先進国で働く人が増えていない。人材を必要とする産業に働き手が移らなければ、経済成長は望めない。政府の後押しもあって、日本の労働市場でも今後は人材の流動化が本格化する。そのサポート役を担うことが期待される人材派遣、ことに製造業派遣やIT派遣の領域は、足元の業績の伸びが高いうえ、これからも中長期的に成長が続くと見られる有望分野と考えられる。(『 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』田嶋智太郎)
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2023年2月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後の一時期は大学教諭として「経営学概論」「生活情報論」を担当。過去30年余り、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、地域金融機関改革、引いては個人の資産形成、資産運用まで幅広い範囲を分析研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等において、累計3,000回超の講師を務めてきた。これまでに数々のテレビ番組へのレギュラー出演を経て、現在はマーケット・経済専門チャンネル『日経CNBC』のレギュラー・コメンテーターを務める。主な著書に『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)などがある。
高い伸びが続く!技術者派遣に関わる企業の株価に上値余地
先進国で働く人が増えていない。就業者と求職中の人を合わせた割合が低下し、最新推計によると先進国では働いていない人が新型コロナウイルス禍前より1,000万人増えた。企業が求める人材とのミスマッチが主要因であると推察される。
働く人の回復は日本も鈍い。15歳以上のうち働く人と職探しする人を合わせた「労働力人口」は22年平均で6,902万人。19年を10万人下回った。やはり、人材のミスマッチが働き手の回復の障害になっている可能性がある。
パーソルキャリアの転職支援サービスのdoda(デューダ)によると、ITエンジニアの転職希望者に対する求人倍率は11倍と、3年で約2倍に高まった。専門スキルが必要で、求人数の伸びに求職者が追いつかない。
人材を必要とする産業に働き手が移らなければ、経済成長は望めない。政府の後押しもあって、日本の労働市場でも今後は人材の流動化が本格化する。そのサポート役を担うことが期待される人材派遣、ことに製造業派遣やIT派遣の領域は、足元の業績の伸びが高いうえ、これからも中長期的に成長が続くと見られる有望分野と考えられる。
以下に、関連する幾つかの企業の目下の活躍ぶりを見ておくこととしたい。
アルプス技研<4641>
主要事業であるアウトソーシングサービス事業では、製造業向けの技術者派遣を中心に、技術プロジェクトの受託等を行う。なお、派遣技術者は同社の正社員として常用雇用される。
足元は、アウトソーシングサービス事業において技術者派遣や事務派遣が伸びており、稼働率も高水準で推移、加えて契約単価も上昇している。
結果、22年12月期の純利益は過去最高を更新。続く23年12月期も技術者派遣が自動車や半導体向けに拡大することで純利益が過去最高を更新する見通し。通期の会社予想は売上高が前期比6.8%増の466億円、営業利益は同7.5%増の50.6億円、純利益は同0.1%増の34.2億円と見込まれている。今期はまだ始まったばかりであり、今後は通期予想の上方修正が大いに期待される。
株価は、25日移動平均線や75日移動平均線を下値サポートとして、基本的に右肩上がりの値動きが続いている。2月22日に昨年来高値を更新(2441円)しているが、それでも予想配当利回りは3.9%程度と魅力の水準(予想年間配当は95円)にある。
メイテック<9744>
製造業におけるエンジニア業務に対する技術者派遣の業界大手。同社は製造業の設計・開発・解析分野を中心としたエンジニアの派遣事業を中核とし、派遣技術者は同社の正社員として常用雇用される。主要顧客には三菱重やデンソー、トヨタ自動車、パナソニック、ニコンなど大手製造業各社が名を連ねる。12月末のエンジニア社員数は計1万2,014名(22年4月入社の新入社員=885名)。
足元は、主力の技術者派遣が自動車や産業機器向けに拡大続く。稼働率は高水準で新人配属もハイペースで進む。さらに、技術者紹介も堅調に推移している。
23年3月期は、売上高が前期比11.5%増の1195億円、営業利益は同23.3%増の158億円、純利益は同18.0%増の109億円と過去最高を見込んでいる。
24年3月期も引き続き技術者派遣が大きく伸ビルものと見込まれ、連結純利益は連続で過去最高を更新する見通し。昨年7月に1対3の株式分割を実施しており、分割考慮後の年間配当は前期の72.5円から今期は84円に増配となる見込み。利回りは3.5%前後と高めで株価には割安感がある。
Next: エンジニア不足が追い風、技術者派遣で成長が期待できる日本企業は?
