産、さらに数億ドル規模の不正引き出しがあったとして混乱が広がっています。元々フェアバリューがはっきりしない仮想通貨で、しかも取引所に預けていると何に使われるかわからず、結果、全額メルトダウンしてしまうとなれば、市場参加者が過度に反応するであろうことは当たり前の話。このリスクが金融市場全体に広がることも危惧されるものとなっています。(『 今市太郎の戦略的FX投資 今市太郎の戦略的FX投資 』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2022年11月14日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月分無料のお試し購読をどうぞ。
急展開で破産「仮想通貨大手取引所FTX」
先週のたった1週間で仮想通貨大手取引所FTXを巡る問題が噴出し、市場は目まぐるしく展開することとなったのはご案内の通り。
週末、結局FTXは破綻し、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を正式申請をするに至っています。
とにかく展開がやたらと早いのがこのFTX問題の特徴。
うかうかしていると状況を見損なう可能性もありそうですので、一応、今までわかっていることをごく簡単にまずまとめてみることにします。
バイナンスの「FTT」売却からはじまり、週末とうとう破綻という展開に
FTXの競争相手であるバイナンスのCEOが11月6日、保有していたFTXのネイティブ・トークン・FTTをすべて売却するといったことから、市場では一斉にFTTが売り込まれることとなりました。
その価格は25ドルからたったの2ドルにまで下落し、緊張が走りました。
その後、バイナンスが競合であるにも関らずFTX買収を基本合意したという報道がヘッドラインに流れたことで、市場は驚きながらも一応の安堵感が相場に漂うことになりました。
ただ9日にバイナンスが一転して事業買収を撤回する旨を発表したことから相場はさらに悪化。仮想通貨全般に売り込まれる状況が続きました。
バイナンスにはもはや「手に負えない」というのがその理由ですから、市場が極度に警戒するのは当たり前の話。ここまで見ますと、バイナンスはFTXを生かすつもりだったのか、殺すつもりだったのか、よくわからない状況が続きました。
そこからはネット上で繰り広げられる典型的な取り付け騒ぎが起こり、FTXは日本円にして1.1兆円規模の資金がないと流動性が確保できないことも明るみに出てしまいます。
ただ10日には米国の10月CPIが発表になり、なぜか市場はインフレピークアウト感を必要以上に喜ぶ楽観相場にシフト。米株は暴騰、債券金利も大幅低下、ドル円は下落したことから、仮想通貨の下落も一旦は落ち着き値を戻す展開にもなりました。
しかし、市場に一定の安心感が出たのはその一瞬だけで、11日には上述のようにFTX関連130社がチャプター11の適用申請をすることになり、FTXの破綻は現実のものになります。
サム・バンクマン=フリードCEOはすでに辞任し、状況は新たな展開となりました。
Next: FTX破綻後に仮想通貨の不正流出が発覚、ほかの事業者も危ない?
