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ひとり親家庭を侮蔑?「片親パン」なるワードが急拡散中。「和室界隈」「アフガキ」など他者の貧困を見下す新語ばかりバズる日本の末期的状況

まだ松の内も明けていない2023年だが、ネット界隈では俄かに「片親パン」なるワードが急拡散し、トレンド入りするほど大いに取沙汰されている模様だ。

片親パンとは、母子家庭や父子家庭といったひとり親家庭の子どもが、日々忙しいため料理などをする時間もないといった親からよく与えられていそうとのイメージがある、5個入りあんぱんやチョコスティックといった、量が多くて安価な菓子パンの類を指すワード。

ひいては、そういったものを常食しているであろう、貧困家庭の子どもに対しての侮蔑の意図も大いに孕むということで、そういったワードを元々使っていたとされるZ世代を中心とした若者世代の差別意識の欠落ぶりを批判する声が高まっているというのだ。

侮蔑?自虐?その語源に諸説が飛び交う

今回取沙汰されている片親パンという言葉だが、それ自体は2021年の下半期にはSNS上ですでに散見されていた模様。

さらに2022年5月頃には、SNS上のとある人気インフルエンサーが「貧乏片親家庭のガキは5個入りのクリームパン食って育ってる」との発言をしたことが、複数のまとめサイトに掲載されるなど、一部の間で少し話題になったこともあり、そういったことも今回の拡散の“下地”となっていたようだ。

いっぽうで、若者世代が発祥とされるこの手の侮蔑ワードとしては、TikTok上にいる垢抜けない雰囲気の人々が、高確率で和室の部屋から配信していることから来た「和室界隈」、さらにカードゲームマニアの間で流行しているという、カードにあまりお金を使えないユーザーを“アフリカの子ども”になぞらえた「アフガキ」なども、近年大いに流布しているところ。

今回の片親パンも、それらの延長上と捉えられ、とんでもない差別的表現だと俄かに問題視されたといった流れのようだが、いっぽうでこの表現はひとり親家庭の子どもによる“自虐”が発祥だという説も一部からは浮上。

ゆえに、今回のような“片親パンは若者世代の差別意識の表れ”といった言説こそ、差別意識が根底にあるのではといった批判もあがるなど、議論は世代間対立といったところにも向かいつつあるといった状況のようだ。

片親パンの“代表格”にも物価高の影響が

今回ある意味で“悪意の標的”とされてしまった格好のひとり親家庭だが、2015年に行われた調査によれば、日本全国に母子世帯はおよそ75万世帯、父子世帯がおよそ8.4万世帯と、決して少なくはないといったところ。そこに近年ではコロナ禍によって働き口が減り、ただでさえ少ない家庭が多い収入がさらに目減りしているうえ、さらに物価や光熱費の高騰も家計をモロに直撃している状況だ。

実際、ひとり親家庭を支援する団体の調査によれば、昨今の物価高が子どもの心身の成長に悪影響を及ぼしているという声が多くあがったようで、「必要な影響がとれていない」「風邪などの病気になりやすくなった」「身長や体重が増えていない」など、危機的状況を訴える声が相次いでいるというのだ。

さらに、いわゆる片親パンの代表格としてよく名が挙がる山崎製パンの「薄皮シリーズ」に関しても、小麦粉など原材料の価格高騰の影響で、今年1月1日出荷分から内容量が5個から4個に減ったばかり。1個1個の重量は若干増えたものの、ワンパッケージ全体の重量は以前より1割減となっている模様で、安価で空腹をしのげる食品類にも等しく物価高の波は押し寄せているといった状況だ。

そんなひとり親家庭に広がる危機を救うには、政府による緊急的な対策は必要不可欠といったところだが、今年度は住民税非課税世帯などには臨時給付金が支給されたものの、所得制限は超えるものの家計は苦しいといったひとり親家庭には、やはり十分な支援は行き届いていないというのが実際のよう。

また岸田首相は、正月早々に子ども関連予算の倍増など、いわゆる「異次元の少子化対策」をぶち上げ、今年6月までにはその大枠を提示すると語ったが、国民からの期待感はほとんどなしといった反応で、しかもそれに伴って消費増税に踏み切るのでは、といった憶測も。これでは支援が行き届く前に、増税で干し殺しにされる……といったところのようだ。

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これまで数多誕生したネット上における他人を侮蔑するスラングだが、過去のものだと例えば「チー牛」や「キョロ充」など、その人の容姿や振る舞いなどをディスるものが多かった印象も。

しかし、最近では先述の「和室界隈」や「アフガキ」、さらに今回の「片親パン」といった風に、他者の経済状況あるいは貧困ぶりをあげつらうワードが、相当増えているといった傾向が。これは世間における貧困や格差といったものが、子どもらも含めた誰の目にも分かる形で広まっていることの証左とも言えそうで、そうなれば政治もその責任の一端を担っているとも言えそうだ。

Next: 「今のガキ共ってひたすらマウンティング…」



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