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持ち家か、賃貸か。固定金利が上昇を始めた現在、生涯の住宅費や感情よりも優先すべき判断基準とは?=牧野寿和

持ち家か、賃貸か。住宅ローンの固定金利が上昇し始めた昨今、気になる方が多いでしょう。住居にかかるお金は、家計に影響する重要な問題です。あなたにとってベストな選択をするための考え方をお伝えします。(『 【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ 【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ 』牧野寿和)

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プロフィール:牧野寿和(まきの ひさかず)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。

持ち家派と賃貸派の割合は「2:1」

「平成30(2018)年住宅・土地統計調査」(総務省統計局、5年ごとの調査)によると、以下の通りとなっています。

日本の持ち家:3,280万2,000戸
持ち家住宅率:61.2%
借家率:35.6%

つまり、持ち家と賃貸の割合は「2:1」となっています。

また、同調査では、高齢者(65歳以上)のいる夫婦のみの世帯では、持ち家住宅率は87.2%、借家率は12.5%。高齢単身者では、持ち家住宅率は66.2%、借家率は33.5%といった調査結果も出ています。

持ち家と賃貸のちがい

ここからは、住宅を所有するのと、賃貸に住むのでは、どんな違いがあるのか?を見ていきます。

なお、住宅を所有すること、つまり持ち家とは、とくに記載のないところでは、戸建て住宅と集合住宅(マンションなど)の区分所有のことです。

持ち家と賃貸では、主に以下のような違いがあります。

<住宅費>

持ち家
・住宅購入費
・購入に住宅ローンを組めばその費用や
返済利息が住宅本体の購入用に加算される
・購入時の登記費用や諸税の納付
・毎年固定資産税、都市計画税を納付
・(戸建て)修繕費などは所有者が計画的に積立てる
・(マンション)修繕積立金、共益費、駐車代などの出費が毎月必要

賃貸
・家賃、(共益費、駐車代など物件による)
・入居時に保証料、敷金、礼金などが必要な物件もあり

※持ち家・賃貸ともに上記の支出額は、今後、値上がりする可能性があります。

<室内改装>

持ち家
・可能(マンションは取り決めによる)

賃貸
・原則不可

<転居>

持ち家
・持ち家の維持管理が必要。また戻る予定があれば、その間は賃貸で貸すといった対策が必要
・手放すなら、売却や贈与などの方法を考えて実行する時間が必要になる

賃貸
・自由にできる
・転居するごとに、引越しの費用や退去の費用、新居の保証料や家賃など、家賃数カ月分の
まとまった費用が必要になる
・高齢者になると入居を拒否される例もあり

<相続>

持ち家
・所有物件の遺産相続を考えておかないと、所有者が亡くなった後に、相続人の間での争族、誰も住まなくなった「空き家」の問題が発生しかねない

賃貸
・相続は発生しない

住宅を購入しない選択もあり

筆者のところにも、現在は賃貸や社宅に住んでいるけど、今後、住宅購入を考えていると相談にみえる方がいます。

たとえば、夫婦で相談にみえても、夫婦お互いに、住宅を購入するのに前向きだったり、どちらかだけが気乗りしているという夫婦もいます。

夫婦ともに住宅購入に前向きで、住宅を購入しても、家計の収入や支出に問題がなければ、住宅を所有することに問題はないでしょう。

また、どちらかが気乗りしない夫婦は、その理由によっては「今は住宅を購入しない」「この先も住宅は購入すべきではない」といった選択をすることになるでしょう。

気乗りしない理由は、家庭によって異なりますが、たとえば、夫婦のどちらかが、端的に言えば、見栄を張りたくて、家計の収支が将来的に成り立たなくなるような住宅物件を購入しようとしているときです。

また、ずっと賃貸でよいと思っている方は、住宅を所有することはないでしょう。

Next: 感情よりも現実的な判断を。「持ち家か、賃貸か」の答え



賃貸住宅は生涯の家賃の確保

賃貸住宅に住めば、生涯、家賃の支払いが必要になります。

老後も住むのであれば、年金などの収入から、現在の平均余命(※)までの家賃を払っていける、物件に入居することが重要です。

今までは家賃の変動は少なかったですが、昨今の物価の上昇で、更新時に家賃が値上がりする可能性もあります。

※筆者注:平均余命の詳細は「主な年齢の平均余命」(厚生労働省「令和3年簡易生命表の概要」)をご覧ください。

住宅は所有すべきか、賃貸でいいのか

生涯の住宅費を比較して、持ち家か賃貸か比較する、複数の記事を読んだことがあります。それらの記事の記述に間違いはないのでしょう。

生涯の家計収支を把握できれば、それに見合う物件を探して購入すれば、持ち家に住むことに問題はないと考えます。また、住宅を保持管理することが苦手なら、オーナーや管理会社がいる、賃貸住宅に住めばいいのです。

今は賃貸でよくても、将来、住宅を所有したくなることもあるでしょう。その反対のこともあるでしょう。

そんな時にどうするかは、夫婦であれば、家計に相談して可能であれば実行して、家計にあまりにも負担がかかるのであれば、実行は見送ることです。

このように考えてみますと、「住宅は所有すべきか賃貸でいいのか」の結論は、夫婦で、生涯を計画しながら家計に相談して、夫婦で住みたいところ、住みたい住宅に住むことです。

その住宅は、持ち家でも賃貸でも構わないのです。

感情ではなく現実的に考えること

家計支出の中で「住宅費」は大きなウェートを占めます。

住宅費を削減して、教育費などほかの支出を増やすなども可能です。

住宅の問題は、感情でなく、現実的に考えていくことです。

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image by:Kittisak Jirasittichai / Shutterstock.com

【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ 【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ 』(2023年1月18日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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