FTX破綻後に仮想通貨の不正流出が発覚
さらにいただけないのは11日の夜、FTXに関連する複数のウォレットアドレスが、公式通知なしに数百万ドル相当の仮想通貨を不正送金しているのが見つかり、FTXもそれを認めています。
これが外部からのハッキングなのか内部のものによる資金逃避なのかは正確にはよくわかりませんが、多くのFTXの口座ホルダーはウォレットにいれた資金がゼロになっているのを見て絶望している状況にあるようです。
FTXはトロイの木馬をダウンロードする可能性があるため、FTXのサイトにはアクセスせず、アプリも削除するようにと公式テレグラムで警告を発していますが、まあ何が本当の話なのかはもはや判別がつかなくなってしまった状況です。
FTXはまともな金融機関のする事業ではない
今回のFTXの問題は突然に顕在化してきたように見えますが、実はかなり前からくすぶっていたもので、それが先週1週間で一気に噴出したに過ぎません。
業界全体で同様の問題がどれだけ示現するのか、注目されるところとなってきました。
本邦でもいち早く財務省が「FTX Japan」に対して行政処分を行い、業務停止命令のほか、利用者の資産の保全や利用者保護を求める業務改善命令を出しています。
しかし、本国のFTXでも顧客の資金は信託保全されておらず、FTXがツイッター上で告知しているように顧客の仮想通貨についてはコールドウォレットで保管し、法定通貨については信託口座にて分別管理を行っているというのが本当なのかどうかもよくわからない状況です。
この取引所業界は仮想通貨を使ったレンディングビジネスいわゆる貸金業も行っていることは、かねてから話題になっていました。FTXでは、サム・バンクマン=フリードが個人で所有してきた投資会社アラメダ・リサーチも同様の事業を行っています。同社は今年5月と6月に、経営破綻した暗号資産融資業者ボイジャー・デジタルへの5億ドルのローン契約を含めて取引で損失を食らったことも、傷口を広げる結果になってしまったようです。
問題なのはここからで、143億ドル以上と言われたアラメダの保有資金はみるみる減少したようで、サム・バンクマン=フリードは顧客の資金も含めて勝手に40億ドルの資金を移管した
こともわかっています。
実はこうした資金は株式取引プラットフォーム、ロビンフッド・マーケッツ株式やFTXのトークン(FTT)などの資産を担保にしたものだといいますから、呆れること至極。すでにカネのたらい回しで経営を凌いでいたことが見え始めています。
このアラメダ・リサーチの資産も当然のように水増しされているようで、上述のFTTならびに担保FTTが60億ドル、流動性の低い仮想通貨資産が33.7億ドル、株式が20億ドルで、現金は1億3,400万ドル、全体資産のたった1%しかないということも露見しており、すでにほとんど資産が枯渇している可能性も高まります。
通常の取引所だけやっていれば、こんなに流動性資金が一気に枯渇することはないはずですが、どうもこの業界は同業者同士でカネの融通を行っているのは明らか。まともな金融機関からの融資を望むのは絶望的状況ですから、ここからさらに悲惨な事態が示現することが危惧されるところです。
個人の資金引き出しと取引所クレジット・クランチが最大の懸念事項
SECのゲンスラー委員長はFTXの名前こそ出していませんが、11月10日にCNBCの番組に出演し、「仮想通貨取引所に資産を預けた個人投資家は倒産時には破産裁判所の列に並ぶしかない」と発言。連邦預金保険公社(FDIC)に加盟する銀行のようには規制されていないので、消費者はまったく資金の返還を保証されていないことを強調しています。
こうなるとほかの取引所でも取り付け騒ぎが起きるリスクは高そうで、取引所自体もこうした状況下で資金調達が極めて難しくなるのは間違いなさそう。
クレジット・クランチ(信用収縮)がさらに進みそうで、今週また我々の想像を超えるほど市場が傷むリスクを考える必要が出てきそうな状況です。
Next: まだまだ騒動は終わらない?FTX破綻問題で金融市場は混乱の渦へ
FTX破綻問題で金融市場は混乱の渦へ
人によっては「仮想通貨恐慌」が起きるなどと恐ろしいことを口にし始めています。
元々フェアバリューがはっきりしない仮想通貨で、しかも取引所に預けていると何に使われるかわからず、結果、全額メルトダウンしてしまうとなれば、市場参加者が過度に反応するであろうことは当たり前の話。このリスクが金融市場全体に広がることも危惧されるものとなっています。
これだけお読みになるとさすがに脅かしすぎでは?と思われる方も多いと思いますが、現実の相場はさらに事実を掌握しにくく、もっと悲惨な状況へと展開する危険性もありそうであることはしっかり御認識いただきたいところです。
とにかく私が仮想通貨クラスタを見てきた中では、このFTXの破綻問題は史上最大のリスクであり、これがこのままひっそりと終焉するとはおよそ思えない状況です。
10月米国のCPIで浮かれ調子の相場ですが、それを一蹴するような事態が起きる可能性もありますので、十分にご注意いただければと思います。
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