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異次元緩和、縮小どころか大規模な「第2弾」が来る?岸田首相の賃上げ宣言で見えた円安・株高シナリオ=角野實

岸田首相が年頭会見で語った賃上げ5%と、日銀の物価見通し上方修正。これだけをみると一見、何の関連性もないと思う方がほとんどでしょう。しかし、賃金上昇率とインフレ率は密接に関係しています。岸田首相はどうやって賃金を上げるつもりか?賃上げを実施するのには、企業収益を拡大させればいい。そのためには、株価を引き上げればよいわけです。ほかに株価を上昇させる方法、安すぎたのだから株価が上がるという方法以外には、大規模な金融緩和「第2弾」しかないでしょう。(『 角野實のファンダメンタルズのススメ 角野實のファンダメンタルズのススメ 』)

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※本記事は有料メルマガ『角野實のファンダメンタルズのススメ』2023年1月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:角野實(かどの みのる)
大学卒業後、金融機関に10年ほど勤務。独立して投資家の道へ。現在は企業経営者として活動、FX関連の執筆を多数行っている。

賃金上昇率とインフレ率は密接に関係している

岸田首相の年頭会見と、日銀の物価見通し上方修正を報じるリーク記事。これだけをみると一見、何の関連性もないと思う方がほとんどでしょう。

マーケットに関連があるところで岸田さんが言うのは、賃金5%上昇のことです。これをきちんと正確に把握できないアナリストが非常に多いのです。

実は賃金5%上昇とインフレ率というのは非常に関連が多く、アメリカの例でみると物価上昇と賃金上昇の関係は以下のようになっています。

アメリカはインフレ率と賃金上昇がほぼ同じような形になっています。つまりインフレを抑えるためには賃金上昇の伸びを抑えることが前提条件になるのですが、アメリカはいまだに5%です。

今回の米雇用統計は4.7まで落ち込みましたが、以下をご覧ください。

2021年もそうでしたが、賃金の上昇は毎年12月にかけて鈍化傾向にあり、決して、今回の賃金上昇率はサプライズでもありません。これは雇用数が多くなる分、低賃金でも応じる労働者が多いという構造があると思います。

利下げを織り込むマーケットは間違えている?インフレはまだまだ継続

話がそれましたが、実際、アメリカでは賃金上昇率とインフレ率はイコールの関係という考えをします。しかし、賃金上昇は、日本や欧州のように年1回の交渉ではなく、以前から交渉するようにアメリカの場合は1〜5年おきに各労働団体によって設定が違います。

日本の場合は春闘で各業界の労働組合が会社と交渉し年1回に必ず賃金が改定されます。

アメリカの場合は、去年、賃金が5%上昇すると、最大で5年間、賃金がそのままになる可能性があるのです。その間、物価上昇がかなり下降したとしても契約社会のアメリカでは5%アップのままです。その分、労働者の可処分所得が増え、購買が活発になるのです。

結果としてインフレの終息が非常に遅くなります。これがボルガーが金利を一気に10%引き上げてもなかなかインフレが収まらなかったことの原因とされます。この検証はグリーンスパン時代に証明をされています。

FEDの理事たちが労働市場や賃金上昇に何度も触れるのはこの失敗があるので、労働市場を注視しているのです。今回の雇用統計はほぼ過去最高の雇用人数ですから、おそらく労働市場インフレは当面続く、つまり人材不足状態が続き、賃金上昇が続く、結果としてインフレが続くことを示しています。

だからFEDの理事たちは今年中の利下げはない、と議事録で表明しているのに、マーケットは今年中の利下げを見込んでいるのです。80年代も同じ間違いを繰り返したのですが、40年後の今も同じ間違いをマーケットを繰り返そうとしているのです。

Next: 岸田首相は賃金を上げると言うが、どうやって?2023年に起こること

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