岸田首相が年頭会見で語った賃上げ5%と、日銀の物価見通し上方修正。これだけをみると一見、何の関連性もないと思う方がほとんどでしょう。しかし、賃金上昇率とインフレ率は密接に関係しています。岸田首相はどうやって賃金を上げるつもりか?賃上げを実施するのには、企業収益を拡大させればいい。そのためには、株価を引き上げればよいわけです。ほかに株価を上昇させる方法、安すぎたのだから株価が上がるという方法以外には、大規模な金融緩和「第2弾」しかないでしょう。(『 角野實のファンダメンタルズのススメ 角野實のファンダメンタルズのススメ 』)
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プロフィール:角野實(かどの みのる)
大学卒業後、金融機関に10年ほど勤務。独立して投資家の道へ。現在は企業経営者として活動、FX関連の執筆を多数行っている。
賃金上昇率とインフレ率は密接に関係している
岸田首相の年頭会見と、日銀の物価見通し上方修正を報じるリーク記事。これだけをみると一見、何の関連性もないと思う方がほとんどでしょう。
マーケットに関連があるところで岸田さんが言うのは、賃金5%上昇のことです。これをきちんと正確に把握できないアナリストが非常に多いのです。
実は賃金5%上昇とインフレ率というのは非常に関連が多く、アメリカの例でみると物価上昇と賃金上昇の関係は以下のようになっています。
アメリカはインフレ率と賃金上昇がほぼ同じような形になっています。つまりインフレを抑えるためには賃金上昇の伸びを抑えることが前提条件になるのですが、アメリカはいまだに5%です。
今回の米雇用統計は4.7まで落ち込みましたが、以下をご覧ください。
2021年もそうでしたが、賃金の上昇は毎年12月にかけて鈍化傾向にあり、決して、今回の賃金上昇率はサプライズでもありません。これは雇用数が多くなる分、低賃金でも応じる労働者が多いという構造があると思います。
利下げを織り込むマーケットは間違えている?インフレはまだまだ継続
話がそれましたが、実際、アメリカでは賃金上昇率とインフレ率はイコールの関係という考えをします。しかし、賃金上昇は、日本や欧州のように年1回の交渉ではなく、以前から交渉するようにアメリカの場合は1〜5年おきに各労働団体によって設定が違います。
日本の場合は春闘で各業界の労働組合が会社と交渉し年1回に必ず賃金が改定されます。
アメリカの場合は、去年、賃金が5%上昇すると、最大で5年間、賃金がそのままになる可能性があるのです。その間、物価上昇がかなり下降したとしても契約社会のアメリカでは5%アップのままです。その分、労働者の可処分所得が増え、購買が活発になるのです。
結果としてインフレの終息が非常に遅くなります。これがボルガーが金利を一気に10%引き上げてもなかなかインフレが収まらなかったことの原因とされます。この検証はグリーンスパン時代に証明をされています。
FEDの理事たちが労働市場や賃金上昇に何度も触れるのはこの失敗があるので、労働市場を注視しているのです。今回の雇用統計はほぼ過去最高の雇用人数ですから、おそらく労働市場インフレは当面続く、つまり人材不足状態が続き、賃金上昇が続く、結果としてインフレが続くことを示しています。
だからFEDの理事たちは今年中の利下げはない、と議事録で表明しているのに、マーケットは今年中の利下げを見込んでいるのです。80年代も同じ間違いを繰り返したのですが、40年後の今も同じ間違いをマーケットを繰り返そうとしているのです。
Next: 岸田首相は賃金を上げると言うが、どうやって?2023年に起こること
賃金を上げるには、株価を上げればいい
日本は、物価下落が進行しても、賃金は下がりません。一定のまま、です。そして今回のように物価が上昇しても横ばいのままです。
それを岸田さんが上げようとするのです。私から言わせれば、どうやって? ということです。
賃上げを実施するのには企業収益を拡大させればいい、ということです。そのためには株価を引き上げればいい、わけです。
そして今年の場合、今まで中国が不振で、これがゼロコロナの実質解除で、今後、中国経済が回復する、そしてコロナ復興もまだなされていない。参考までに、アメリカもちっともコロナ復興がなされていない状態だと私は考えています。
その日本株の上昇というのは、誰が政権をやっていても、よほどの間抜けなことをやらない限りは株価は上昇するでしょう。たとえば、リーマン後のオバマやチャイナ、南欧州ショック後のトランプ、コロナショック後のバイデン、これらが政権に就くと株価が上昇したのは、彼らが有能という見方もありますが、放っておいても、安すぎたのだから上がって当たりまえの話なのです。
岸田さんも同じです。
そこにレバレッジをかけて上昇させ、企業収益を改善して、アベノミクスのときには足りなかった、賃金上昇のお題目を今度は絶対やるぞ、ということなのです。
異次元緩和「第2弾」が来る?
ほかに株価を上昇させる方法、安すぎたのだから株価が上がるという方法以外は大規模な金融緩和しかないのです。
今回のインフレは日本の場合、バラマキすぎても、インフレにならないのですから、もっとばらまいても大丈夫、と判断するのは普通ではないでしょうか?もちろん、それに伴う副作用も懸念されますが、アメリカの2倍〜3倍の緩和をすれば、デフレが終わる可能性が高いですよね。
今の状況を考えてください。アベノミクスのスタートは2012年12月の第2次安倍政権発足、2013年4月の黒田総裁就任で異次元緩和スタートの号砲が鳴ったのです。
今回も12月にいろいろと緩和をやりますよ、みたいな発言が多く出て、喧嘩していると思った日銀と政府が再び手を握って「物価上げますよ」宣言です。じゃ、どうやって?と考えると、方法は緩和しかないのです。
新総裁がまた、異次元緩和パート2を言い出す可能性の方が高いでしょう。今「緩和をする」と言えば相当な批判が起きますので、おそらくサプライズ的に新総裁のもとでやるのではないか、と私は思っています。
もっと正確に言うと「その可能性は非常に高い」と思っています。
Next: 2023年の円安・株高は規定路線?緩和継続の可能性を視野にトレードを
円安・株高は規定路線
となると、円安・株高というのは規定路線で、NISAの増額もすべて準備を進めていますよね。
NISAなどまだ閣議決定で、法案は通っていないと思います。なぜそんなにのんきなのか?といえば、新総裁誕生までにやればよいと考えているからなのだろうね、と自分の都合のよい論理を考えています(笑)。
あくまでもその可能性の話ですが、これを選択肢の中に入れておくことで、4月以降の相場の景色が変わると思います。
たぶん、ツイッターで似たような投稿がまた増えるのだろうな、と思いますが。私のアイディアを採用するのはいいですよ、でも、
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を少しは宣伝してよ、とは思うのですが欲張りの発想でしょうか?(笑)
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- 非常に大事なことを記します(1/9)
- ISM製造業と非製造業の関連性(1/7)
- 驚くほど強い米国市場(1/6)
- 岸田首相の年頭会見には重要な意味があるのにマーケットは見逃している(1/5)
- 今年1年間ありがとうございました(1/4)
- 新年あけましておめでとうございます(1/4)
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『
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』(2023年1月9日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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