事業者向けの電力供給をめぐり、大手電力会社が互いに顧客獲得を制限する「カルテル」を結んだとして行政処分されました。不正にバカ高い電力代を維持していたわけで、日本中の国民が、大いに“怒って”よい問題です。いや、怒るべきです。さらには課徴金が発生したからまた電気料金を引き上げる…なんてことがあったら、完全に国民はなめられていますね。(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2023年4月3日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
電気代高騰……電力会社たちが共謀している?
カルテルとは、企業の独占形態の1つです。
公正取引委員会は「カルテル」を、複数の企業が連絡を取り合い、本来、各企業がそれぞれ決めるべき商品の価格や生産数量などを共同で取り決める行為を「不正取引」と説明しています。
同種の生産にしたがう企業家が企業の独立性を保ちながら連合することで、自由競争を妨げ、市場を独占して価格を維持し、利益の増進をはかるものと、この行為を禁じられています。
これが電力会社の間で行われていたのです。
事業者向けの電力供給をめぐり、大手電力会社が互いに顧客獲得を制限するカルテルを結んだ…。
具体的には、事業者向けの電力の販売をめぐり中国電力と中部電力、九州電力が関西電力と顧客を奪い合わないよう申し合わせていたのです。
大規模な工場やビル向けの「特別高圧」、中小の工場や事業所向けの「高圧」の電力について、互いの営業エリアで顧客を獲得しないよう申し合わせたり、官公庁への電力供給の入札をめぐり、競争にならないよう参加を制限していたということです。
電力の小売りが全面自由化された翌年の2017年に、関西電力がほかの電力会社の管内で営業を本格化させたのをきっかけに、幹部らによる話し合いの場が持たれるようになったということです。
公正取引委員会は30日、中国電力、中部電力とその販売子会社、九州電力の4社に対し、総額1,010億円(中国電力:707億円、中部電力:275億円、九州電力:27億円)の課徴金納付命令を出したと発表しました。
これは、公正取引委員会の課徴金納付命令としては過去最高額になります。
「各社の収益確保や電気料金の引き下げを防ぐねらいがあった」と報じられています…。ということは、この「カルテル」行為がなければ、今よりもっと電気料金は安くなっていたということですか。
これまでずっと不当に高い電気料金を払わされてきたということですよね。国民のみなさん、これには大いに怒りましょう。
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課徴金のせいでまた値上げ?
なお関西電力は、違反を最初に公正取引委員会に自主申告したため、独禁法の課徴金減免(リーニエンシー)制度に基づき、行政処分は免れているのです。つまり課徴金納付は課せられません。
関西電力は「自主申告」として、カルテルを結んだ経緯について、電力各社との競争の激化によって電力の販売価格が下がってきたことを受けて、2018年に開いた社内の会議で、関西エリア以外での営業活動を縮小する方針を決めたことを明らかにしました。
これはどういうことかといえば、中国電力、中部電力、九州電力管轄の人たちの電気料金は値上げして、関西電力管轄の電気料金は上がらないということになると思うのですよね。
これが「総括原価方式」として、電力会社に許されている、「経費まるごと利用者負担」という制度によるものだと考えます。
原発維持費用も、廃炉費用も、再生エネルギーの費用も、全て経費は利用者の電気料金に上乗せされるのです。
すべて電力安定供給の名のもとに……なんかひどくないですか。
しかも電気料金明細には、「再生可能エネルギー」にかかる費用項目は載っていますが、原発関係の費用項目は載せてはいません。
不当に高い電気料金を払わされておいて、課徴金が発生したからまた電気料金を引き上げるなんてことがあったら、完全に国民はなめられていますね。
バカにされていますよね。
自主申告した関西電力だけ処分を免れたが…
カルテルを結んだ経緯については、関西電力は自己申告で認めており、中部電力は「事実認定と法解釈に見解の相違がある」として、取り消し訴訟を起こすと発表し、「司法の公正な判断を求めていく」と訴えました。中国電力は1月30日、滝本夏彦社長と清水希茂会長が辞任すると発表、九州電力は会見を開いていないようです。
さらに、もう1つ問題となっているのは、エリアの送配電網を独占的に担っている関西電力送配電が託送システムで管理している顧客情報を親会社である関電社員が閲覧していたという事件です。
関西電力の一部の社員が、送配電子会社の全顧客情報を閲覧できる権限を与えられていたというのです。
関西電力は、権限を持つ5人のうち4人が2022年11月から2023年3月までに、計69件の情報を不正に閲覧していたと発表しました。一連の不正閲覧が最初に発覚した2022年12月以降も、関西電力による閲覧が続いていたことになります。
電気事業法は、送配電子会社が親会社と顧客情報を共有することを禁じているのです。
関西電力では、2022年12月、関電側で情報を閲覧できるシステムの不備が発覚し、システムを改修した後も権限を与えられた社員による閲覧は可能だったことが2023年3月に判明し、経済産業省が実態を調べるように求めていたとのことです。
2023年1月13日には、今度は東北電力の送配電子会社である東北電力ネットワークの顧客情報が同様に東北電に漏れていたことが発覚しており、さらに同18日、九州電力と九州電力送配電でも同じ問題が明らかになったとのことです。
もうぐちゃぐちゃですね。
発送電分離と言いながら親子会社の間柄だけに、こういうことは容易に想像できますね。
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電力会社の不正でバカ高い電気代を負担
経済産業省も動きました。
これらのことで、中国電力、中部電力、九州電力が関西電力など子会社を含めた9社に対して、補助金の交付の停止や発注する事業に参加できない指名停止の措置を取りました。
発表によりますと、補助金の交付の停止や発注する事業からの指名停止の措置を受けたのは…以下の9社です。
・中部電力&子会社「中部電力ミライズ」
・関西電力&子会社「関西電力送配電」
・中国電力&子会社「中国電力ネットワーク」
・九州電力&子会社「九電みらいエナジー」「九州電力送配電」
※参考:経産省 関西電力など9社を指名停止 電力販売カルテルで – NHK(2023年4月3日配信)
さらに、競合他社の顧客情報などを不正に閲覧していた問題では、電力・ガス取引監視等委員会が経済産業大臣に対し、各社に業務改善命令を出すよう勧告していました。
各社への措置の期間は、親会社については以下となっています。
・関西電力と中国電力は3日から1年間
・中部電力は3日から9か月間
・九州電力は3日から7か月間
いずれにしても、この一連の問題は、単なる新聞記事のひとつとして片付けて良い話ではありません。日本中の国民が、大いに“怒って”よい問題です。いや、怒るべきです。
そろそろ電力料金算出の「総括原価方式」の見直しも検討すべきで、もっと電力会社間で競争を促すような構造にしていかなければならないですし、もういい加減、東西で周波数が違う問題(60Hz/50Hz)にも着手すべきではないでしょうか。
電力会社だけがアンタッチャブルな別物という特別扱いは、真剣に考え直したほうが良いように思えるのですがね…。
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