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名古屋のハイテク寺院・万松寺に“賽銭用コイン”が登場。「完璧なソリューション」「税金払わないのに手数料は払いたくないんだ」と賛否両論

名古屋市内にある寺院「亀岳林 万松寺」が、キャッシュレス決済で購入できるお賽銭用のコインの販売を始めたことが報じられ、大きな話題となっているようだ。

境内に設置された小型自販機で販売されているのは、本尊の十一面観世音菩薩が描かれたオリジナルコインで、自販機はキャッシュレス決済に対応。コインは1枚500円から、10枚入りまでのパッケージが展開され、説明書きは日本語、英語、中国語の3か国語で記載。なお、お賽銭以外にも施設内通貨として利用できたり、お土産として持って帰るのもよいそうである。

同寺の住職によれば、主なターゲットはインバウンドや日本の若年層だといい、「お参りという風習を日本の文化として残していきたい」という思いもあるという。

お賽銭自体のQRコード決済は規約違反?

日本は欧米や中国などの先進国と比べてかなり遅れているとの話もあるいっぽうで、それでも最近では日頃の生活の中で利用シーンが相当増えた感もあるキャッシュレス決済。

そんな世界的な潮流のなかで、これから先どうするのか大いに取沙汰されていたのが、祈願成就のお礼として奉げる小銭などのお金、つまりお賽銭をいかにキャッシュレス化するかという問題だ。

さらに昨今では、銀行などの金融機関が硬貨の取扱に関し、枚数に応じて入金手数料を取るようになっているのも、寺社側にとっては頭痛のタネとなっているいて、以前にはとある神社の関係者が“1円玉のお賽銭は手数料で消える”といった趣旨のツイートをし、賛否両論巻き起こったことが。また一部の神社では、お賽銭で貯まった小銭を少しでも紙幣に変えるために、地域の商店主向けに“両替サービス”も行うところが出てきたという話も、大いに話題となった。

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そんななか一部の寺社仏閣のなかでは、今や世間で広く浸透しているQRコードで、お賽銭の決済をしようといった動きもあったようだ。しかし、国内のQRコード決済のなかでも最も利用者が多いPayPayには、商品や権利を提供しない寄付やお賽銭については利用を禁止するといった、加盟店向けの規約が存在しているとのことで、そういった行為は規約違反になる可能性が高いとのこと。

もっともQRコード決済のなかでも、みずほ銀行の「J-Coin Pay」に関しては、お賽銭の授受といった用途を規約で禁じていないようで、神田明神や東本願寺にくわえ今回取沙汰されている万松寺でも、今年1月からそれを活用した“デジタル賽銭”サービスを実施している模様。ただ、多くの事業者が激しい利用者獲得争いを演じるなかでのJ-Coin Payのシェアを考えれば、“お賽銭のキャッシュレス化”問題を解決する決定打とはなりえなかったようである。

また、なによりもこういった“デジタル賽銭”の場合、神仏への感謝の気持ちを込めて賽銭箱に小銭などを収めるといった一連の所作が一切廃されるわけで、それはそれで味気ないもの。その点、今回万松寺で採用された“賽銭用コイン”のシステムは、キャッシュレス化に対応しつつも、そういった伝統も守れるといった利点がある。

キャッシュレス決済の導入となれば、決済業者に払う手数料はかかるものの、問題視されていた硬貨の入金にかかる銀行への手数料と比べれば安価で済みそうで、またコインをお賽銭にすれば、いわゆる“賽銭泥棒”の問題からも解放されそう。

さらに“1枚500円から”だというコインなら、下世話な話だがお賽銭の“単価”もアップしてウハウハ……という、寺社側としては望外といった効果も何気に期待できそうとあって、SNS上ではこの新しいシステムの導入に、「非常に面白い試み」「完璧なソリューション」などと称賛の声が広がっているようだ。

地元からは「万松寺ならいかにもやりそう」との声

今回取沙汰されている万松寺だが、あの織田信長の父である織田信秀によって、同家の菩提寺として建立されたという由緒ある寺院だということで、歴史ドラマなどでもお馴染みの、織田信長が父親の位牌に抹香を投げつけたという一幕の舞台となった寺だという。

そして現在の万松寺はというと、ど派手な建物にからくり人形、さらに口から水を吐く巨大な白龍のモニュメントの存在など、かなりエンタメ度が高めな寺院として観光客などからも人気が高く、また納骨堂に至っては顔認証で入退場でき、堂内はプログラミング制御されたLED照明で光り輝くなどのハイテクぶりで、つい最近もテレビ朝日系「ナニコレ珍百景」で紹介されたばかり。

それだけに、キャッシュレス時代の先端を行く今回の取り組みにも「万松寺ならいかにもやりそう」「万松寺ならありえる」と、妙に納得するといった声も地元民を中心に多いようである。

このように、近年取沙汰されてきたお賽銭の小銭にまつわる様々な問題を一挙解決する良策として、他の寺社仏閣への導入を期待する声もあがっている“賽銭用コイン”のシステム。先述の通り、好意的な声が多いといった状況なのだが、その反面で寄付という扱いとなる従来の賽銭はともかく、賽銭用コインというスタイルにした場合、税金がかかるのでは……といった指摘も一部からあがるほか、「税金払わないのに手数料は払いたくないんだ」などといった皮肉の声も。

さらに、他の寺社がこのシステムを導入しようとした場合、賽銭用コインを継続的に準備しないといけないうえに、まずはそれを売る自販機を導入する必要があるということで、万松寺のような何かとヤリ手なところならばともかく、経済的体力の乏しい寺社には大きなネックとなりそう。

また初詣のシーズンなど、参拝客が大挙して訪れるような際には、自販機がたとえ何台あったとしても果たして捌ききれるものなのか……といった懸念も出てくるところで、そのあたりは今後しばらくの間は試行錯誤が続きそうといったところだ。

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