オープンアップグループ<2154>
同社は、21年に建設技術者派遣の夢真ホールディングスと経営統合し、商号を夢真ビーネックスグループに変更。さらに、今年1月から現商号に変更となっている。ITソフト領域や各種製造業、建設業向けに技術者の人材派遣を国内外で展開。デジタル人材への高いニーズを受けIT技術者の派遣に注力。海外売上高比率が3割を占める。
足元は、エンジニアの採用が順調に進み、需要旺盛なIT業界・建設業界向け派遣が想定を超得る伸び。工場向け派遣も拡大している。
2/10に2Q決算を発表。23年6月期の通期予想は、売上高が前期比10.4%増の1640億円、営業利益は14.8%増の116億円、純利益は同13.3%増の79億円と過去最高を見込んでいるが、2Q時の進捗率は営業利益で65.8%、純利益で66.6%と、今後は会社予想の上方修正が為されると思われる。
株価は一目均衡表の日足雲上限の水準が下値サポートとして機能しており、目先一定の調整を交えたところは惜しげ回のチャンスになると見られる。
キャリアデザインセンター<2410>
キャリア志向の高い「エンジニア」「営業」「女性」をターゲットとして、転職情報サイト「type」「女の転職type」などを運営している。ほかに、中途採用および新卒作用領域での人材紹介、IT派遣、新卒者向け就職イベントなどを幅広く手掛ける。
人材紹介事業およびIT派遣事業では自社運営Webサイトに広告を掲載し、連携営業で求職者の募集、求人企業への紹介や人材派遣業務を展開する。
足元は、主力のWeb求人広告が高成長で、ときにエンジニアと女性の採用が旺盛。人材紹介も伸びる。23年9月期は、売上高が前期比12.8%増の175億円、営業利益は19.2%増の13.1億円、純利益は同11.0%増の8.8億円を見込むが、1/31発表された1Q決算の実績では、通期の会社予想に対する進捗率は営業利益で36.2%、純利益で36.5%と高めだった。今後は予想の上方修正が為されると見ておきたい。
株価は、2月22日に昨年来高値を更新(2,023円)し、目先の高値警戒感は強まっているものの、なおも勢いがあり目先の調整も限られるものと見られる。
Next: 下値は堅い?まだある技術者派遣で成長が見込める日本企業
INTLOOP<9556>
新規事業や業務改革などの経営課題を抱える顧客企業から業務委託を受け、同社の案件紹介サイトに登録されたフリーランスコンサルタント・IT エンジニアをマッチングするサービスを運営している。
登録するITエンジニアやコンサルタントなどの人材データベースは22年10月末時点で約2万9000人。業界最大規模の高度ITフリーランスの登録情報を保有している。
昨年11月、KDDI系の2社と業務提携。DX戦略を担う人材不足解消に向けた支援事業に乗り出した。今後、業務提携した2社とDX人材を育成する教育事業の立ち上げも進める。
23年7月期は、売上高が前期比30%増の170.5億円、営業利益は50.5%増の11.9億円、純利益は同54.8%増の8.0億円と過去最高を大幅に更新する見通し。
株価は、2月21日に昨年来高値を更新(8,450円)し、目先は一旦調整含みとなっているが、なおも下値は堅いものと見込まれる。 ※2023年2月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2023年2月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。 ※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込1,100円)。
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田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット
』(2023年2月24日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による